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12>> 玄関・4 

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「止めてっ!!!」 

 遂にサバサは両手で耳を塞いでかぶりを振った。

「違うわっ!! なんでそんなおぞましい事を言うのっ?!?!
 貴女は旦那様のお子です!!!」

 声の限りにサバサは叫んだ。本当にアリーチェが何故こんな事を言い出したのか分からなかった。
 そんなサバサに救いの声が届く。

「何をしているんだっ!!!」

 玄関での騒ぎを聞きつけたロッチェンが小走りで近付いて来ていた。サバサはその姿を目に入れて安堵する。耳から離した両手を胸の前で握って夫に体を向けた。

「貴方っ、……アリーチェがっ」

 すがる様に話しかけきた自分の妻にロッチェンは鋭い視線を向けた。

「子供と一緒に騒ぐ者があるか!!
 どれだけの耳があると思っているんだ!!」

 その言葉に初めてサバサは周りの視線に気付いた。家の使用人たちやムルダが連れてきていたイフィム伯爵家の執事や侍従や護衛騎士たち。開いたままだった扉の向こうには偶々邸に来ていたと思われる商人らしき人が怯えた表情でこちらをうかがっていた。

「あっ……」

 サバサは一気に血の気が引いた。よろよろと数歩扉から下がる。
 そんなサバサを横目にロッチェンは娘にも鋭い視線を向けた。

「アリーチェもっ!」

 父親に怒られてアリーチェはただ口を閉じる。

「…………」

 その反応にロッチェンはある可能性に気付いて息を呑んだ。

「……お前、わざ」

 しかしその先を言う前にアリーチェが口を開いた。

「お父様。伯父様が来て下さいましたの」




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