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リサーチは任せてください
しおりを挟むざわざわした部屋でも尾上さんの声は響く。
「渡辺さ、高遠裕也って知ってる」
彼は会議資料を片手に、アタシを見下ろしていた。
自分から聞きにいかなくても済んだことを内心喜びながら、顔には出さないように引き締める。
「少しなら」
「経歴とか顔写真とかチェックは入れてるんだけど、ドラマの録画持ってない」
多少リサーチが甘かったらしく、高遠さんのことを詳しく知らないらしい。
「持ってますよ。彼、舞台俳優だから舞台を観に行ったらどうですか」
言ってからシマッタと思ったものの、言葉は返らない。
「知ってる。かなりプレミアなんだから、普通に手入らないよ。あんまりそういう事に興味なさそうなのに、意外に知ってるんだ」
高遠さんのことなら、にわかファンだけど、しつこいくらいチェックしている。
「ドラマでの人気が凄いんですから。ツイッターやネットでは話題になってますよ。ほんのちょい役だったのに、人気があるので彼を主人公にした回も作られるみたいですよ」
「へぇ…知らなかった。福田部長のイチ推しなわけだ。あそこん家は奥さんと娘二人だからね。詳しい訳だ」
「候補は絞ったんですか」
「まあ予想通り、鷹峰と高遠の一騎打ちだね。だだ高遠くんの資料が少ないので判断材料に欠けただけで、かなり有力だね」
まあ、こっちもあるしねと指で輪を作ってみせる。
知名度のある鷹峰さんは、やっぱり出演料がいいようだ。
「じゃあ悪いけど明日貸して」
「了解です」
そう言って尾上さんは去っていった。
「先輩、いいな~尾上さんと話して」
パソコンの向こうから愛ちゃんが膨れっ面を覗かせる。
「なんで仕事だよ」
「仲良さそうに見えましたよ」
「尾上さんは人当たりがいいからね。誰にでも懐くよ」
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