13 / 13
12.なんで日常になってんだ
しおりを挟む
また一週間、二日に一回、桃耶は田宮に求められるままその行為を許してしまっていた。身体を重ねれば重ねるほど、身の内の熱が高まって触覚が鋭敏になっていくようだ。かなり取り返しのつかないことになっていると気づきながら、どんどん抗う気持ちも削がれていくのを止められない。そしてそんな葛藤もつゆ知らず、田宮は呆れたことを言うのだ。
「やべえわ四日でレポート二本やらんと間に合わん、ごめんけど今日と明後日はリスケで頼む」
「バーーカなにがリスケだよ。定期で田宮が盛ってるだけだろ」
「元気ですまん! 無事にレポート終わったら最高の夜をお届けします」
「すげー、キショいうえにだせえ」
人気の無い授業後の教室とはいえ昼下がりの大学構内でする話ではないが、こうもヘラヘラと気が抜ける物言いをされると自分の方がバカバカしいことを考えているような気になってくる。もちろん夏休みを前にして期末レポートに計画的に取り組まなかった田宮の方がバカなのは覆しようがないが。
とにかくこの二ヶ月弱は本当に頻繁に性的な行為に励んでいたのだ。あくまで、田宮に付き合ってやる形で。元気な男子大学生であるため性欲は無限に湧いてくるが、精力は限界があるだろう。働き詰めの身体を休めることができるのだから桃耶にとっては願ったり叶ったりのことだ。
「アホなこと言うよりさっさと図書館行けって。レポートの中身までは面倒見きれんけど俺が見た本なら何冊か教えるから」
「まーじで祀ろかな」
これから四日完徹することになるであろう田宮の背中を見送って、桃耶はひっそりと細く長いため息を吐いた。今から帰って洗浄でもするか、なんて当たり前のように考えてしまっていた自分を張り倒してやりたい。浅ましい期待をしていたことを否定できないのだから救えない。
変な考え事をしないように何かに没頭していたいところだが、田宮みたいにレポートを溜め込んでなどいないし、万が一提出物に不備があったらと考えて向こう一週間はバイトも入れていなかった。一人きりかつ切羽詰まった状況でもないとなるとやはり何にも集中できなくて、結局『変な考え事』をしてしまう。
だいたい何なんだ、ナカだけでイくのはまだむりだからもっとあとにしてとは言ったけれど、言ったからじゃあ続けてもいいなんてことにはならないはずだ。たぶん。あのときの桃耶はいろいろ限界だったから言葉のあやでそんなことを口走ってしまっただけで、ナカイキできるまでヤっていいという意味は一ミリも含んでいないのだ。
……一ミリも含んでいないのに一週間身体を許してしまったんだから桃耶の方も大概アホだ。気持ちいいから抗えなくて、でもそれだけではない気がする。田宮が『ただの友だち』の瞬間には見せないやさしい態度を見せるので絆されてしまったのかもしれない。我ながらチョロすぎるのではないか。洗浄を自分から済ませて待っていようなんて思っていたくらいだから、不本意ながらこの身体はやめてほしくないと訴えているというわけだ。絆されて流されて、桃耶はいったいどこまで許してしまうのだろう。自分の感情すらわからない。……考えない方が楽なのに、どうしてこんなことばかり考えてしまうのか。ぼんやり眺めるだけでさっぱり頭に入ってこなかったスマホの画面を消した。
この日は久しぶりに二日連続でゆっくり寝られる夜だったのに、なぜか桃耶の眠りはいつもより浅かった。
「やべえわ四日でレポート二本やらんと間に合わん、ごめんけど今日と明後日はリスケで頼む」
「バーーカなにがリスケだよ。定期で田宮が盛ってるだけだろ」
「元気ですまん! 無事にレポート終わったら最高の夜をお届けします」
「すげー、キショいうえにだせえ」
人気の無い授業後の教室とはいえ昼下がりの大学構内でする話ではないが、こうもヘラヘラと気が抜ける物言いをされると自分の方がバカバカしいことを考えているような気になってくる。もちろん夏休みを前にして期末レポートに計画的に取り組まなかった田宮の方がバカなのは覆しようがないが。
とにかくこの二ヶ月弱は本当に頻繁に性的な行為に励んでいたのだ。あくまで、田宮に付き合ってやる形で。元気な男子大学生であるため性欲は無限に湧いてくるが、精力は限界があるだろう。働き詰めの身体を休めることができるのだから桃耶にとっては願ったり叶ったりのことだ。
「アホなこと言うよりさっさと図書館行けって。レポートの中身までは面倒見きれんけど俺が見た本なら何冊か教えるから」
「まーじで祀ろかな」
これから四日完徹することになるであろう田宮の背中を見送って、桃耶はひっそりと細く長いため息を吐いた。今から帰って洗浄でもするか、なんて当たり前のように考えてしまっていた自分を張り倒してやりたい。浅ましい期待をしていたことを否定できないのだから救えない。
変な考え事をしないように何かに没頭していたいところだが、田宮みたいにレポートを溜め込んでなどいないし、万が一提出物に不備があったらと考えて向こう一週間はバイトも入れていなかった。一人きりかつ切羽詰まった状況でもないとなるとやはり何にも集中できなくて、結局『変な考え事』をしてしまう。
だいたい何なんだ、ナカだけでイくのはまだむりだからもっとあとにしてとは言ったけれど、言ったからじゃあ続けてもいいなんてことにはならないはずだ。たぶん。あのときの桃耶はいろいろ限界だったから言葉のあやでそんなことを口走ってしまっただけで、ナカイキできるまでヤっていいという意味は一ミリも含んでいないのだ。
……一ミリも含んでいないのに一週間身体を許してしまったんだから桃耶の方も大概アホだ。気持ちいいから抗えなくて、でもそれだけではない気がする。田宮が『ただの友だち』の瞬間には見せないやさしい態度を見せるので絆されてしまったのかもしれない。我ながらチョロすぎるのではないか。洗浄を自分から済ませて待っていようなんて思っていたくらいだから、不本意ながらこの身体はやめてほしくないと訴えているというわけだ。絆されて流されて、桃耶はいったいどこまで許してしまうのだろう。自分の感情すらわからない。……考えない方が楽なのに、どうしてこんなことばかり考えてしまうのか。ぼんやり眺めるだけでさっぱり頭に入ってこなかったスマホの画面を消した。
この日は久しぶりに二日連続でゆっくり寝られる夜だったのに、なぜか桃耶の眠りはいつもより浅かった。
2
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる