水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ

文字の大きさ
上 下
22 / 29

22>> あれから

しおりを挟む
-




 わたくしにとっては人生で一番穏やかな日々を過ごすことになりましたが、わたくしの周りではなんだか慌ただしく暗い日々となっていた様です。


 まずお兄様ですが……
 わたくしが定期的に魔法で窒息させていたのでどうやら脳への酸素供給が減ってしまい、活発だったお兄様がぼうっとする事が多くなった様です。
 物忘れが酷くなり、物覚えも悪くなり、反応も鈍くなってきたとメイドたちが話しているのを聞きました。
 そういえば、盗聴魔法など出来ないものかと試行錯誤したのですが、さすがにそこまで万能な使い方は出来ませんでした。できて人の位置を把握するぐらいなので、わたくしは忍者のように邸の中で盗み聞きをしています。

 優秀な嫡男が居てパーシバル侯爵家は安泰だな、なんて言われていたのに今のお兄様には将来を心配する声が上がっているとか……
 この世界の回復魔法が万能ではないと思っていましたが、案の定継続して起こる体内の不調には対処が難しいようで、お兄様の死んだ脳細胞は回復していないみたいですね。
 その内お兄様もわたくしと同じ様に『無能』だと誰かに罵倒されるかもしれません。


 次はお義母様ですが……
 定期的に腕の太い血管の血を止めた結果、遂に腕が壊死して近い内に腕を切断する事が決まったそうです。
 医師を呼んでその都度回復魔法は掛けていた様ですが、常に邸に医師が居る訳ではないので──いくら侯爵家といっても貴重な医師を専属で邸に囲うことはできません──ダメージが蓄積していった様ですね。
 お義母様はわたくしだけでなく、使用人たちにも手を上げていたので、その『上げる手』が無くなり、今後の被害者が居なくなるのですから……わたくしは良いことをしたんじゃないでしょうか?
 お義母様が付けたわたくしの腕の傷はもう消えることはありませんが、もう絶対にそんなことをされることはないのだと思うと、やっとホッとできる気がします……


 さて、義妹ララーシュですが……
 彼女に掛けた魔法は『頭に血が上ったら下げる』だけの簡単なものです。
 実のところ、同じ魔法をわたくしが掛けられたとしても全く生活に影響がないと思える魔法なのですが、ララーシュにはそうではなかったみたいです。何をそんなに毎日興奮する事があるのかと思うほどにララーシュはほぼ毎日魔法が発動して貧血の様な症状に見舞われた様です。
 クラッと目眩がして体のバランスが崩れて壁に手を突きたくなるとか、少ししゃがんでしまうくらいのものですが、ララーシュは毎日そんな症状に襲われたことに恐怖して、最近では部屋に閉じ籠もり侍女ともあまり会わないようにしているとか……
 彼女が何にそんなに気持ちを高ぶらせることがあるのかとさっぱり理解できませんが、部屋で一人で居れば心穏やかにできているかと思いきや、彼女は一人でも何かに腹を立てて頭に血を上らせて倒れては、うめき声で部屋の外に待機している侍女を呼んで、駆けつけた侍女の所為にしては責め立ててまた興奮しては倒れるを繰り返しているとか……
 血が多いのも考えものですね。


 最後にカッシム様ですが……

 遂に跡継ぎを外されたようです。
 回復魔法を掛けてすぐは元気になるのに時間が経てばまた体調が悪くなりまた医師を呼ぶ……、そんなことを繰り返す長男にワゼロン侯爵は遂に決断したのでしょう。
 カッシム様は婚約者であるわたくしとも仲が悪いですしね。飛び抜けてカッシム様が優秀であったのならばワゼロン侯爵ももっとギリギリまで決断を渋ったでしょうけれど、カッシム様の弟君たちも優秀だと聞いています。優秀で、婚約者との関係も良好で、婚約者の実家も悪くないとなれば、わざわざお荷物になる欠陥品のパーシバル侯爵令嬢わたくしを家に入れて周りから嘲笑される種を抱え込む必要もないですものね。カッシム様はその点でも次期当主候補としては不利となっていたのです。
 婚約者は欠陥品で本人は病気持ち、ということでカッシム様は晴れて次期当主候補から外されました。ワゼロン侯爵家の後継者には次男様が選ばれたそうですわ。カッシム様は学園に戻ることなく領地に戻されて療養人生となるそうです。
 わたくしの魔法が切れたら、きっと直ぐに元気になられるでしょうね。その時にワゼロン侯爵家の後継争いがどうなるか……ちょっと気になります……

 あ、ついでにカッシム様の最愛のソフィーナ様ですが。
 彼女は若さの新陳代謝により徐々に体の潤いを取り戻してきているみたいです。回復魔法は乾燥肌には効かないんですよね。それが効くのでしたらこの国の女性は死ぬまでお肌がピッチピチのはずですものね。そうではないのでイケるだろうなって思ってました。体の代謝で治ることも。
 彼女には凄く嫌な気持ちにさせられましたが、そんな状態になったのも、全て“カッシム様が彼女を愛人に選んだから”だと分かっていますので、ソフィーナ様への仕返しはこんなものでいいかなって思います。だってカッシム様が愛人なんか作ろうと思わなければ、ソフィーナ様だって格上の侯爵令嬢に面と向かって暴言を吐くなんてことはしなかったでしょうから。
 だから……いいのです……

 あ、もう一回くらいは魔法掛けとこ。




 そして…………





-
しおりを挟む




□□■〔 注意 〕
※この話は作者(ラララキヲ)がノリと趣味と妄想で書いた物です。
 なので『アナタ(読者)の"好み"や"好き嫌い"や"妄想"や"考察"』等には『一切配慮しておりません』事をご理解下さい。

※少しでも不快に感じた時は『ブラウザバック』して下さい。アナタ向けの作品ではなかったのでしょう。

■えげつないざまぁを求める人が居たので私的なやつを書いてみました。興味のある方はどうぞ😁↓
◇〔R18〕【聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】



☆ブクマにしおりにエール、ありがとうございます!

あなたにおすすめの小説

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

その無能、実は世界最強の魔法使い 〜無能と蔑まれ、貴族家から追い出されたが、ギフト《転生者》が覚醒して前世の能力が蘇った〜

蒼乃白兎
ファンタジー
15歳になると、人々は女神様からギフトを授かる。  しかし、アルマはギフトを何も授かることは出来ず、実家の伯爵家から無能と蔑まれ、追い出されてしまう。  だが実はアルマはギフトを授からなかった訳では無かった。  アルマは既にギフト《転生者》を所持していたのだ──。  実家から追い出された直後にギフト《転生者》が発動し、アルマは前世の能力を取り戻す。  その能力はあまりにも大きく、アルマは一瞬にして世界最強の魔法使いになってしまった。  なにせアルマはギフト《転生者》の能力を最大限に発揮するために、一度目の人生を全て魔法の探究に捧げていたのだから。  無能と蔑まれた男の大逆転が今、始まる。  アルマは前世で極めた魔法を利用し、実家を超える大貴族へと成り上がっていくのだった。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

処理中です...