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 わたくしは開いていた扇を畳んで微笑んでいる口元をフィーナに見せた。
 そして優しく伝える。

「わたくしは犯罪者。
 なら、人の婚約者を奪う貴女は何かしら?
 わたくしが当て馬と言うけれど、では貴女は?
 泥棒猫ではないの?
 そして、、、

 この状況で、何故自分が解放されると思っているの?」

 わたくしの純粋な疑問を聞いてフィーナが一瞬動きを止める。
 そして、徐々に徐々にその表情から血の気が引いていくのがありありと見えた。

「え? ……な、………え?
 なに、言っ、て、るの……?」

 そんな事を言うフィーナの後ろから控えていた男が彼女の肩を押さえる。

「っ?! 痛っ!!
 触んないでよっ!? 止めてよっ!!」

 暴れるフィーナが床に押さえつけられてわたくしからは彼女の顔は見えなくなる。
 そこまでされてやっと彼女は現状が理解できた様だった。

「え?! ま、待ってよ!? こんなの脅しなんでしょ?! 私を怖がらせて手を引かせたいのよねえ?! ねえってば?!?
 や、 止めてよっ!! 止めさせてってば!! 離してよっ!!」

 男に押さえられて暴れるフィーナにわたくしは冷めた目を向ける。


 この世界の舞台となった乙女ゲームの悪役令嬢の末路は、平民落ちか娼館行き。

 どちらのルートになっても、わたくしは今のフィーナの様な扱いをどこかでされていたと思う。
 平民落ちで喜ぶのは力のある者だけ。普通の女、それも貴族の令嬢として育った女が一人、保護する者も側に居ない状態で平民街や貧民街を歩いていたら直ぐに人に騙されるか人攫い遭うでしょう。娼婦に落ちたらその時点で人権は無いのも同じ。

 ゲームをスタートさせたという事は、この子は、ヒロインフィーナはわたくしをそんな目に遭わせる気があったという事。

 自分の幸せの為にわたくしを蹴落とし踏みにじる気満々だったという事。


 そんな人に、何故わたくし悪役令嬢が情けを掛けなければいけないのかしら?




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