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「あ、二人ともおまたせ。」
「アレン様こんにちは!」
「こんにちはーアレンシカ様。」
寮の門の前で大きな荷物を持った二人に挨拶する。
「寒いのに待たせちゃってごめんね。」
「ちゃーんと暖かい格好してますー。大丈夫ですー。」
「僕も、寒いのには慣れてますので。」
「じゃ行こうか。」
近くに停めてあった馬車に乗り込んで、学園寮を後にした。
今日からエイリークとプリムはリリーベル邸に滞在することになっている。
「ひいっ……公爵家のかたが乗る馬車に……乗ってる……!」
「エイリーク君震えすぎです?」
「だ、だって、平民が、公爵家の…公爵家の馬車に!」
「もっとゆるっとしましょーゆるっとー。」
「なんでアンタは平気なの⁉家格的には下なのに!貴族だから?貴族だから?!」
「二人とも、僕達は友達なんだから、いつもみたいにリラックスしてほしいんだけど……。」
「あばばばばば…。」
「いっつもクールなエイリーク君が変になってますー。」
「い、言わないで……。」
「家に行く前に、ちょっと街の方に寄って必要なものとか買おうと思う。夜になったら閉まる店も多いから。」
「はーい。」
今日は新年の前日。フィルニース国では前夜祭と呼ばれる。街も人も新しい年に向けてどんちゃん騒ぎだ。新年は雪が多く降り客足が遠のくことも相まって10日ほど休む店も多い。
プリムが楽しみにしている屋台は夜になってから開かれるが、それまでの普通の買い物は昼からした方が良い。
「ま、窓開けてほしい……ひぃっ。」
「寒いから駄目でーす。」
「あ、もう着いたよ。」
馬車の中で話している間に街に着いた。降りた瞬間エイリークは激しく深呼吸している。
「外の空気……落ち着く……。」
「ずっと変でしたエイリーク君。」
「とりあえず、お茶屋と文具屋とには絶対に行くんだけど、何か必要なものとかある?」
「お菓子!」
「アンタはそればっか!」
いろんな話をしながら街を歩いて、まずはお茶屋を目指すことにした。
街は前夜祭と新年の準備で賑やかで人通りも激しく買い物客がで行き交いが多く、新年のワクワクする空気が街全体に流れている中で友達とただ歩くだけでも楽しい。
「なーんかあっちいっぱい人いますねー。」
「本当だ。」
「何かあるのかな?」
夜に向けて建てられている屋台を見ながら歩いていると向こうの広場の方が騒がしく一際人が多く集まっていることに気づいた。何かあるのかと思って三人とも近づいてみる。
人並みを上手く避けながらその中心を見てみると背の高い二人組がいるようだ。その二人をよく見てみると。
「ユース様、フィラル様!」
「こんにちはアレンちゃん。」
「あっ、アレンシカじゃないか。お前も買い物か?」
第一王子のユースとその婚約者のフィラルが立っていた。王子と学園でも格好良くて人気だった婚約者が街に現れたのなら、これだけの人だかりも納得だ。
王族なので護衛により人々が近づけることはないが、群衆はひと目王族を見ようと周りにたくさんの人がいる。まさかここにいるなんて誰も思わなかった。
いつもと違いラフな格好の二人は人々に手を振りながら適当にあしらっていたが、アレンシカを見つけて近寄って来た。
「どうしてこちらに?まだ留学期間のはずでは……。」
「新年はこっちにいようと思ってな。ちょうど婚姻の準備もあることだし。新年の行事もあるから。」
「そうだったのですか……、知っていればご挨拶に伺ったのですが……。」
「いいのいいの。急に決めたからね。それで、そちらが?」
「僕の友達のエイリークとプリムです。二人とも、こちらはユース第一王子殿下と婚約者のフィラル・レヴィリア様だよ。」
