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25>> お父様との対決
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「何がっ、……何ができるかなど聞いていない!!
お前が『何かしている』と言っているんだ!! お前がしたに決まっている!!
よくも父にこんなことをしたな!
分かっているのか!!!」
怒りのままに叫んだお父様が魔力を溜めるのが分かりました。
お父様が得意なのは風の魔法です。
魔力で風を操り、物を浮かせて飛ばしてきたりします。
今もお父様はわたくしに向かって物を投げようと魔力を使用しました。
「……………」
わたくしはただ冷静にお父様を見つめます。
きっと無表情で無感情な顔をしていることでしょう。
「っ!? ……ぐ、ぐあああぁあ!!!」
お父様が叫んで、手で顔を覆いました。
悶えるように体を屈めて叫びます。
しかしその声は、きっと外には聞こえないでしょう。
だって外の雨は嵐のようです。
窓を叩く雨の音も大きくて、お父様の声をかき消します。
「まぁ……お父様。
どう、されたのですか?」
右目を押えて悶えるお父様にわたくしは声を掛けます。
抑揚のない声で。
苦痛に歪んだ、それでも憎しみの篭った顔で、お父様が左目だけで睨んできます。
「き、貴様……、何をしたっ!!!」
「ですから、先程から聞いているではないですか。
わたくしが、何をしたと、言うのですか?
……いえ、言い方を変えますね。
わたくしに、何ができると言うのですかお父様。
わたくしを、ずっとずっと無能だと、何もできない出来損ないだと言ってきたお父様が、
わたくしに『何ができる』と思っているのですか?」
「…………っ!!」
血を吐きそうなくらいに歯を噛み締めたお父様をわたくしはただ冷めた目で見返します。
ただ言えばいいのです。
その身に起こっている事を、そのまま感じたままに言葉にすればいいのです。
それだけの事を……お父様はされません。
きっとプライドの問題なのでしょう。
『無能』だと蔑んでいた娘が無能では無かった。
それを自分の口から認める事ができないのでしょう。
わたくしの口から言わせて『そんな事をしたのか酷い奴め』と言いたいけれど、自分の口から言って『お前はこんな酷いことをした』と、わたくしにはそんな酷いことができるのだと自らの発言で認めたくないのでしょう。
そんなお父様に、わたくしは今までお父様に見せたことはない、呆れた表情を作ってお父様と目を合わせます。
「……はぁ……
わたくしを無能だ欠陥品だ出来損ないだと散々言ってきたのに、何か問題が起これば全てわたくしの所為になさる……
“何をした”かも分からないのに“わたくしが何かした”と、こんな時だけ『わたくしにはその能力がある』と言われるのですね……」
「っ……ならお前のその態度はなんだ!?
慌てることもせず! 驚きもせず!!
その顔は“何が起こっているのか分かっている”者の反応だ!!」
そう騒ぐお父様の初めて見るその姿に、わたくしは何だが可笑しくなって少し笑ってしまいました。
そんなわたくしの姿にお父様は更に頭に血を上らせ顔を赤くします。
しかし、一度グッと奥歯を噛まれたと思うとハアァァァと大きな溜め息を吐かれて、自分の高ぶった気持ちを落ち着かされました。そして取り繕うように落ち着いた顔を作り、怒っていた表情を今度は少しだけ困った様な表情にして、わたくしに左目を向けました。
「ロンナ……、父はお前を責めている訳ではない。
お前はきっと勘違いをしているのだ。
無能だと言われた事を怒っているのだろう?
でも仕方がないではないか。事実だったのだから。
だがどうやら今のお前は違うようだ。お前の身に何があったかは分らないが、お前が魔法を使えるようになった事はただただ喜ばしいことだ。
私は嬉しいよ。
そうだな。“何をした”“何ができる”など、今はそこまで重要なことではない。
お前が魔法を使えるようになった。その事こそが重要だ。
無能だと邪険にされて拗ねてしまったかな? 力を示して私に認められたかったのだな。
この痛みがロンナの心の痛みなら、父として私も受け入れよう。
なに、怪我なら回復魔法で治る。お前が気にすることではない。
父はな……」
右目を押えながら何か語りだしたお父様がよく分からずに、わたくしは何だか単純に不愉快になりました。
こういう、お父様の『受け入れてあげている』というスタンスで『何も理解していない』ところが昔から嫌いでした。
わたくしは苛立ちのままに魔法を発動します。
先程と同じ魔法を。
お父様の右目の眼球の中の水分や目玉の周りに張った水の膜がグッチャグチャになるように……
「あぁああああああ!!!」
痛みでお父様が叫びます。
ですがわたくしは魔法を止める気にはなりませんでした。
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「何がっ、……何ができるかなど聞いていない!!
お前が『何かしている』と言っているんだ!! お前がしたに決まっている!!
よくも父にこんなことをしたな!
