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【間】とある団員の苦労

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    時はサクヤがコカトリスの異空間に突っ込んだ日、3日前に遡る。







 3階建ての大きな建物…黎明の光デイブレイク本部の内を隅々まで駆け回る一人の青年がいた。



青年の名はリート。彼は茶色の長髪を首で1括りした髪型の為、まるで馬が掛けている様な雰囲気である。足音はしないが。



    彼はいつも通り自分のベッドで目覚め、なんとなく隅々までなにかを捜さないといけない様な気がして、朝日が昇るとすぐさまここにやってきて、鍛錬場の隅の物置小屋から始まり、使用していない埃っぽい部屋に更には屋根裏まで敷地内を端から端までを捜していた。



その誰かは誰なのかそもそも人なのか分からないけど、とにかく何が何でも捜し出さないといけない。と焦燥感に駆られながら屋敷内を駆け回った。



何人かすれ違った団員に睨まれたが気にせず捜し回る。



が、結局何を捜していたのか思い出せなかったし見つからなかったと思う。因みに見つけたのは虫だけだった。



 今日は諦めてまた明日、今度は街まで範囲を広げていくかと考えながら自宅へ一度帰ろうと建物の外に向かっていると、何かが派手に割れる音がした。



 そして続いて聞こえてきたのは悲鳴と男の怒鳴り声…ここのところ毎日聞くジュートの怒鳴り声だ。



「ふざけるな!!!!貴様らの失敗がこのギルドの品位を落とすのがわからないのか!!!そんな臆病で能無しな奴はこの団に必要ない!追い出されたくなかったら今すぐ成果を上げてこい!!!!この無能どもがぁぁぁぁぁぁ!!!!」



最近の団長は報酬目当ての高難易度の仕事ばかりを全ての団員に振り、実力に見合わない団員達が失敗すれば貶し、脅す。



因みに高難易度以外の仕事は依頼があっても全て断る様になった。



    団長に追い出される者や自ら出て行く者が多く、賑やかで活気があった団内は少しでも団長の怒りに触れない様に誰もが気配を消して目立たず過ごしている。お陰で俺は隠匿力が上がった気がする。



そんな訳でこの数日とてもこの団の空気は悪い。







まあそんな事は置いておいて。



団長のいつもの喚き声を聞き流し再び家路に着こうとしてぴたりと動きを止めた。



    ちょっと待て、7日程前までここはそんな空気じゃなかった。それは覚えている。団長室もたまに騒がしいくらいで怒鳴り声なんて聞こえていなかった。それなのに今は…



    そこまで考えていると突然、無理やり頭の中をかき混ぜられる様な気持ち悪さと頭が割れる様な痛みが襲ってきた。



「ぅ…」



    咄嗟に近くの壁に手を付き、そこは不自然に四角く壁紙の色が変わっていた。



……ここには確かギルドの証明書があったはず、国から発行されて団長の名前が彫られた金属プレートが…と彫られていたはずのものが取り払われていた。



「そうだ団長だ、団長がいない!」



抜けていた歯車がカチリと嵌った様な目の前がスッキリする感覚、頭の痛みも団長を思い出した途端に綺麗さっぱり無くなった。



そして大事なとこを思い出した



「探さないと、団長は重度の方向音痴だった!」



という事を。



急いで旅荷物を適当に纏めてギルドから飛び出した。



    よく団長がいなくなるので一部団員に支給されていた“団長レーダー(団長の魔力を感知する優れもの)”(団長の事を忘れていたので使用用途が分からなくて放置してあった)を持ち出しギルドの傍でそれを起動する。



表示されたのは2か所。ギルド内に大きな反応と隣国近くの魔の森辺りに弱弱しく点滅する反応の2つだ。



    普段なら躊躇いなく反応の強い方を選ぶが、ギルド内に団長がいる形跡は無かった。隅々まで探したので間違いない。



そして自分は無意識に団長を捜し回っていたのだと思い至った。



 この大きな反応は団長を捜された時のカモフラージュかもしれない。







───実際はたまたま魔術剣がサクヤの魔力を奪っているだけで、たまたまその剣をジュートが団長室に持ち込んでいただけなのだが。



    となれば団長が今いるのは魔の森で間違いない、ただ問題がひとつ。



    魔の森まで人力のみで行くなら不眠不休で馬を取替えながら走って頑張って5日、魔術なら一瞬だけどかなりの魔力が必要。残念ながらそこまで行けるだけの魔力は持ってない。



5日あれば団長は更に動いて迷って更に5日かけて追って…の繰り返しで追いつけない。



    団長捜しは早めの初動が大事だが、既に7日遅れている訳で…つんだ。





「あれ?リートさん?」




頭を抱えて唸っていた俺に声を掛ける少し高めの声、この声は!



    首がもげるくらいの勢いで顔をあげるとそこにいたのは草臥れた格好の少年、入団早々に研修として一人魔物狩りに行かされた期待の新人の1人─エド・ロレンスが研修から丁度戻ってきた所だった。



「君は天の使いだ!助けてくれ!」



「ええ???」



「説明は後でちゃんとするし御礼もするから今すぐ魔の森のこの座標近くに俺を飛ばしてくれ」



「あの、ちょ」



「回復薬が要るなら手持ちのこれ上げるから」



「いや、これ最高級品のやつじゃないですか、そうじゃなくて」



「緊急なんだ!これ以上迷g…逃げられたら追えなくなる、頼む!!」



「わかりました、わかりましたから!僕も一緒で良ければ魔の森に行きましょう」



「!!ありがとう!直ぐ行こう」



    有無を言わせずに少年に縋りつく大人。その絵面が少々…大分アウトだが緊急事態なので、物凄く緊急なので許してくれると思う、きっと。



大事なことなので2回言いましたよ。ええ。










そしてその後…



 エドの転移魔術で指定していた座標からかなり離れたところに到着し、弱々しかった団長の反応が突然レーダーから消えたりその3日後に突然大きな反応が森の外に出現したり…それを追ってまた転移を頼み…やっと見つけた団長はなんか、こう、多少は痩せていたけれど艶々していました。



悪いものを身体から出した後みたいな、魔力も更に巨大になっていた…



 あと何故か大きな鶏?を肩に乗せていた。



…元気に生きていて何よりです(血涙)。

 




    
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