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テスト
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今日は快晴。風も心地よくて良い天気。
だけどもそんな天気とは反対に、 始業時間もまだだというのにいつもは賑やかな校舎の外には誰もいない。
今日はテスト当日だからだ。
フィルニースは王立なだけあり、全国の庶民の模範になるべき貴族の子達が集まる場所だ。さらには優秀な庶民も来る。
当然勉強には皆並々ならぬ本気を感じる。
アレンシカは今日は離れて座っているエイリークをチラリと見た。
普段の天真爛漫で明るい笑顔はなく、真剣な表情でテスト前の最後の勉強をしていた。
『アレンシカ様。』
『どうしたの、エイリ。』
『テストは、テストの時だけはライバルなんですね。』
教室に入る前、エイリークはアレンシカにそう言った。
その時の表情が心にずっと残っている。
いつもの明るいエイリークでもなく、かといって今の真剣なエイリークとも違う、とても真面目な表情だった。
エイリークはアレンシカの方を見て笑った。
それに安心するような嬉しいような気持ちが湧き上がって来て、アレンシカはエイリークに微笑み返すと、気持ちを引き締め直して教科書に視線を落とした。
教師が入ってきて一層周りの空気が変わる。
今からは全員ライバルだった。それはもちろん、大切な友人であってもだ。
目の前にはテスト用紙が配られた。
「それではテスト、始め。」
「ひやー、やーっと終わったんですねアレン様。」
テストが終わり人が賑やかさが戻ってきた後エイリークがやってきた。
アレンシカの横の席に座ると机にベターッと突っ伏す。
「もう疲れました……。ここってこんなに勉強大変なんですね。」
「お疲れ様エイリ。」
「これがあと何回あるんだろう…。」
あまりの疲れた様子に少し心配になり思わず丸い頭を撫でようと手をかざすと反対側がぬっと陰った。
「ふいー。疲れました。あー疲れました。」
そう言ってプリムは他に席が空いているというのにアレンシカの真横にしゃがんだ。
ちょうどエイリークからは手が届かない見えづらい位置だ。
「……キミ、なんでここに来たの。」
「このクラスの人ですから私。どこにいてもいいんです。」
エイリークの返事にはツンとしつつもけして動こうとはしない。しかし何かを訴えるようなキラキラした目でアレンシカを見上げていた。
「ジャマ。今はジャマ。すごくジャマ。」
「いやーでーす。ここにいますもーん。」
そう言って机の上に置きっぱなしだったアレンシカの手を自分の頭にぽすっと置いた。
「おっ……まえ!!!」
「ふっへっへー。」
エイリークが立ち上がってプリムを引き離そうとするがそれよりも先に首根っこを掴まれた。
「はーい。お前いい加減にしときな。」
「ルジェ、お疲れ様。」
「お疲れ様ですアレンシカ様。お前はこっちなー。」
「やーでーす!何で私がのっぽっぽに捕まるんですか!あっち捕まえてください。」
「いやお前確信犯だろーよ……。」
プリムはルジェに首根っこを掴まれながらバタバタともがく。
「俺たちこれから自己採点するからさ。お前も来な。どうせあんまり出来てなさそうだし。」
「やーですー。」
「もう決定されましたー。」
「やーでーす!やーでーす!」
ジタバタもがくプリムをものともせずに首根っこを掴んだまま連れて行く。
廊下で待っていたルジェの友人たちと合流すると談笑しながらそのまま行ってしまった。
プリムはチラチラとこちらを名残り惜しそうに見ているが。
ポカンとしたままその様子を見ているだけだったが、アレンシカはハッと先に気がついた
「エイリ、僕は今日から園芸クラブが再開するんだけど、これからエイリはどうする?」
「あっ……そうでした!悔しい!またアレン様と離れる生活が始まるなんて!」
「ほんの2、3時間なんだけどな……?」
「でも僕一年間は勉強に専念したいんです!我慢します!」
「そっか…?」