分かっているのか!!!」
怒りのままに叫んだお父様が魔力を溜めるのが分かりました。
お父様が得意なのは風の魔法です。
魔力で風を操り、物を浮かせて飛ばしてきたりします。
今もお父様はわたくしに向かって物を投げようと魔力を使用しました。
「……………」
わたくしはただ冷静にお父様を見つめます。
きっと無表情で無感情な顔をしていることでしょう。
「っ!? ……ぐ、ぐあああぁあ!!!」
お父様が叫んで、手で顔を覆いました。
悶えるように体を屈めて叫びます。
しかしその声は、きっと外には聞こえないでしょう。
だって外の雨は嵐のようです。
窓を叩く雨の音も大きくて、お父様の声をかき消します。
「まぁ……お父様。
どう、されたのですか?」
右目を押えて悶えるお父様にわたくしは声を掛けます。
抑揚のない声で。
苦痛に歪んだ、それでも憎しみの篭った顔で、お父様が左目だけで睨んできます。
「き、貴様……、何をしたっ!!!」
「ですから、先程から聞いているではないですか。
わたくしが、何をしたと、言うのですか?
……いえ、言い方を変えますね。
わたくしに、何ができると言うのですかお父様。
わたくしを、ずっとずっと無能だと、何もできない出来損ないだと言ってきたお父様が、
わたくしに『何ができる』と思っているのですか?」
「…………っ!!」
血を吐きそうなくらいに歯を噛み締めたお父様をわたくしはただ冷めた目で見返します。
ただ言えばいいのです。
その身に起こっている事を、そのまま感じたままに言葉にすればいいのです。
それだけの事を……お父様はされません。
きっとプライドの問題なのでしょう。
『無能』だと蔑んでいた娘が無能では無かった。
それを自分の口から認める事ができないのでしょう。
わたくしの口から言わせて『そんな事をしたのか酷い奴め』と言いたいけれど、自分の口から言って『お前はこんな酷いことをした』と、わたくしにはそんな酷いことができるのだと自らの発言で認めたくないのでしょう。
そんなお父様に、わたくしは今までお父様に見せたことはない、呆れた表情を作ってお父様と目を合わせます。
「……はぁ……
わたくしを無能だ欠陥品だ出来損ないだと散々言ってきたのに、何か問題が起これば全てわたくしの所為になさる……
“何をした”かも分からないのに“わたくしが何かした”と、こんな時だけ『わたくしにはその能力がある』と言われるのですね……」
「っ……ならお前のその態度はなんだ!?
慌てることもせず! 驚きもせず!!
その顔は“何が起こっているのか分かっている”者の反応だ!!」
そう騒ぐお父様の初めて見るその姿に、わたくしは何だが可笑しくなって少し笑ってしまいました。
そんなわたくしの姿にお父様は更に頭に血を上らせ顔を赤くします。
しかし、一度グッと奥歯を噛まれたと思うとハアァァァと大きな溜め息を吐かれて、自分の高ぶった気持ちを落ち着かされました。そして取り繕うように落ち着いた顔を作り、怒っていた表情を今度は少しだけ困った様な表情にして、わたくしに左目を向けました。
「ロンナ……、父はお前を責めている訳ではない。
お前はきっと勘違いをしているのだ。
無能だと言われた事を怒っているのだろう?
でも仕方がないではないか。事実だったのだから。
だがどうやら今のお前は違うようだ。お前の身に何があったかは分らないが、お前が魔法を使えるようになった事はただただ喜ばしいことだ。
私は嬉しいよ。
そうだな。“何をした”“何ができる”など、今はそこまで重要なことではない。
お前が魔法を使えるようになった。その事こそが重要だ。
無能だと邪険にされて拗ねてしまったかな? 力を示して私に認められたかったのだな。
この痛みがロンナの心の痛みなら、父として私も受け入れよう。
なに、怪我なら回復魔法で治る。お前が気にすることではない。
父はな……」
右目を押えながら何か語りだしたお父様がよく分からずに、わたくしは何だか単純に不愉快になりました。
こういう、お父様の『受け入れてあげている』というスタンスで『何も理解していない』ところが昔から嫌いでした。
わたくしは苛立ちのままに魔法を発動します。
先程と同じ魔法を。
お父様の右目の眼球の中の水分や目玉の周りに張った水の膜がグッチャグチャになるように……
「あぁああああああ!!!」
痛みでお父様が叫びます。
ですがわたくしは魔法を止める気にはなりませんでした。
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□□■〔 注意 〕
※この話は作者(ラララキヲ)がノリと趣味と妄想で書いた物です。
なので『アナタ(読者)の"好み"や"好き嫌い"や"妄想"や"考察"』等には『一切配慮しておりません』事をご理解下さい。
※少しでも不快に感じた時は『ブラウザバック』して下さい。アナタ向けの作品ではなかったのでしょう。
■えげつないざまぁを求める人が居たので私的なやつを書いてみました。興味のある方はどうぞ😁↓
◇〔R18〕【聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】】
☆ブクマにしおりにエール、ありがとうございます!
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