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6>>彼女は自由になりました
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「え? ……居ない?」
突然押しかけてきたシンシアを追い払うでもなく受け入れてくれたグライド子爵と向き合って、シンシアは応接室のソファーに座っていた。
アメリアの父 グライド子爵当主は愛想もない顔でシンシアを見ていた。その視線に居心地の悪さを感じたものの気圧されている場合ではないとシンシアはグッと奥歯を噛み締めた。
「どこに……
アメリアさんはどこの家に嫁がれたのですか?」
実家に居なければ嫁いだのだろうと安直な答えを出したシンシアはそう聞き返した。
グライド子爵はその質問に小さく首を傾げると一度視線を天井へと向けてから
「嫁いだと表現するのでしたら、“神”、ですかねぇ……?」
「え?」
驚いて目を見張るシンシアにグライド子爵はここで初めて少しだけ目を細めて笑った。
「アメリアは密かな願いであった夢を叶え、“聖職者”になったのですよ」
「せい、しょく……しゃ……?」
シンシアはよく分からずに聞こえたままを聞き返す。そして
「しゅ、修道院へ入られたのですか?!」
そう驚いて声を上げた。
しかしグライド子爵はその言葉を聞いて呆れた様に目を細め、ハッキリと溜め息を吐いた。
「……教会へ入ったのですよ。聖職者は修道院にしか居ないと思っておられるのですか?」
グライド子爵の言い方に、馬鹿にされたと気付いたシンシアはカッと顔を赤く染めた。
「そんな事は言ってはおりません!
何故アメリアさんは教会などに入られたのですか?! そんなにロメロとの婚約解消がツラかったのですか!?」
馬鹿にされた事に対して言い返す様に矢継ぎ早に喋ったシンシアにグライド子爵はあからさまに呆れ果てたと顔に出して今度は大きく溜め息を吐いた。
「はぁ……
何故そんな考え方しかできないんですか……
アメリアの行動に婚約解消したロメロ君は関係ありませんよ。赤の他人になったのですから。
先に言ったでしょう。“密かな願いであった夢”だと。
アメリアは学園に入学する前には教会で奉仕する聖職者に憧れていましてね。婚約者としてロメロ君一人の為に力を使っていましたが、この力を使えばもっとたくさんの人を救えるのではないか? と、悩んでおりまして。
貴族の娘としての義務を全うすべく頑張って居ましたが、相手側から盛大に拒絶されたので、これ幸いにと未練もなく夢を叶えに行きましたよ」
グライド子爵の言葉を聞いてシンシアは自分の体から血の気が引いていくのが分かった。
少しだけ、……少しだけ期待していたのだ。アメリアと直接会ってお願いすればロメロは直ぐに良くなると。
すれ違いはあったが、長年婚約者をしていたのだからアメリアにだってロメロへの情があるはず。こちらが頭を下げて頼めばロメロに力を使ってくれるに決まっていると思っていたのだ。
それなのに当のアメリアが居なくてシンシアの動揺は凄まじかった。だがロメロの為にはこのまま帰る訳にはいかない。
冷たい視線で自分を見てくるグライド子爵に怯まない様、グッと強く手を握ってシンシアはグライド子爵と目を合わせた。
「どこの……、何処の教会へ行かれたのですか?」
そう追いすがるシンシアにグライド子爵は眉間にシワを寄せて不快だと言わんばかりの表情をした。
「……散々人の娘を詐欺師だ虚言だと馬鹿にしておいて、まだ娘に縋るのですか?
あなた方は私の娘を都合の良い道具か何かかと思っておられるのですかな?」
「っ!? そ、そんな事は思っておりません!
し、知らなかったのです! ロメロはっ、ロメロはアメリアさんの力の事をちゃんと理解していなかったのです! だからあんな事をっ!!」
「知らなかったのではなく、知ろうとしなかった、でしょう。
あの二人が何年婚約関係にあったと思うのですか。その間にロメロ君が少しでもアメリアを理解しようとしていれば、周りはちゃんと伝えていたのですから、どこかで確認なり試すなりして気付けた筈でしょうに。
……まぁ……、知らなかったからといって、暴言を吐いて詐欺師呼ばわりして良い理由にはなりませんがねぇ……」
「すみません……すみません…………」
シンシアは俯いて謝罪するしか出来なかった。ロメロが暴言さえ言わなければ……あの時、隣に居た自分が止めていれば……、そんな後悔がシンシアの中で渦まく。
そんなシンシアを見てグライド子爵は疲れた様に肩をすくめてまた溜め息を吐いた。
「貴女にこんな事を言っても無意味でしたね。貴女もロメロ君の被害者だ。
彼が周りの言葉にもっとちゃんと耳を傾け、その言葉を理解する努力を少しでもしていれば、貴女はロメロ君の様な“将来の無い男”と結婚する事もなかったのに」
「そっ、そんな風に言わないで下さいませっ!!
