天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ

文字の大きさ
上 下
44 / 50

進言

しおりを挟む
「アレンシカちゃん、新しいクラスはどう?」

ある日、いつものように邸宅に帰るとソファに鎮座している人が二人。
最近ではめっきりお馴染みになった光景だ。

「こんにちはユース様。フィラル様。」

「おかえり、アレンシカ。」

「もう!お姉ちゃんで呼んでねっていつも言ってるのに!」

そうして、来訪している二人を無視して自分の部屋に戻る訳にもいかないので、荷物を端に寄せて目の前の席に着いた。

「それで、アレンシカちゃん。どう?学校は。」

ここ最近はいつも聞かれるお決まりの言葉。

「……いつも通り、変わらず、勉学に励んでおります。」

「もう!そうじゃないでしょ?」

フィラルはにまにまとこちらを伺う目で楽しそうに笑っている。

「もっちろん、ウィンノルとのこと!同じクラスになったんだからもうすっかりラブラブくらいにはなったんじゃないの?」

「……まだ2ヶ月ですよ。先日も言いましたがそうすぐに変わることはないと思いますが……。」

そしてほぼいつもと変わらない返答に二人してため息をついた。

「何してるのアレンシカちゃん、あの子は思春期拗らせてるだけなの。せっかく同じクラスにしたんだからもっと積極的にアピールしなくちゃ。」

「ですが……。」

「ウィンノルは恥ずかしがり屋で捻くれてるだけなんだ。すこしアレンシカが勇気を出せば、あいつもすぐ君になびくはずだ。」

「ユースのようにねー。」

またいちゃいちゃとしだした二人に尻込みしつつ、アレンシカはそれでもきちんと今日こそは言わないとと思い続ける。

「……よろしいですかユース様。」

「どうした?そんな暗い顔をして。」

「……ウィンノル様は僕を嫌っています。もう何年も事務事項ですらまともに話ができた試しがありません。健全な婚約関係の継続はもはや不可能と思うのですが。」

「またまたぁ、大丈夫だよ。」

王家側からの婚約破棄を促す言葉を口にしてもさり気なく却下された。

「……ユース様。本当に僕ではウィンノル殿下との婚姻を続けられる自信がありません。いつまで経ってもお望みの通りに殿下のお心を溶かすことも出来もせず、お二人のように仲睦まじい関係になれないのです。もちろん、政略ということも理解していますから『白い結婚』でも構わないということは承知しています。……ですが、ウィンノル殿下があそこまで頑なだということは、僕のことをとても嫌いで、政略ですらこの婚姻が嫌ということだと思うのです。」

「そうか。」

「現在リリーベル家の子は僕一人です。公爵という爵位を賜ってはいるものの現在の力はとても弱いはずです。かろうじて公爵でいられているのも、父が王宮で働いているからという理由よりも、かつての王の従兄弟君がかつてのリリーベル公爵と婚姻し臣籍降下なされた名残りのほうが強いでしょう。大切な王族の方がいらしてくださったのですから、そんな家が廃れていくのは見るに耐えないという温情もあるのかもしれません。しかし現在のリリーベル家では到底お力になれるとは僕は思えません。」

「……で?」

「お言葉ですが、ユース殿下。他にも公爵家の素晴らしいご息女ご子息がいらっしゃいますし、侯爵まで広げればさらに選択肢は多いでしょう。爵位にこだわらずとも男爵家や伯爵家にもウィンノル殿下を支えられる素晴らしい才覚を持った方が多くいらっしゃいます。……リリーベルの大して才のない子よりも、よりふさわしい方を再度お選びになったほうがよろしいかと。」


「選び直す時間などないだろう。」

「何故です?」

「一年後、ちょうど君たちが卒業してすぐにフィラルと結婚をするからだ。」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

眺めるほうが好きなんだ

チョコキラー
BL
何事も見るからこそおもしろい。がモットーの主人公は、常におもしろいことの傍観者でありたいと願う。でも、彼からは周りを虜にする謎の色気がムンムンです!w 顔はクマがあり、前髪が長くて顔は見えにくいが、中々美形…! そんな彼は王道をみて楽しむ側だったのに、気づけば自分が中心に!? てな感じの巻き込まれくんでーす♪

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

処理中です...