「えっ……第一王子殿下……ですか。」
「ふーん……あの人のお兄様ですか……。」
ジロリと音が聞こえるような視線でユースを見た二人。その視線はあまり褒められたものではない視線であることは真正面にいるユースとフィラルには分かったが真横にいたアレンシカには気づかない。
ユースはその視線に苦笑いしつつも何でもないように振る舞った。
「こんにちは二人とも。二人の話はよく聞いている。」
「……え?」
「まあ、こっちにも知り合いがいるんでな。……あいつどこだ?」
「まーた遅れてるの?」
キョロキョロとフィラルが人混みの隙間を覗くように何かを探す。すぐその中に何かを見つけたようで手を振ってこちらに促した。
「ちょっと二人とも、足速いっすよ。こっちは荷物持ってるのに……。」
「ルジェ⁉」
「あー!ルジェ君!」
「来た来た、遅いよ荷物もち。」
人混みから現れたのは大きな荷物をいくつも抱えて歩きにくそうにしているルジェだった。
あと一つ箱が増えたらルジェの視界を塞いでしまうだろう荷物を持って足取りはしっかりしつつも少しダルそうにフィラル達に近寄った。
「この大きな荷物達が見えないんですか?少しはこっちを気遣ってほしいんですけど。」
「どうしてルジェが一緒に……?」
「ああ、ハルク家とレヴィリア家は遠縁の親戚なんだよ。俺の曾祖母とルジェの曾祖母が姉妹でね。」
「まあ、その縁でこいつは前から俺とも顔なじみでな。昔なじみって奴か。」
「あ……、だから……。」
だからウィンノルと対峙した時、「向こうは手を出せない」なんて言ったのだ。いくら学園が身分不問でも男爵家の子息が王子に対峙するなど相当なことでもない限り出来ない。第一王子の婚約者の親戚で昔なじみだからこそ出来たのだ。
「いやー、アレンシカ様には言う機会なくて申し訳ないです。」
「家格では頼りないかもしれないけど、困ったことあったらコイツ使っちゃってね。もちろんルジェが頼りなかったら俺でもいいし。レヴィリア侯爵家だって力になるから。」
「あ、ありがとうございます……。」
「それに俺はアレンちゃんのお義姉ちゃんになるんだからね。」
パチッとウインクをしたフィラルに対してアレンシカは今度は返事が出来ずに俯く。
ウィンノルと結婚出来ない未来がある上、嫌われている自分では素直に返事が出来なかった。
「アレンシカ、大丈夫だ。あいつも捻くれているだけなんだ。」
「……いえ、僕の力不足が原因なので。」
「違う、あいつは王家の……いや、アレンシカのせいじゃない。それだけは信じてくれ。」
「……。」
「アレンシカ、良ければ新年こっち遊びに来てくれ。少しは捻くれも治るかもしれん。」
「……父上と相談してみます。」
「……そうか。その方がいいな。フィラル、行こう。」
「アレンちゃん、またね。……いくぞールジェ。」
「あーはいはい。」
ユースとフィラルはそのまま歩いて行ってしまう。その二人に釣られて人並みも移動している。
「あの中入って行くとまた荷物落ちるんだけどな……。」
たくさんの荷物を持ったルジェはあえて少し人並みが離れてから着いて行くようだ。
「アンタの親玉は第一王子殿下だったって訳ね……。」
「エイリーク君。」
プリムにこつんと肘で突かれた。でもそのプリムもじっと見定めるような目でルジェを見ている。
ルジェはちらっと横目でアレンシカを見たがアレンシカはユース達の方を見たまま少しぼんやりとしていたようだ。
「……アレンシカ様。」
「えっ、あっ、うん。」
ぼんやりしていたアレンシカはルジェの呼びかけに意識が引き寄せられた。
「俺も行くんでまた休み開けに。まあでも何かあったらいつでも声かけてくださいね。では。」
「あ、ありがとう……。また……。」
