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8>> 新たな婚約

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 ホブス伯爵家当主とシーキアス侯爵家当主の話し合いは速やかに行われ、滞りなくマリーナとリゼオンの婚約は解消された。

 シーキアス侯爵はリゼオンが発言した通り『婚約破棄』で話を進めようと考えていたがホブス伯爵は今後の両家の関係の為にも『婚約解消』で話をまとめる事を願った。シーキアス侯爵もそれに異論がある筈も無く、感謝と共に『婚約解消』の書類へとサインをした。

 マリーナとリゼオンとの婚約が解消されるとホブス伯爵は直ぐ様アゼーム伯爵と連絡を取り合った。
 マリーナとグエインの婚約の為である。
 さすがに婚約解消後、直ぐに新たな婚約を結ぶのは世間体が悪いとして、正式に婚約を結ぶのは半年後となった。それまでは仮契約としてマリーナとグエインの婚約は認められた。

 仮契約だと言っても決定したことになんら変わりはない。
 この2人の婚約に喜んだのは望んだグエインよりも両家の夫人たちだった。
 グエインの母であるミラエラとマリーナの母であるフィーナは二人が学生の頃からの親友だった。そんな親友同士の2人が、自分の子供たちが結婚すると知って大人しく出来る訳はなかった。
 普段は伯爵家の夫人として落ち着いた態度のミラエラとフィーナは第一報を聞いた時にはどちらも少女の様に飛び跳ねて夫を驚かせた。

 それからは早かった。

 夫人たちは直ぐに連絡を取り合い、会って泣きながら抱き合い、夫そっちのけで今後の事を話し合った。婚約式の事、結婚式の事、住む家の事、孫の事。
 夫たちから「早過ぎる」「当人たちの意見を聞いてやれ」と言われてもどこ吹く風で、マリーナとグエインも苦笑しながらも「母たちに任せる」と言ったので、言質を取った母たちを誰も止める事が出来なくなった。
 まだ仮婚約の段位だと言うのに既に結婚式の話で盛り上がっている夫人たちに、他の家族は呆れながらもそれを微笑ましく見守った。

 マリーナは突然の婚約破棄からトントン拍子で進む話に目を回していたが、リゼオンといる時には感じたことのない胸の温かさと楽しさに、少しだけ困惑しながらも微笑んでいた。
 胸の奥から幸せが溢れてくるようだった。
 初めて感じるその不思議な感覚に、マリーナは新しい自分の婚約者であるグエインに感謝した。
  
 
 
 
       
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