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アリーチェはキツく母を睨む。しかしその瞳は少し潤んでいた。
アリーチェは声を張り上げて母に訴える。
「わたくしはお母様が、男に乱暴されて出来た子供なんですよね!! 知ってますわ!!
お母様は、そんな男の血が混ざっているわたくしが、心底お嫌いなんですよね!!!」
大声でそんな事を言い出した娘にただただサバサは青褪める。
「何を言うの?!?!」
反論しようとする母にアリーチェは両手で耳を塞いで目を閉じた。
「嘘は聞きたくありません!!
わたくしがお父様の血を引いていないから、お母様はわたくしを次期当主の座から下ろしたのだって、みんな知ってます!!
わたくしが、この家の血を引いていないからっ!!!!」
「止めなさい!!! 何を言うのよっ!?!?!!」
「いいえ、止めません!! お母様こそ、もう嘘は止めましょう!!
わたくしがエルカダ侯爵家の血を引いているかのように装い、この家に縛り付けようとしないで下さい!!」
声を張り上げるアリーチェにサバサも負けじと声を張り上げる。訳の分からない事を騒ぎ出した娘の言葉をどうにか消し去りたいかの様にサバサは叫んだ。
「貴女は旦那様の子です!!!」
しかしアリーチェも負けない。
「そんな嘘っ! もう聞きたくありません!!!」
「嘘ではありません!! どうしてそんな事を言うのっ!?!?!」
悲鳴にも似た母の声に、アリーチェは少しだけ声量を下げて言葉を続ける。
「……では何故、何故お母様はわたくしを憎んでいるのですか……?」
悲しげな娘の言葉にサバサはそこで初めて怒りとは違う戸惑いを見せた。
「に、憎んでなど、いません!! さっきから何ですっ?! 何でそんな事を言うのですっ!?!」
「お母様がわたくしを愛してはいないからです!!
一度も、生まれてから一度もお母様に愛されたことがありません!!!
むしろ憎まれ、ずっと嫌われてきました!!
そんなわたくしが、今更お母様の言葉を信じられる訳がありませんわ!!」
「なっ!? 嫌ってなど……っ!?」
「ではっ、ではどうしてわたくしを愛しては下さらなかったのです!! ずっと厳しく、笑いかけてすら下さいませんでした!! あからさまにルナリアと差を付けて……っ! それはわたくしがお父様の子じゃないからでしょう!!」
「なっ!? 厳しくしていたのは貴女が次期当主だからでっ!!」
「その権利をわたくしから奪ったのはお母様ではないですか!!
今更それが理由だと言われても信じられる訳がありません!!
お母様はわたくしが生まれた時から嫌いだったのです!!
何故ならそれは! わたくしがお母様を襲った男の子供だったから!!!」
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「何を言うの?!?!」
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「止めなさい!!! 何を言うのよっ!?!?!!」
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「……では何故、何故お母様はわたくしを憎んでいるのですか……?」
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