一生のおねがい!

多賀森

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10.流されて馴らされる

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 服越しのまま、やさしい力で、兆したそれを握りこまれた。親指が膨らみをなぞりあげると、昂りはもう完全に張り詰めてしまった。腰が抜けて、ぱかりと脚を開いてされるがままになってしまう。撫でられるのに合わせて湿気混じりの短い息があがる。これだけの愛撫さえ、一人でするより興奮も快感も幾倍に感じられる。田宮の手にばかり意識が行って、快感を追って、また一昨日のあの衝撃を焦がれて、桃耶はきっと今日も田宮を拒めない。
「桃耶、うしろの準備してくれる?」
「……する、っから…………」
「ほんと? ありがと。じゃあ一回イかせてあげる」
「や、いらな、っう! あ……っ」
 桃耶の制止と反対に、呆気なく達してしまう。自分がいったいどれだけ田宮に触れられたがっていたのか、それをありありと眼前に写し出されたようでひどい羞恥に泣きたくなった。それなのにまだ身体は熱を持ったままで、奥まで彼のことを求めているのが自覚できる。田宮は易々と達してしまった桃耶をからかうことはなかったが、桃耶はそういう謎の気遣いをしてくる彼の目からなんだか逃れたくなって、結局バスルームに入った。頭の中が羞恥やら快感やら期待やら困惑やらでぐちゃぐちゃになる。自分は本当はこんなに性欲が強かったんだろうか。何も考えたくなくてぼーっとしているうちに洗浄もいつの間にか終わってしまっていた。ほとんど無意識に行っていたなんて、どんどんセックスに馴らされている自分が少しこわい。

 水音が止んでしばらくしても桃耶が出てこないのが気になったのか、田宮がバスルームのドアをノックして呼びに来た。
「桃耶? 大丈夫?」
「っだ、大丈夫! いま出るから」
 呼びに来たことに驚いて勢いのまま外に出ると、田宮は安心したような顔で薄く笑った。
「よかった。ほら、ベッド行こ」
 そう言って当たり前のように桃耶の手を引く。
 田宮は桃耶といったいどうなりたいんだろう。田宮はセックスのときやけに優しいけれど、好きでもない奴にそんな風にするものなんだろうか。だとしたらとんでもない罪作りな男だ。相手が恋人でもなかったら勘違いさせてしまうに決まっている。……俺には別に関係ないけど!

「えーっと、ほんとに大丈夫? どっか痛い?」
「そ、そんなんじゃない、平気」
 変な思考に気を取られて、ベッドの上で押し倒されていたのにも気づかずにぼんやりしていたようだ。田宮が心配そうな表情を浮かべて桃耶の顔を覗き込んでいる。
「……すぐイったのそんなショックだった?」
「は!?」
「おれは、……桃耶が気持ちよくなってくれるのすげーうれしいから、気にせんでよ」
「え、は? なにそれ」
 どうやら田宮は桃耶のプライドを傷つけてしまったと思ったのか、なんだかよくわからない方向へ慰めの言葉をかけてきた。手コキで即イキさせられるよりもよっぽどプライドを傷つけるようなことをとっくにしているくせに、何を言っているのか。ていうか、その言葉はどういう意味なんだ。
「ね、もう触っていーんだよね?」
 そう言って、いつもよりやや性急に触れてくる。変な慰めの言葉を誤魔化すように、桃耶の脳内を快感で上書きしていく。
「んう、ちょ……っと田宮、」
 火照っていく身体の熱とどんどん霧散していく思考をどうにか最小限に留めたくて声を掛ける。それでも、桃耶は為す術もなく快楽に飲み込まれる。
「桃耶、ナカでイけるようになろっか」
 そんなことしてどうするんだ。そう口にしようとした桃耶の言葉は、悩ましい喘ぎ声にしかならなかった。
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