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19>> 親と子 

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「貴女はっ!! 実の母親になんでこんな事をするの!!」

 唾を飛ばしながらそう言ったサバサのその言葉に、初めてアリーチェの目が驚きで開かれた。そして……

「母親の自覚はお有りなのですね。
 愛してくれた事は一度もありませんのに」

 心底意外そうに言われた言葉にサバサは絶句する。

「っ!?!」

 そんな母親と姉のやりとりを横で見ていたルナリアが口を開いた。


「……お姉様は拗ねておられますの?」


 その言葉にアリーチェは小首を傾げる。

「……はい?」

 聞き慣れない言葉を聞いたかのような姉の反応に、ルナリアは内心驚きながらもうかがうようにアリーチェに問いかけた。

「お姉様はお母様に愛されなくて拗ねているように見えますわ。
 酷いことを言って、気を引きたがっているみたい……」

 その言葉はサバサの心にも響いた。

「ルナリア……」

 サバサが溢れるように末娘の名前を呼ぶ。
 アリーチェは驚いた顔を少しだけ悲しげに歪ませて……そしてルナリアに向けて苦笑いを浮かべた。

「……そう……かも、しれないわね……」

 同意を示したアリーチェにサバサの心が揺れた。

「あ、アリーチェ……」

 しかし……

「でも、だからって、お母様が他の男の種をどこからか貰って来たかもしれない事は別の話よ」

 アリーチェははっきりと言い切った。

「アリーチェ!!」

 サバサが非難の声を上げるがアリーチェはサバサを見もしない。

「わたくしも今更両親に幼子おさなごのように愛されても困りますもの。それに当主補佐とか言ってていよく使われたくもありませんわ。
 貴女だって、お飾りの、子を産むだけの当主になりたくないでしょう?」

 アリーチェの言葉にルナリアは表情をきつくする。

「当たり前だわ」

 そのルナリアの返事にアリーチェは同意するように頷いてみせた。

「だったら貴女からも言って頂戴。
 お父様。
 わたくしをこの家から除籍して下さい」

 いきなり自分を見てそう言ったアリーチェにロッチェンはビクリと肩を跳ねさせて慌てた。

「そ、それは……」

 言い淀むロッチェンにルナリアも違和感を覚えて口を開く。

「なぜそこで躊躇ためらうの?
 お父様はお姉様が言うように、わたくしをお飾りの当主にするつもりだったの……?」




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