竜の手綱を握るには 〜不遇の姫が冷酷無情の竜王陛下の寵妃となるまで〜

hyakka

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{ 竜人族の王国}

05. 夜伽です

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美しい装飾に縁取られた、大きな窓からは……柔らかな夕陽が差し込み、部屋全体を暖かく包み込んでいた。
分不相応に感じる部屋の広さや、その調度品に圧倒され、なんとも身の置き場がなく、窓辺に近づいた。

部屋の壁の中央に、バルコニーに続くガラス扉があることに気づいた。

そっと両手で開けると、木々の清涼な香りを乗せた、風が吹き込んできた。
円形のバルコニーに出てみると、涼やかな初春の風が頬を撫でた。
しばらく、バルコニーのベンチに腰掛け、ぼんやりと夕陽に染まった平地を眺めていると……とめどなく疑問が溢れてきた。

(なぜかしら?)

あの老王の様子では、例え運よく生き延びたとしても軽んじられ、碌な扱いは受けないと思っていたのに…こんな部屋。
精人族と竜人族の昨今の軋轢のおかげで、人質としての私の価値を見出したのか、それともこの程度の部屋は側室にとって当たり前なのか?
実は、何の価値もない身だということが、バレなければ良いけれど…。

そこに、先程の年配の召使が、もう一人の召使を連れ、部屋に入ってきた。

「ご準備します」

「??」
何のことか分からず、首を傾げる。

「夜伽です」

「……っ!」

「陛下は今晩、夜伽をお望みです」

召使は怪訝な顔で眉をひそめ、さも当然のことのように……最悪な刑の執行通知を告げた。
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