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二章 自分探しをしてみた
5 自分で決めた進路
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1・
ホルンを救うためのメッセージを入れてから、何故だか無性に勉強がしたくなってきた。
ナナに家庭教師になってもらい、本当に龍神に必要な知識の詰め込みにチャレンジしてみた。
思った以上にナナが博学で驚いたものの、そこは表に出さずに純粋に感謝した。
そして夕方まで、久しぶりに有意義な時間を過ごせた。
夜、ナナに給仕してもらった俺の夕食が終わった後で、ホルンが帰ってきた。
「ホルン、あのさあ、クビになりたかったのか?」
「いいえ、全く。エリック様の楽しみを増やしただけです」
「そういえば楽しかったな。よし、マジで許してやるぞ」
「慈悲深きお言葉に、感謝いたします」
「だったら、また写真撮らせろ」
そう頼んだが、ホルンは脱兎のごとく逃げ出した。後ろ姿だけは撮れたものの、誰か判別つかない程度なので掲載は諦めた。
寝る前になり、今日はもうネタがないと思いつつ、つぶやき君にアクセスした。
そしたらまた、沢山の記事があった。
「本物って!? マジでか!」
「許可くれたって、それどういう意味! マジヤバイ!」
「っていうか、エリック様ここ見てんの?」
見てまーす。
「このテンションでも許されるものか? そりゃ、他と比べてかなりマイルドな場所ではあるが」
「そういう堅苦しいことは置いておいて、純粋に楽しみましょうよ。軍人ジェラルド万歳!」
「エリック様バンザイ! 次は風呂場でお願いします!」
「それさすがにヤバイ」
「いや、ジェラルド君の勇気を信じよう。そして尊い犠牲を忘れないようにしよう……」
「死ぬの決定ですか」
嫌だ。なので、風呂場は無しと打ち込んだ。
「来た、当人来た!!」
「逃がすな! 質問し続けろ! どこ所属の軍人ですか?」
考えて無かった。宇宙軍とだけ書いた。
「エリック様、宇宙におられるのね」
「星の上でも宇宙だろ」
「エリック様ってどこにいます?」
秘密と書いた。
「当たり前すぎる。尻尾出して下さい」
「出したら、ジェラルド君は明日の光が拝めないぞ。ここは情報を小出しにしてもらうために、無難なネタの提供を求めたいものだ」
なるほど。無難なネタか。
じゃあ明日、笑顔ぐらい撮影してきますと書いた。
「明日! カモン!」
「寝顔の次は笑顔! その次は泣き顔を拝みたいと望みます!」
「さすがにそれマニアックだわ。エリック様逃げちゃうよ」
「済みません。ごめんなさい。じゃあ煽り顔で」
「よけいアカン。逃げられたな……」
その言葉通り、もう寝ることにした。
2・
翌日は晴れた。それでも自由時間を、勉強に当てた。
今日もこのまま知識が増えていくだけかなあと思っていると、昼前にバンハムーバ軍人たちが部屋まで乗り込んできた。
恐いぐらいの気迫で、つぶやき君の俺の写真について質問された。しょうがないので、全部俺が投稿したことにした。
「暇だったんです」
の一言で分かってもらえはしたものの、止めてもらいたそうな視線を痛いほど向けてくる。
でも楽しいし止めると言いたくないので、口を濁した。
そのうち、お客人の一人が、俺が何を勉強しているのか気付いた。
「エリック様、お暇だというのでしたら、本当にバンハムーバ宇宙軍の所属になりませんか? クリスタのロック様の下でしたら、安全に学べますし」
「え? そういうの……可能ですか?」
「もちろんです。子供時代の龍神様で、宇宙に出て戦う意思のある方は、必ずクリスタの宇宙軍士官学校に通うしきたりとなっています。いまこうしてエリック様が学ばれていることを、より詳しく効率的に教わることができます」