ユース達とはもう大分離れてしまったというのに少しも焦る様子もないルジェは大きな荷物を抱えて悠長に歩いて行った。
「アレン様こんにちは!」
「こんにちはーアレンシカ様。」
寮の門の前で大きな荷物を持った二人に挨拶する。
「寒いのに待たせちゃってごめんね。」
「ちゃーんと暖かい格好してますー。大丈夫ですー。」
「僕も、寒いのには慣れてますので。」
「じゃ行こうか。」
近くに停めてあった馬車に乗り込んで、学園寮を後にした。
今日からエイリークとプリムはリリーベル邸に滞在することになっている。
「ひいっ……公爵家のかたが乗る馬車に……乗ってる……!」
「エイリーク君震えすぎです?」
「だ、だって、平民が、公爵家の…公爵家の馬車に!」
「もっとゆるっとしましょーゆるっとー。」
「なんでアンタは平気なの⁉家格的には下なのに!貴族だから?貴族だから?!」
「二人とも、僕達は友達なんだから、いつもみたいにリラックスしてほしいんだけど……。」
「あばばばばば…。」
「いっつもクールなエイリーク君が変になってますー。」
「い、言わないで……。」
「家に行く前に、ちょっと街の方に寄って必要なものとか買おうと思う。夜になったら閉まる店も多いから。」
「はーい。」
今日は新年の前日。フィルニース国では前夜祭と呼ばれる。街も人も新しい年に向けてどんちゃん騒ぎだ。新年は雪が多く降り客足が遠のくことも相まって10日ほど休む店も多い。
プリムが楽しみにしている屋台は夜になってから開かれるが、それまでの普通の買い物は昼からした方が良い。
「ま、窓開けてほしい……ひぃっ。」
「寒いから駄目でーす。」
「あ、もう着いたよ。」
馬車の中で話している間に街に着いた。降りた瞬間エイリークは激しく深呼吸している。
「外の空気……落ち着く……。」
「ずっと変でしたエイリーク君。」
「とりあえず、お茶屋と文具屋とには絶対に行くんだけど、何か必要なものとかある?」
「お菓子!」
「アンタはそればっか!」
いろんな話をしながら街を歩いて、まずはお茶屋を目指すことにした。
街は前夜祭と新年の準備で賑やかで人通りも激しく買い物客がで行き交いが多く、新年のワクワクする空気が街全体に流れている中で友達とただ歩くだけでも楽しい。
「なーんかあっちいっぱい人いますねー。」
「本当だ。」
「何かあるのかな?」
夜に向けて建てられている屋台を見ながら歩いていると向こうの広場の方が騒がしく一際人が多く集まっていることに気づいた。何かあるのかと思って三人とも近づいてみる。
人並みを上手く避けながらその中心を見てみると背の高い二人組がいるようだ。その二人をよく見てみると。
「ユース様、フィラル様!」
「こんにちはアレンちゃん。」
「あっ、アレンシカじゃないか。お前も買い物か?」
第一王子のユースとその婚約者のフィラルが立っていた。王子と学園でも格好良くて人気だった婚約者が街に現れたのなら、これだけの人だかりも納得だ。
王族なので護衛により人々が近づけることはないが、群衆はひと目王族を見ようと周りにたくさんの人がいる。まさかここにいるなんて誰も思わなかった。
いつもと違いラフな格好の二人は人々に手を振りながら適当にあしらっていたが、アレンシカを見つけて近寄って来た。
「どうしてこちらに?まだ留学期間のはずでは……。」
「新年はこっちにいようと思ってな。ちょうど婚姻の準備もあることだし。新年の行事もあるから。」
「そうだったのですか……、知っていればご挨拶に伺ったのですが……。」
「いいのいいの。急に決めたからね。それで、そちらが?」
「僕の友達のエイリークとプリムです。二人とも、こちらはユース第一王子殿下と婚約者のフィラル・レヴィリア様だよ。」
「えっ……第一王子殿下……ですか。」
