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人類戦線編
第六十七話 第四ラウンド
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体が軽い
蒼井はこの注射に疲労回復効果があると言っていたけど、それ以外の要素も有るんじゃあ無いだろうか?
そのくらいには体が自然と動く
硬化をする際の巨人側の抵抗も、気の所為なのかもしれないけど小さい
(これなら……行ける)
手に更に力を込めて、硬化を加速させていく
暫らくすると、最後の肩が硬化した
「よし!」
それを確認して、私はすぐに飛び降りる
少しだけ浮遊感があってから、私は重力に従って落下していった
ギリギリのところで、飛行機が私を拾う
それは本来飛行機が私を拾うところよりも随分と低い場所だった
ガン、と硬い音が鳴る
(……凹んじゃったかな?)
あの勢いで落下したら飛行機にダメージが行くかもしれない
今はそんなことを考えている場合では無いのは事実だけど、それは気にしない理由にはならない
何より、飛行機が壊れていたらここから私と蒼井が帰ることが出来なくなる
その辺りが気になりながらも、飛行機の窓を開けてもらって中に入る
「大丈夫?!ちょっと時間がかかってたみたいだけど!」
「ん!何とかなった!」
入って早々、パイロットの人にそう聞かれる
私はそれに答えてすぐにドアを閉める
「蒼井!開けといてくれてありがと!」
「僕だよ!壁に括り付けられてる須斎さんにそんなこと出来ないでしょ?!それより弘岡さんも早く体を固定して!すぐに動くよ!」
言われた通り、飛行機の壁に付属の紐を使って体を括り付ける
私自身は硬化しておけば体が投げ出されても何の問題も無いけど、硬化した私が飛行機の機械部や運転手さんにぶつかったりしたら大変だ
ましてや、それが蒼井に当たりでもしたら……
それは絶対に避けなくてはならない
私は大急ぎで体を括り付けた後
「出来た!」
と叫んで、すぐに猿轡を噛む
「じゃあ行きますよ!」
飛行機が急旋回し、巨人から離れていった
少し時間が経つと、飛行機は水平移動に入る
「……はい。これでOKです。器具を外しても良いですよ」
許可が出たので自力で固定用の器具を外す
「……蒼井は外せないの?」
蒼井がずっとその場で止まっていたからそう聞くと、頷いた
仕方がないので代わりに私が固定用の器具を取り外す
「……ん。複雑」
私の場合と違って鍵や引っ掛けるツメがたくさんあり、外すのに随分と苦労する
「そりゃあそうでしょ。須斎さんの場合は君とは違って頑丈じゃないんだから、しっかり固定しないと。首が曲がるだけでも致命傷だよ」
「なるほど」
そう言われてからニ、三十秒後にはなんとか器具を外すことが出来た
「美優。ありがとう」
そう言われて頭を撫でられる
その手を払い除けて、運転手に話す
「それで、この飛行機が大きく動くまでに私達がしなくちゃならないことは有る?」
そう言うと、運転手はこう返す
「そうですね……まあ、一応後ろの方を見張っていて下さい。無いとは思いますけど、あの巨人が動く可能性もゼロではありませんから」
「わかった」
そう言って、後ろの方を見続ける
それからは特に大きな出来事は起こらず、普通に港まで帰ることが出来た
――――――――――――――――――――――――
「ちょっと城崎!どこに行くの?!」
須斎との連絡を終えた城崎は僕に目もくれずにどこかに向かって走っていく
「簡単なことだ。例の財閥の実家に向かう」
例の財閥……
「そんなところに行って何するの?!今更向かっても意味ないじゃん!大元はさっき一緒に潰したでしょ?!」
後ろから語気を強めつつそう言う
「……ただ区切りを付けに行くだけだ。お前が来たくないのなら付いてこなくても良い」
そう言いながらも走るスピードを上げていく
僕を振り払おうとしているのかもしれない
そんな城崎を見て、僕は【抜刀】する
加速状態で城崎の前に辿り着いてから【解除】した
「僕をスピード的に振り切るのは無理だと思うよ。だからさ、ちゃんと話して。別に移動しながらでも良いから」
そう言うと、城崎も納得したのか、走りながら答えてくれた
「……区切りを付けに行くのが目的だということは本当だ。だが、その他にも目的はある」
その後に、僕にとっては初耳のことを続ける
「他の目的は、何なの?財閥の持つ物資を奪ったり、財産を回収したりとか?」
「いや、違う。」
城崎は少しだけ走るペースを落とす
「一番の目的はライアンのバックアップ等が無いかどうかを調べることだ」
「バックアップ?」
つまり……どういうことだ?
「ライアンは『ゲーム性』を何よりも重視していた。そして、ゲーム宿敵の定番は一度倒した後に強化して復活することだ」
へぇ~……そいういうことか
「でも、そういうことなら僕が一回倒した後に二人で一緒に倒したから大丈夫なんじゃ無いの?」
「ああ、そう考えることも出来る。だが、お前は別にライアンを殺したのではなく、相手に逃げられただけだろう?そしてその後に俺達がライアンを倒して、あの巨人が暴れた。つまり、あいつはゲームにおける定番である『復活』『強化』『暴走』の内の二つしか行っていないことになる」
……嘘でしょ?
「第四ラウンドがあるってこと?」
「そうだ。あいつはまだ完全な『復活』を行っていない。それをどこかで行う可能性があるから、この近隣で最も可能性の高い財閥本拠地に向かおうということだ」
蒼井はこの注射に疲労回復効果があると言っていたけど、それ以外の要素も有るんじゃあ無いだろうか?
