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18>>真実か偽りか
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とんでもないことを言い出した娘にサバサは髪を振り乱して否定した。もう聞いていられなくて両手で耳を塞ぐ。
しかしそんな母の反応にもアリーチェはただただ困ったように小首を傾げるだけだった。
「嘘と言われましても……」
事実は事実ですし……そんな事を言いたそうなアリーチェの声にサバサは怒りと焦りでこんがらがった感情で夫であるロッチェンに縋りついた。
「あなたっ! この子の嘘を信じないで!!
わたくしは貴方しか触れられていませんわ!! この子の言っている事は全部ウソです!!!」
困惑したままのロッチェンは何と返事をしていいのか分からない。ロッチェンの反応を待つことなくアリーチェは母に向けて言葉を放つ。
「ならお母様。
それをどう証明するのですか?」
しっかりと目を見てアリーチェは母に問うた。
「なっ!?」
「随分昔の話ですし、その男性を見たのもわたくしが小さい頃です。
お母様が侍女をずっと側に置いていたならば違いますが、お母様って時々誰も付けずに部屋やサロンに一人で居られましたよね? わたくしお母様が『誰も部屋に入れないで』と言って扉を閉めるところを何度か見たことがありますわ。
そんなお母様が、“男性と二人で会っていない”、とどう証明するのですか?」
「な、そ……っ?!」
「サバサ……」
アリーチェの問に言葉も出ないサバサの耳にロッチェンの困惑した声が届く。その声音にサバサは絶望を感じてロッチェンに向き合った。
「っ!? あなたっ!! 違います! 本当に違うのです!! この子の嘘です!!
わたくしは貴方以外の男性と二人っきりで会った事など御座いませんわ!! 信じてくださいませ!! 全てアリーチェの嘘ですわ!!!」
真っ青な顔でそう言うサバサに続ける様にアリーチェは静かな声で語る。その声はサバサのヒステリックな声よりもロッチェンの耳にすんなり入るようだった。
「口ではいくらでも言えますものね。
昔の事ですもの。証人さえ見つけられるかどうか……
わたくしもなにぶん小さい頃のことなので、自分が何歳だったのかも思い出せませんわ……
でも、実際に会ったのです。
“自分に似ている若い男性”に……その方に優しく見つめられた事を……」
「止めてっ!!!!」
サバサは悲鳴にも似た声で叫んだ。
「止めて止めてっ!! もうたくさん!!
貴女の嘘なんて聞きたくないわ!!」
サバサは叫ぶ。
しかしアリーチェはそんな母親を冷たい目で見返して冷静に返すだけだった。
「嘘じゃありませんもの。
嘘だと証明もできないのに、お母様こそわたくしを嘘吐き呼ばわりしないでください」
ただただ冷たい目で自分を見てくる長女を、サバサは涙が滲む目を憎しみに染めて睨みつけた。
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「あなたっ! この子の嘘を信じないで!!
わたくしは貴方しか触れられていませんわ!! この子の言っている事は全部ウソです!!!」
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「っ!? あなたっ!! 違います! 本当に違うのです!! この子の嘘です!!
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真っ青な顔でそう言うサバサに続ける様にアリーチェは静かな声で語る。その声はサバサのヒステリックな声よりもロッチェンの耳にすんなり入るようだった。
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「嘘じゃありませんもの。
嘘だと証明もできないのに、お母様こそわたくしを嘘吐き呼ばわりしないでください」
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