わたくしはっ、わたくしはロメロ様を愛しております! この先どうなろうと、ロメロ様がアメリアさんよりわたくしを選んで下さった事に感謝しか感じておりません!!」
そう言って遂に泣き出してしまったシンシアに流石に虐め過ぎてしまったとグライド子爵は頭を掻いて眉尻を下げた。
グライド子爵にとってシンシアは『娘の婚約者を寝取ったアバズレ』だ。爵位が上の令嬢だからと言って、婚約者の居る男に婚約者が居る事を分かっていて親しくなった女など淑女ではない。
子爵家が、理由はどうあれ侯爵家と親族となれる機会を潰してくれたシンシアに、グライド子爵は恨みしかなかった。
だが彼女もこれからどうせ明るい未来は無い。
人の婚約者に手を出した報いは受けるのだ。
グライド子爵は冷めた目をシンシアに向けて口を開いた。
「アメリアは今持っている力を更に強める為にこの国から遠く離れた霊山にある聖輪父神殿へと修行する為に旅立ちました。
力を付けて帰ってくるまでに5年は掛かるのではないかと言っていたので、5・6年経てば多分この国のどこかの教会へと戻ってきますよ」
その話を聞いてシンシアは絶望した。
「そ……そんな……
5年なんて……もうロメロ様は動く事もままならないのに…………」
この世界で唯一存在する恐ろしく高く美しいとされる山、“我らの父”の住む場所キリフィリア霊山。その山の位置を思い出してシンシアの心は奈落の底へと落ちていく。
外に出る事も難しくなっているロメロに長旅など無理だ。だが、5年の歳月をロメロが待てるかどうかと問えば……それも無理だとシンシアの本能がそう答えを導き出す。
ただアメリアに会えれば……それだけでいいのに…………
突きつけられた現実に絶望するシンシアにグライド子爵は伝える。
「娘は、やっと縛り付けられた呪縛から解き放たれ、やっと心のままに自分の夢を叶える事が出来るのですよ。
貴女もロメロ君も、自分たちが思うままに行動してきたのでしょう?
娘はやっとそれが出来る様になったのです。
ですから……
これ以上、私の娘に縋って娘をロメロ君の人生に縛りつけるのは止めてくれませんかねぇ?」
グライド子爵の言葉に、シンシアはもう何も言い返す事ができなかった。
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「え? ……居ない?」
突然押しかけてきたシンシアを追い払うでもなく受け入れてくれたグライド子爵と向き合って、シンシアは応接室のソファーに座っていた。
アメリアの父 グライド子爵当主は愛想もない顔でシンシアを見ていた。その視線に居心地の悪さを感じたものの気圧されている場合ではないとシンシアはグッと奥歯を噛み締めた。
「どこに……
アメリアさんはどこの家に嫁がれたのですか?」
実家に居なければ嫁いだのだろうと安直な答えを出したシンシアはそう聞き返した。
グライド子爵はその質問に小さく首を傾げると一度視線を天井へと向けてから
「嫁いだと表現するのでしたら、“神”、ですかねぇ……?」
「え?」
驚いて目を見張るシンシアにグライド子爵はここで初めて少しだけ目を細めて笑った。
「アメリアは密かな願いであった夢を叶え、“聖職者”になったのですよ」
「せい、しょく……しゃ……?」
シンシアはよく分からずに聞こえたままを聞き返す。そして
「しゅ、修道院へ入られたのですか?!」
そう驚いて声を上げた。
しかしグライド子爵はその言葉を聞いて呆れた様に目を細め、ハッキリと溜め息を吐いた。
「……教会へ入ったのですよ。聖職者は修道院にしか居ないと思っておられるのですか?」
グライド子爵の言い方に、馬鹿にされたと気付いたシンシアはカッと顔を赤く染めた。
「そんな事は言ってはおりません!