「そうなんですか」
全く知らなかった進路だ。ホルンは何故、教えてくれなかったのか。
教われば、俺の意思に反して選ばされる事になる可能性があったからか。
でも俺、この話を聞けて嬉しくなった。もっと早く聞きたかったと思うほどに。
「頼みます。俺、軍に入りたいです!」
どうしてここまで入りたがっているのか、自分で理解できていない。でも、これが自分の進みたい道だという心は分かる。
軍人たちはとても喜んでくれた。だから彼らを写真撮影したかったのに、それは断られて逃げられた。
なのでナナに、今の俺の笑顔を撮影してもらった。
この写真は、夜になってから投稿しておいた。
翌朝、普通にやって来てくれたホルンに、クリスタの宇宙軍学校に通うことにしたと伝えた。
ホルンも、笑顔で返してくれた。
「よい選択ですね。あちらの星での生活は、とても楽しいですよ」
「そういえば、ホルンの故郷と仕事場はクリスタなんだっけか。久しぶりに帰れるんだな」
「はい。でもそう長くは外出していませんでしたから、まだ望郷の念はありませんね」
「ホルンだったら、宇宙のどこで何年働こうが、全然平気っぽい」
「そうでもありません。私も色々と執着心はあります。なので生きているんです」
「名言だな……まあ、俺みたくありすぎるのは困るだろうけどな」
「エリック様も、最近はとても良くご自身を制御されていると思います。このまま感情に流されず、物事を冷静に見る目を養っていって下さい」
「いや、まだ自覚して数日しか経ってないじゃないか。とても危うい」
「それでも、上出来です。元々素直な方ですので、吸収が早いのです」
「……それ、ガキって意味か?」
「まさか。宇宙軍士官学校は学校と銘打たれていますが、龍神様にとっては実質的な軍への入隊です。ご就職、おめでとうございます。私は安心して、龍神の神殿に戻れます」
……え?
「一緒には……来ないのか? てっきり来るもんだと」
「宇宙軍学校にいる間は、あちらの軍人がたが世話人となります。神官は、宇宙に同行することはありません。神殿の留守を預かるのが役目です」
「そ……そうなのか。じゃあ……まあいつか、神殿に帰るな」
「お待ちしています。ですが、エリック様は母星在駐の龍神となられるかもしれません。そうすれば、なかなかお会い出来なくなりますね。少し寂しくもあります」
え?
「ホルンは……俺の追っかけじゃなかったのか」
「任務があり、付きまとっていただけです。貴方が良くなれば、私は傍におりません」
ホルンは満面の笑みで言った。
思ったよりも、あっさりだ。いや、俺が……期待し過ぎてたのか。
友達じゃなかったのかと考えたが、それは言わなかった。本当にガキの執着でしかないから。
ホルンが立ち去り、次にナナが来たから、今後を質問した。
「ナナはどうなるんだ?」
「どうなるも何も、私はこれからもずっと、この神殿にお仕えします」
「……だよな」
中学や高校を卒業する時、これほど他人と別れるのが嫌だなんて考えた事もなかった。
シナモンと離される時も、こういう気分じゃなく、もっと無機質な味のない暗闇を感じていただけ。
なのに出会って数日の二人と、どうしても別れたくないと思う。とても悲しい。
俺はそれだけ、ここでの生活を……宇宙に出てからの生活を楽しんでいたんだ。
今更行きたくなくなってきた。馬鹿みたいだ。
出てしまった涙を手で拭うと、ナナがハンカチを差し出してくれた。
「これ、もらっていいか?」
「はい。でも、もっと良いハンカチをお持ちしますよ」
「これがいい。ありがとう」
感謝し、俯いた。涙が止められなくて、情けない。
「ナナ、明日はデートしような」
「はい?」
ナナはしばらくのあいだ驚きのあまりか固まったが、後でちゃんと喜んでくれた。