「でも今日はついて行っちゃいます。寂しいから。」
「園芸クラブはいつでも誰でも歓迎だよ。」
だけどもそんな天気とは反対に、 始業時間もまだだというのにいつもは賑やかな校舎の外には誰もいない。
今日はテスト当日だからだ。
フィルニースは王立なだけあり、全国の庶民の模範になるべき貴族の子達が集まる場所だ。さらには優秀な庶民も来る。
当然勉強には皆並々ならぬ本気を感じる。
アレンシカは今日は離れて座っているエイリークをチラリと見た。
普段の天真爛漫で明るい笑顔はなく、真剣な表情でテスト前の最後の勉強をしていた。
『アレンシカ様。』
『どうしたの、エイリ。』
『テストは、テストの時だけはライバルなんですね。』
教室に入る前、エイリークはアレンシカにそう言った。
その時の表情が心にずっと残っている。
いつもの明るいエイリークでもなく、かといって今の真剣なエイリークとも違う、とても真面目な表情だった。
エイリークはアレンシカの方を見て笑った。
それに安心するような嬉しいような気持ちが湧き上がって来て、アレンシカはエイリークに微笑み返すと、気持ちを引き締め直して教科書に視線を落とした。
教師が入ってきて一層周りの空気が変わる。
今からは全員ライバルだった。それはもちろん、大切な友人であってもだ。
目の前にはテスト用紙が配られた。
「それではテスト、始め。」
「ひやー、やーっと終わったんですねアレン様。」
テストが終わり人が賑やかさが戻ってきた後エイリークがやってきた。
アレンシカの横の席に座ると机にベターッと突っ伏す。
「もう疲れました……。ここってこんなに勉強大変なんですね。」
「お疲れ様エイリ。」
「これがあと何回あるんだろう…。」
あまりの疲れた様子に少し心配になり思わず丸い頭を撫でようと手をかざすと反対側がぬっと陰った。
「ふいー。疲れました。あー疲れました。」
そう言ってプリムは他に席が空いているというのにアレンシカの真横にしゃがんだ。
ちょうどエイリークからは手が届かない見えづらい位置だ。
「……キミ、なんでここに来たの。」
「このクラスの人ですから私。どこにいてもいいんです。」
エイリークの返事にはツンとしつつもけして動こうとはしない。しかし何かを訴えるようなキラキラした目でアレンシカを見上げていた。
「ジャマ。今はジャマ。すごくジャマ。」
「いやーでーす。ここにいますもーん。」
そう言って机の上に置きっぱなしだったアレンシカの手を自分の頭にぽすっと置いた。
「おっ……まえ!!!」
「ふっへっへー。」
エイリークが立ち上がってプリムを引き離そうとするがそれよりも先に首根っこを掴まれた。
「はーい。お前いい加減にしときな。」
「ルジェ、お疲れ様。」
「お疲れ様ですアレンシカ様。お前はこっちなー。」
「やーでーす!何で私がのっぽっぽに捕まるんですか!あっち捕まえてください。」
「いやお前確信犯だろーよ……。」
プリムはルジェに首根っこを掴まれながらバタバタともがく。
「俺たちこれから自己採点するからさ。お前も来な。どうせあんまり出来てなさそうだし。」
「やーですー。」
「もう決定されましたー。」
「やーでーす!やーでーす!」
ジタバタもがくプリムをものともせずに首根っこを掴んだまま連れて行く。
廊下で待っていたルジェの友人たちと合流すると談笑しながらそのまま行ってしまった。
プリムはチラチラとこちらを名残り惜しそうに見ているが。
ポカンとしたままその様子を見ているだけだったが、アレンシカはハッと先に気がついた
「エイリ、僕は今日から園芸クラブが再開するんだけど、これからエイリはどうする?」
「あっ……そうでした!悔しい!またアレン様と離れる生活が始まるなんて!」
「ほんの2、3時間なんだけどな……?」
「でも僕一年間は勉強に専念したいんです!我慢します!」
「そっか…?」
「でも今日はついて行っちゃいます。寂しいから。」
「園芸クラブはいつでも誰でも歓迎だよ。」
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