Believe me

高遠 加奈

文字の大きさ
上 下
6 / 6

好きなんだ

しおりを挟む
「……んっ……痛っ」

「我慢しすぎておかしくなってるのかも」


 歯形に舌を這わせながら、まとわりついていた服を脱がす。自分も必死に奴のシャツのボタンを外した。

  体じゅうを愛撫されながらでちっとも外せないそれを、奴は引きちぎるようにして脱いで全裸になった。ベットに倒され見つめ合いながら、意地の悪い笑みを浮かべた。


「オレ、避妊しないから」


 目を見開いた私の下腹部をくちゅくちゅとほぐしながら、さらに言い募る。


「したらサインさせるから。いつ出来てもいい」

「………ほんき? 」

「本気」


 奴がフェチだと言っていた足をなぞり、ぬかるんだ場所へ舌を這わせた。経験値の差だとか、敏感な場所だからとかだけでない喘ぎが漏れる。


 好きな男に尽くしてもらって感じない女はいないだろう。

  比べられないほどの快感を体が拾ってしまい、乱れてしまう。


「りお、いい? イク? 」


 見つめられて手を伸ばした。手をとりながら、愛おしそうな視線を投げて、追い込んできた。

  涙を流し乱れながら、つないだ手をぎゅっと握る。それだけでイクのがわかったのか、中と外の両方を刺激されて登りつめた。

  びくりと反応して締め付け、痙攣する私をゆるゆると愛でながら、体を並べて顔を見られる。つないでいない手のひらで顔を隠すようにしても、嬉しそうにこちらを見ている。


「あんまり見ないで」

「嬉しくてさ」


 つないだ手にキスされる。


「しばらくしてないだろ」


 いまだに指で隘路を広げながら、そんなことをつぶやく。


「ずっとオレのためにとっておいた? 」

「はじめてじゃないから」

「でもしてなかっただろ? 」

「女は気持ちがなければできないの」

「じゃあオレには気持ちあるよね。すいぶん感じてたろ? 」


 否定できなくて黙り込む。


「いいよ。時間ならあるから。オレの一生かけてでも言わせてみせるから」


 伸び上がった奴が、色気を振りまきながら自分自身を擦り付けてきた。脈打つそれには、やはり膜などない。


「愛してる、りお」

 聞き取れないくらいかすれた声で、信じてとつぶやく。隘路をこじ開けながら、うっとりとする奴に胸が締め付けられ、意識せずに力がはいった場所から繋がった大きな体が揺らぐ。


「りおの体も、オレがいいって」


 小さな胸を愛撫され、さらに締め付けるとキスしながら優しく突いてきた。漏れる嬌声すら惜しいように体を重ねる。そのまま行為に没頭していつ意識を失ったのかわからない。



  明るくなった空をレースのカーテン越しに眺めているが、かなりいい時間だ。

  すでに奴はおらず、空っぽのとなりは寂しい。気を利かせた奴が枕元にスマートフォンやら水、パンやバナナなどを置いていっている。病人の看護みたいだなと思いつつ、たいして違わないと苦笑う。


 まめだなと思いながら、スマートフォンの電源を入れると、SNSに奴の更新があった。お昼のラーメンと♯好きなんだ。

  こちらに移動して引き継ぐことの多さから休日出勤をしているのだろう。涙で画面が曇る。


 自分に自信なんて持てない。

   それはいつしか弱い自分を覆う鎧のように、完璧な仕事を求めた。それにつれ可愛げのなくなる自分自身に呆れながらも、どうにも変えることなどできなくなっていた。

   職場で必要とされるのはどちらかなんてわかってる。仕事を離れると抜け殻のような自分がいた。私生活でキラキラしてる人が羨ましかった。

   仕事もできて私生活でもキラキラしてた奴は、別の世界の住人で交わることなどなく平行線でいるはずだった。それがどこでどう交わったのだろう。


 スマートフォンの画面をなぞる。アイドルの歌う素直になれない女の子と自分も変わらない。♯好きなんだ。

   ごまかしている本心と伝えたい心と。

   写真のフォルダーから一枚選んでSNSにあげる。困ったような実家の愛犬の顔は、あの男に似ている。


 ♯好きなんだ。


 信じてみたい。奴が、好きだと言ってくれた自分自身を。自分をもっと好きになりたい。




『オレを信じて』



 その言葉がゆっくりと胸を満たしてゆく

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

恥辱の蕾~年下彼氏と甘い夜~

ぴっぽ
恋愛
年下が好物な主人公の遥は、年下彼氏の良樹とお家デート中。年下だが筋肉質な体格の良樹に甘えたい欲望が遥にはあった。けれども、上目遣いでそんなオネダリされたら…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界

レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。 毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、 お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。 そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。 お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。 でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。 でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。

【完結】【R18百合】会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 レズビアンの月岡美波が起きると、会社の後輩女子の桜庭ハルナと共にベッドで寝ていた。 一体何があったのか? 桜庭ハルナはどういうつもりなのか? 月岡美波はどんな選択をするのか? おすすめシチュエーション ・後輩に振り回される先輩 ・先輩が大好きな後輩 続きは「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」にて掲載しています。 だいぶ毛色が変わるのでシーズン2として別作品で登録することにしました。 読んでやってくれると幸いです。 「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/615873195 ※タイトル画像はAI生成です

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

処理中です...