翌日、本当にデートに出かけた。普通に接してくれているナナに違和感を憶えつつも、神殿周辺の観光地巡りをし、記念に写真撮影しまくった。
そして最後に神殿の正面玄関前にあるフルーツパーラーに入って、一人では食べきれないフルーツパフェを前にした。
途中で、二人で食べてもさすがに残す量だと判明した。残したら勿体ないので電話で助っ人を呼んで、お店の人に先に水とスプーンをもらっておいた。
すると、まだ誰もいない席を見たナナが、唐突に激しく泣き始めた。
俺は何が起こったか分からず、最高に焦った。
けれど何かを耐えるように大粒の涙をこぼすナナを見て、何となく分かった。
ウィスタリアの龍神の神殿は、心を癒したいものが頼る場所なんだと。
ホルンがあんなに俺の傍にいないのも、そっちで治療を手伝っているんだろう。
今の俺にできることは、今度は俺がナナにハンカチを渡すだけだ。
それでもナナはハンカチを受け取ってくれて涙を拭き、笑ってくれた。
その後で来た助っ人は、問題の席とは違う席に座り、新しい水とスプーンをもらって参戦してくれた。
俺はここでホルンとツーショットを撮り、ナナとも撮影した。
ナナのは完全に思い出だが、ホルンのとはつぶやき君に載せた。
とてもいい反応が返ってきた。
3・
数日後。
龍神三名とバンハムーバ政府から許可をもらえた俺は、入学が少し遅れることになったものの、今期の新入生としてクリスタの宇宙軍学校に通う事が決定した。
ナナとは神殿を後にする時に別れた。その時にしっかり抱きしめてもらったとしても、前に他人の手に感じていたような恐怖心が無くなっていた。
そしてホルンとは、俺を迎えに来てくれた軍艦に乗ってクリスタまで行った時に、軍港でハグしてお別れとなった。
あれだけ恐かったホルンとも、今はただ別れが寂しい親しい人としか感じない。
もしかしたら、ウィスタリアでの生活は、全部が俺にとっての治療であったのかもしれない。
詳しく聞こうにも、企んだ当人は笑顔のままで素早く立ち去っていった。
俺も、笑顔で手を振って見送った。
これからの新しい生活が、とても楽しみだ。
ホルンを救うためのメッセージを入れてから、何故だか無性に勉強がしたくなってきた。
ナナに家庭教師になってもらい、本当に龍神に必要な知識の詰め込みにチャレンジしてみた。
思った以上にナナが博学で驚いたものの、そこは表に出さずに純粋に感謝した。
そして夕方まで、久しぶりに有意義な時間を過ごせた。
夜、ナナに給仕してもらった俺の夕食が終わった後で、ホルンが帰ってきた。
「ホルン、あのさあ、クビになりたかったのか?」
「いいえ、全く。エリック様の楽しみを増やしただけです」
「そういえば楽しかったな。よし、マジで許してやるぞ」
「慈悲深きお言葉に、感謝いたします」
「だったら、また写真撮らせろ」
そう頼んだが、ホルンは脱兎のごとく逃げ出した。後ろ姿だけは撮れたものの、誰か判別つかない程度なので掲載は諦めた。
寝る前になり、今日はもうネタがないと思いつつ、つぶやき君にアクセスした。
そしたらまた、沢山の記事があった。
「本物って!? マジでか!」
「許可くれたって、それどういう意味! マジヤバイ!」
「っていうか、エリック様ここ見てんの?」
見てまーす。
「このテンションでも許されるものか? そりゃ、他と比べてかなりマイルドな場所ではあるが」
「そういう堅苦しいことは置いておいて、純粋に楽しみましょうよ。軍人ジェラルド万歳!」
「エリック様バンザイ! 次は風呂場でお願いします!」
「それさすがにヤバイ」
「いや、ジェラルド君の勇気を信じよう。そして尊い犠牲を忘れないようにしよう……」
「死ぬの決定ですか」
嫌だ。なので、風呂場は無しと打ち込んだ。
