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9>>義姉のせい
しおりを挟む「お前も同じ目に遭わせようか?」
国王が脅すようにフリーネに語りかける。
フリーネは瞬時に顔を青ざめさせて頭を振った。
「嫌ですっ!! 嫌っ!! そんなの無理です! 死んでしまいますっ!! ギルっ!! ギル様助けてっ!! 嫌よ!! わたくし国外追放なんて嫌ぁっっ!!」
フリーネは泣き叫んだ。
その様子に国王ははっきりと呆れ果てて溜め息を吐いた。
「自分がそんなに嫌がる事を義姉にはさせたのか……」
「あ………」
「お前はずっと自分の事ばかりだな。
全てを義姉に擦り付けて自分は被害者になりきる。お前の言い分を信じるのはお前から魅了薬入りの菓子を貰った者だけだ。
……それも何故かあの日より効果が無くなったようだがな……」
不可解な出来事に訝しがる国王にフリーネは驚愕した顔を向ける。
「な、なんで……、なんで効果が無くなったんですか? なんで突然……?」
フリーネは驚きの余り気づかない。
この場で『魅了薬の効果』を気にするのは、魅了薬に関わった者だけだと……。
「……それを私達も探っている最中だ」
呆れながらも国王はフリーネに答えた。『効かなくなった』事だけははっきりしている。しかしそれ以外は何も分かっていない。
「……突然なんておかしいじゃないですか……? あ、……お義姉様が居なくなってからおかしくなったんですよね……? お義姉様が居た時までは変わらなかったんですよね……? なら……ならやっぱりお義姉様のせいじゃないですか……、お義姉様が何かしてたんですよ……だからお義姉様が居なくなった途端に効力が無くなったんですよ……! ほら、……ほらやっぱりお義姉様のせいだ…っ! お義姉様が居なくなってからおかしくなったんですから、お義姉様が悪いんですよ!! ね、ほら! 全部繋がった!!
国王様! 全部お義姉様のせいなんですよ! お義姉様が悪いんです!!」
嬉々として義姉が悪いと言い出したフリーネはもはや狂気だった。
卒業式の次の日、リネットが国外追放された日から魅了薬の効力が無くなったのは事実だが、その原因がリネットかどうかなど調べる事も出来ない。まずそんな事が出来るかどうかすら分かっていない。
魔法のあるこの世界で、出来る事も出来ない事もまだ全て判明している訳ではない。
だが、『リネットが生まれる遙か昔から魅了薬は存在していた』のに『リネットが居なくなってから魅了薬の効果が無くなったから、魅了薬の効果はリネットが起こしていた』などとは誰も思わないだろう。むしろリネットが居なくなったと同時期に『魅了薬の効力が無くなった』と考える方が自然だ。フリーネの様に『リネットが』と紐付けるのには無理があり過ぎる。リネットにそこまでの力があれば易々と国外追放などにはされないだろう。
抵抗も出来ずに突然国外に放り出された無力な令嬢に、何が出来るというのだろうか……。
フリーネがリネットのせいにすればする程にフリーネへの疑惑が増すだけだった。
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