「ふーん……あの人のお兄様ですか……。」
ジロリと音が聞こえるような視線でユースを見た二人。その視線はあまり褒められたものではない視線であることは真正面にいるユースとフィラルには分かったが真横にいたアレンシカには気づかない。
ユースはその視線に苦笑いしつつも何でもないように振る舞った。
「こんにちは二人とも。二人の話はよく聞いている。」
「……え?」
「まあ、こっちにも知り合いがいるんでな。……あいつどこだ?」
「まーた遅れてるの?」
キョロキョロとフィラルが人混みの隙間を覗くように何かを探す。すぐその中に何かを見つけたようで手を振ってこちらに促した。
「ちょっと二人とも、足速いっすよ。こっちは荷物持ってるのに……。」
「ルジェ⁉」
「あー!ルジェ君!」
「来た来た、遅いよ荷物もち。」
人混みから現れたのは大きな荷物をいくつも抱えて歩きにくそうにしているルジェだった。
あと一つ箱が増えたらルジェの視界を塞いでしまうだろう荷物を持って足取りはしっかりしつつも少しダルそうにフィラル達に近寄った。
「この大きな荷物達が見えないんですか?少しはこっちを気遣ってほしいんですけど。」
「どうしてルジェが一緒に……?」
「ああ、ハルク家とレヴィリア家は遠縁の親戚なんだよ。俺の曾祖母とルジェの曾祖母が姉妹でね。」
「まあ、その縁でこいつは前から俺とも顔なじみでな。昔なじみって奴か。」
「あ……、だから……。」
だからウィンノルと対峙した時、「向こうは手を出せない」なんて言ったのだ。いくら学園が身分不問でも男爵家の子息が王子に対峙するなど相当なことでもない限り出来ない。第一王子の婚約者の親戚で昔なじみだからこそ出来たのだ。
「いやー、アレンシカ様には言う機会なくて申し訳ないです。」
「家格では頼りないかもしれないけど、困ったことあったらコイツ使っちゃってね。もちろんルジェが頼りなかったら俺でもいいし。レヴィリア侯爵家だって力になるから。」
「あ、ありがとうございます……。」
「それに俺はアレンちゃんのお義姉ちゃんになるんだからね。」
パチッとウインクをしたフィラルに対してアレンシカは今度は返事が出来ずに俯く。
ウィンノルと結婚出来ない未来がある上、嫌われている自分では素直に返事が出来なかった。
「アレンシカ、大丈夫だ。あいつも捻くれているだけなんだ。」
「……いえ、僕の力不足が原因なので。」
「違う、あいつは王家の……いや、アレンシカのせいじゃない。それだけは信じてくれ。」
「……。」
「アレンシカ、良ければ新年こっち遊びに来てくれ。少しは捻くれも治るかもしれん。」
「……父上と相談してみます。」
「……そうか。その方がいいな。フィラル、行こう。」
「アレンちゃん、またね。……いくぞールジェ。」
「あーはいはい。」
ユースとフィラルはそのまま歩いて行ってしまう。その二人に釣られて人並みも移動している。
「あの中入って行くとまた荷物落ちるんだけどな……。」
たくさんの荷物を持ったルジェはあえて少し人並みが離れてから着いて行くようだ。
「アンタの親玉は第一王子殿下だったって訳ね……。」
「エイリーク君。」
プリムにこつんと肘で突かれた。でもそのプリムもじっと見定めるような目でルジェを見ている。
ルジェはちらっと横目でアレンシカを見たがアレンシカはユース達の方を見たまま少しぼんやりとしていたようだ。
「……アレンシカ様。」
「えっ、あっ、うん。」
ぼんやりしていたアレンシカはルジェの呼びかけに意識が引き寄せられた。
「俺も行くんでまた休み開けに。まあでも何かあったらいつでも声かけてくださいね。では。」
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