「来た、当人来た!!」
「逃がすな! 質問し続けろ! どこ所属の軍人ですか?」
考えて無かった。宇宙軍とだけ書いた。
「エリック様、宇宙におられるのね」
「星の上でも宇宙だろ」
「エリック様ってどこにいます?」
秘密と書いた。
「当たり前すぎる。尻尾出して下さい」
「出したら、ジェラルド君は明日の光が拝めないぞ。ここは情報を小出しにしてもらうために、無難なネタの提供を求めたいものだ」
なるほど。無難なネタか。
じゃあ明日、笑顔ぐらい撮影してきますと書いた。
「明日! カモン!」
「寝顔の次は笑顔! その次は泣き顔を拝みたいと望みます!」
「さすがにそれマニアックだわ。エリック様逃げちゃうよ」
「済みません。ごめんなさい。じゃあ煽り顔で」
「よけいアカン。逃げられたな……」
その言葉通り、もう寝ることにした。
2・
翌日は晴れた。それでも自由時間を、勉強に当てた。
今日もこのまま知識が増えていくだけかなあと思っていると、昼前にバンハムーバ軍人たちが部屋まで乗り込んできた。
恐いぐらいの気迫で、つぶやき君の俺の写真について質問された。しょうがないので、全部俺が投稿したことにした。
「暇だったんです」
の一言で分かってもらえはしたものの、止めてもらいたそうな視線を痛いほど向けてくる。
でも楽しいし止めると言いたくないので、口を濁した。
そのうち、お客人の一人が、俺が何を勉強しているのか気付いた。
「エリック様、お暇だというのでしたら、本当にバンハムーバ宇宙軍の所属になりませんか? クリスタのロック様の下でしたら、安全に学べますし」
「え? そういうの……可能ですか?」
「もちろんです。子供時代の龍神様で、宇宙に出て戦う意思のある方は、必ずクリスタの宇宙軍士官学校に通うしきたりとなっています。いまこうしてエリック様が学ばれていることを、より詳しく効率的に教わることができます」
「そうなんですか」
全く知らなかった進路だ。ホルンは何故、教えてくれなかったのか。
教われば、俺の意思に反して選ばされる事になる可能性があったからか。
でも俺、この話を聞けて嬉しくなった。もっと早く聞きたかったと思うほどに。
「頼みます。俺、軍に入りたいです!」
どうしてここまで入りたがっているのか、自分で理解できていない。でも、これが自分の進みたい道だという心は分かる。
軍人たちはとても喜んでくれた。だから彼らを写真撮影したかったのに、それは断られて逃げられた。
なのでナナに、今の俺の笑顔を撮影してもらった。
この写真は、夜になってから投稿しておいた。
翌朝、普通にやって来てくれたホルンに、クリスタの宇宙軍学校に通うことにしたと伝えた。
ホルンも、笑顔で返してくれた。
「よい選択ですね。あちらの星での生活は、とても楽しいですよ」
「そういえば、ホルンの故郷と仕事場はクリスタなんだっけか。久しぶりに帰れるんだな」
「はい。でもそう長くは外出していませんでしたから、まだ望郷の念はありませんね」
「ホルンだったら、宇宙のどこで何年働こうが、全然平気っぽい」
「そうでもありません。私も色々と執着心はあります。なので生きているんです」
「名言だな……まあ、俺みたくありすぎるのは困るだろうけどな」
「エリック様も、最近はとても良くご自身を制御されていると思います。このまま感情に流されず、物事を冷静に見る目を養っていって下さい」
「いや、まだ自覚して数日しか経ってないじゃないか。とても危うい」
「それでも、上出来です。元々素直な方ですので、吸収が早いのです」
「……それ、ガキって意味か?」
「まさか。宇宙軍士官学校は学校と銘打たれていますが、龍神様にとっては実質的な軍への入隊です。ご就職、おめでとうございます。私は安心して、龍神の神殿に戻れます」
……え?