そのくらいには体が自然と動く
硬化をする際の巨人側の抵抗も、気の所為なのかもしれないけど小さい
(これなら……行ける)
手に更に力を込めて、硬化を加速させていく
暫らくすると、最後の肩が硬化した
「よし!」
それを確認して、私はすぐに飛び降りる
少しだけ浮遊感があってから、私は重力に従って落下していった
ギリギリのところで、飛行機が私を拾う
それは本来飛行機が私を拾うところよりも随分と低い場所だった
ガン、と硬い音が鳴る
(……凹んじゃったかな?)
あの勢いで落下したら飛行機にダメージが行くかもしれない
今はそんなことを考えている場合では無いのは事実だけど、それは気にしない理由にはならない
何より、飛行機が壊れていたらここから私と蒼井が帰ることが出来なくなる
その辺りが気になりながらも、飛行機の窓を開けてもらって中に入る
「大丈夫?!ちょっと時間がかかってたみたいだけど!」
「ん!何とかなった!」
入って早々、パイロットの人にそう聞かれる
私はそれに答えてすぐにドアを閉める
「蒼井!開けといてくれてありがと!」
「僕だよ!壁に括り付けられてる須斎さんにそんなこと出来ないでしょ?!それより弘岡さんも早く体を固定して!すぐに動くよ!」
言われた通り、飛行機の壁に付属の紐を使って体を括り付ける
私自身は硬化しておけば体が投げ出されても何の問題も無いけど、硬化した私が飛行機の機械部や運転手さんにぶつかったりしたら大変だ
ましてや、それが蒼井に当たりでもしたら……
それは絶対に避けなくてはならない
私は大急ぎで体を括り付けた後
「出来た!」
と叫んで、すぐに猿轡を噛む
「じゃあ行きますよ!」
飛行機が急旋回し、巨人から離れていった
少し時間が経つと、飛行機は水平移動に入る
「……はい。これでOKです。器具を外しても良いですよ」
許可が出たので自力で固定用の器具を外す
「……蒼井は外せないの?」
蒼井がずっとその場で止まっていたからそう聞くと、頷いた
仕方がないので代わりに私が固定用の器具を取り外す
「……ん。複雑」
私の場合と違って鍵や引っ掛けるツメがたくさんあり、外すのに随分と苦労する
「そりゃあそうでしょ。須斎さんの場合は君とは違って頑丈じゃないんだから、しっかり固定しないと。首が曲がるだけでも致命傷だよ」
「なるほど」
そう言われてからニ、三十秒後にはなんとか器具を外すことが出来た
「美優。ありがとう」
そう言われて頭を撫でられる
その手を払い除けて、運転手に話す
「それで、この飛行機が大きく動くまでに私達がしなくちゃならないことは有る?」
そう言うと、運転手はこう返す
「そうですね……まあ、一応後ろの方を見張っていて下さい。無いとは思いますけど、あの巨人が動く可能性もゼロではありませんから」
「わかった」
そう言って、後ろの方を見続ける
それからは特に大きな出来事は起こらず、普通に港まで帰ることが出来た
――――――――――――――――――――――――
「ちょっと城崎!どこに行くの?!」
須斎との連絡を終えた城崎は僕に目もくれずにどこかに向かって走っていく
「簡単なことだ。例の財閥の実家に向かう」
例の財閥……
「そんなところに行って何するの?!今更向かっても意味ないじゃん!大元はさっき一緒に潰したでしょ?!」
後ろから語気を強めつつそう言う
「……ただ区切りを付けに行くだけだ。お前が来たくないのなら付いてこなくても良い」
そう言いながらも走るスピードを上げていく
僕を振り払おうとしているのかもしれない
そんな城崎を見て、僕は【抜刀】する
加速状態で城崎の前に辿り着いてから【解除】した
「僕をスピード的に振り切るのは無理だと思うよ。だからさ、ちゃんと話して。別に移動しながらでも良いから」
そう言うと、城崎も納得したのか、走りながら答えてくれた
「……区切りを付けに行くのが目的だということは本当だ。だが、その他にも目的はある」
その後に、僕にとっては初耳のことを続ける
「他の目的は、何なの?財閥の持つ物資を奪ったり、財産を回収したりとか?」
「いや、違う。」
城崎は少しだけ走るペースを落とす
「一番の目的はライアンのバックアップ等が無いかどうかを調べることだ」
「バックアップ?」
つまり……どういうことだ?
「ライアンは『ゲーム性』を何よりも重視していた。そして、ゲーム宿敵の定番は一度倒した後に強化して復活することだ」
へぇ~……そいういうことか
「でも、そういうことなら僕が一回倒した後に二人で一緒に倒したから大丈夫なんじゃ無いの?」
「ああ、そう考えることも出来る。だが、お前は別にライアンを殺したのではなく、相手に逃げられただけだろう?そしてその後に俺達がライアンを倒して、あの巨人が暴れた。つまり、あいつはゲームにおける定番である『復活』『強化』『暴走』の内の二つしか行っていないことになる」
……嘘でしょ?
「第四ラウンドがあるってこと?」
「そうだ。あいつはまだ完全な『復活』を行っていない。それをどこかで行う可能性があるから、この近隣で最も可能性の高い財閥本拠地に向かおうということだ」
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