何故アメリアさんは教会などに入られたのですか?! そんなにロメロとの婚約解消がツラかったのですか!?」
馬鹿にされた事に対して言い返す様に矢継ぎ早に喋ったシンシアにグライド子爵はあからさまに呆れ果てたと顔に出して今度は大きく溜め息を吐いた。
「はぁ……
何故そんな考え方しかできないんですか……
アメリアの行動に婚約解消したロメロ君は関係ありませんよ。赤の他人になったのですから。
先に言ったでしょう。“密かな願いであった夢”だと。
アメリアは学園に入学する前には教会で奉仕する聖職者に憧れていましてね。婚約者としてロメロ君一人の為に力を使っていましたが、この力を使えばもっとたくさんの人を救えるのではないか? と、悩んでおりまして。
貴族の娘としての義務を全うすべく頑張って居ましたが、相手側から盛大に拒絶されたので、これ幸いにと未練もなく夢を叶えに行きましたよ」
グライド子爵の言葉を聞いてシンシアは自分の体から血の気が引いていくのが分かった。
少しだけ、……少しだけ期待していたのだ。アメリアと直接会ってお願いすればロメロは直ぐに良くなると。
すれ違いはあったが、長年婚約者をしていたのだからアメリアにだってロメロへの情があるはず。こちらが頭を下げて頼めばロメロに力を使ってくれるに決まっていると思っていたのだ。
それなのに当のアメリアが居なくてシンシアの動揺は凄まじかった。だがロメロの為にはこのまま帰る訳にはいかない。
冷たい視線で自分を見てくるグライド子爵に怯まない様、グッと強く手を握ってシンシアはグライド子爵と目を合わせた。
「どこの……、何処の教会へ行かれたのですか?」
そう追いすがるシンシアにグライド子爵は眉間にシワを寄せて不快だと言わんばかりの表情をした。
「……散々人の娘を詐欺師だ虚言だと馬鹿にしておいて、まだ娘に縋るのですか?
あなた方は私の娘を都合の良い道具か何かかと思っておられるのですかな?」
「っ!? そ、そんな事は思っておりません!
し、知らなかったのです! ロメロはっ、ロメロはアメリアさんの力の事をちゃんと理解していなかったのです! だからあんな事をっ!!」
「知らなかったのではなく、知ろうとしなかった、でしょう。
あの二人が何年婚約関係にあったと思うのですか。その間にロメロ君が少しでもアメリアを理解しようとしていれば、周りはちゃんと伝えていたのですから、どこかで確認なり試すなりして気付けた筈でしょうに。
……まぁ……、知らなかったからといって、暴言を吐いて詐欺師呼ばわりして良い理由にはなりませんがねぇ……」
「すみません……すみません…………」
シンシアは俯いて謝罪するしか出来なかった。ロメロが暴言さえ言わなければ……あの時、隣に居た自分が止めていれば……、そんな後悔がシンシアの中で渦まく。
そんなシンシアを見てグライド子爵は疲れた様に肩をすくめてまた溜め息を吐いた。
「貴女にこんな事を言っても無意味でしたね。貴女もロメロ君の被害者だ。
彼が周りの言葉にもっとちゃんと耳を傾け、その言葉を理解する努力を少しでもしていれば、貴女はロメロ君の様な“将来の無い男”と結婚する事もなかったのに」
「そっ、そんな風に言わないで下さいませっ!!
わたくしはっ、わたくしはロメロ様を愛しております! この先どうなろうと、ロメロ様がアメリアさんよりわたくしを選んで下さった事に感謝しか感じておりません!!」
そう言って遂に泣き出してしまったシンシアに流石に虐め過ぎてしまったとグライド子爵は頭を掻いて眉尻を下げた。
グライド子爵にとってシンシアは『娘の婚約者を寝取ったアバズレ』だ。爵位が上の令嬢だからと言って、婚約者の居る男に婚約者が居る事を分かっていて親しくなった女など淑女ではない。
子爵家が、理由はどうあれ侯爵家と親族となれる機会を潰してくれたシンシアに、グライド子爵は恨みしかなかった。
だが彼女もこれからどうせ明るい未来は無い。
人の婚約者に手を出した報いは受けるのだ。
グライド子爵は冷めた目をシンシアに向けて口を開いた。
「アメリアは今持っている力を更に強める為にこの国から遠く離れた霊山にある聖輪父神殿へと修行する為に旅立ちました。
力を付けて帰ってくるまでに5年は掛かるのではないかと言っていたので、5・6年経てば多分この国のどこかの教会へと戻ってきますよ」
その話を聞いてシンシアは絶望した。
「そ……そんな……
5年なんて……もうロメロ様は動く事もままならないのに…………」
この世界で唯一存在する恐ろしく高く美しいとされる山、“我らの父”の住む場所キリフィリア霊山。その山の位置を思い出してシンシアの心は奈落の底へと落ちていく。
外に出る事も難しくなっているロメロに長旅など無理だ。だが、5年の歳月をロメロが待てるかどうかと問えば……それも無理だとシンシアの本能がそう答えを導き出す。
ただアメリアに会えれば……それだけでいいのに…………
突きつけられた現実に絶望するシンシアにグライド子爵は伝える。
「娘は、やっと縛り付けられた呪縛から解き放たれ、やっと心のままに自分の夢を叶える事が出来るのですよ。
貴女もロメロ君も、自分たちが思うままに行動してきたのでしょう?
娘はやっとそれが出来る様になったのです。
ですから……
これ以上、私の娘に縋って娘をロメロ君の人生に縛りつけるのは止めてくれませんかねぇ?」
グライド子爵の言葉に、シンシアはもう何も言い返す事ができなかった。
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