「一緒には……来ないのか? てっきり来るもんだと」
「宇宙軍学校にいる間は、あちらの軍人がたが世話人となります。神官は、宇宙に同行することはありません。神殿の留守を預かるのが役目です」
「そ……そうなのか。じゃあ……まあいつか、神殿に帰るな」
「お待ちしています。ですが、エリック様は母星在駐の龍神となられるかもしれません。そうすれば、なかなかお会い出来なくなりますね。少し寂しくもあります」
え?
「ホルンは……俺の追っかけじゃなかったのか」
「任務があり、付きまとっていただけです。貴方が良くなれば、私は傍におりません」
ホルンは満面の笑みで言った。
思ったよりも、あっさりだ。いや、俺が……期待し過ぎてたのか。
友達じゃなかったのかと考えたが、それは言わなかった。本当にガキの執着でしかないから。
ホルンが立ち去り、次にナナが来たから、今後を質問した。
「ナナはどうなるんだ?」
「どうなるも何も、私はこれからもずっと、この神殿にお仕えします」
「……だよな」
中学や高校を卒業する時、これほど他人と別れるのが嫌だなんて考えた事もなかった。
シナモンと離される時も、こういう気分じゃなく、もっと無機質な味のない暗闇を感じていただけ。
なのに出会って数日の二人と、どうしても別れたくないと思う。とても悲しい。
俺はそれだけ、ここでの生活を……宇宙に出てからの生活を楽しんでいたんだ。
今更行きたくなくなってきた。馬鹿みたいだ。
出てしまった涙を手で拭うと、ナナがハンカチを差し出してくれた。
「これ、もらっていいか?」
「はい。でも、もっと良いハンカチをお持ちしますよ」
「これがいい。ありがとう」
感謝し、俯いた。涙が止められなくて、情けない。
「ナナ、明日はデートしような」
「はい?」
ナナはしばらくのあいだ驚きのあまりか固まったが、後でちゃんと喜んでくれた。
翌日、本当にデートに出かけた。普通に接してくれているナナに違和感を憶えつつも、神殿周辺の観光地巡りをし、記念に写真撮影しまくった。
そして最後に神殿の正面玄関前にあるフルーツパーラーに入って、一人では食べきれないフルーツパフェを前にした。
途中で、二人で食べてもさすがに残す量だと判明した。残したら勿体ないので電話で助っ人を呼んで、お店の人に先に水とスプーンをもらっておいた。
すると、まだ誰もいない席を見たナナが、唐突に激しく泣き始めた。
俺は何が起こったか分からず、最高に焦った。
けれど何かを耐えるように大粒の涙をこぼすナナを見て、何となく分かった。
ウィスタリアの龍神の神殿は、心を癒したいものが頼る場所なんだと。
ホルンがあんなに俺の傍にいないのも、そっちで治療を手伝っているんだろう。
今の俺にできることは、今度は俺がナナにハンカチを渡すだけだ。
それでもナナはハンカチを受け取ってくれて涙を拭き、笑ってくれた。
その後で来た助っ人は、問題の席とは違う席に座り、新しい水とスプーンをもらって参戦してくれた。
俺はここでホルンとツーショットを撮り、ナナとも撮影した。
ナナのは完全に思い出だが、ホルンのとはつぶやき君に載せた。
とてもいい反応が返ってきた。
3・
数日後。
龍神三名とバンハムーバ政府から許可をもらえた俺は、入学が少し遅れることになったものの、今期の新入生としてクリスタの宇宙軍学校に通う事が決定した。
ナナとは神殿を後にする時に別れた。その時にしっかり抱きしめてもらったとしても、前に他人の手に感じていたような恐怖心が無くなっていた。
そしてホルンとは、俺を迎えに来てくれた軍艦に乗ってクリスタまで行った時に、軍港でハグしてお別れとなった。
あれだけ恐かったホルンとも、今はただ別れが寂しい親しい人としか感じない。
もしかしたら、ウィスタリアでの生活は、全部が俺にとっての治療であったのかもしれない。
詳しく聞こうにも、企んだ当人は笑顔のままで素早く立ち去っていった。
俺も、笑顔で手を振って見送った。
これからの新しい生活が、とても楽しみだ。
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