人類戦線

さむほーん

文字の大きさ
上 下
178 / 220
人類戦線編

第三十話 接敵

しおりを挟む
「細かい話をしている時間はありません。構えて下さい」

安全さんにそう伝える

「……何が起こっているのかあんまり分かってないけど、取り敢えずすぐに戦える準備しろ、ってことで良いんだな?」

その言葉に僕ははっきりと頷いた

「そもそも今来ている相手が友好的な人なのか敵対的な人なのかも分からないですからね。一応準備はしておいて下さいって感じです」

その言葉を言ってすぐに僕も戦闘準備を整える

そうして待っていると、遠くの方に人の姿が見えてきた

(この感じだと……少なくとも積極的な敵対関係、って訳では無さそうかな……?)

もし向こうの人が僕たちを攻撃する予定なら一人では来ないはずだ

須斎みたいに姿を隠す装備を持っている可能性も排除できないからまだ何とも言えないんだけど……

「では、安全さんが行ってきてください」

「了解。それと、色々片付いたら僕の正式名称を決めない?そろそろ『安全さん』は嫌なんだけど」

正式名称か……

「まあ、考えておきます」

「その言い方、絶対に何にもしてくれないやつじゃん……」

まあ良いけどさ、と呟きながら安全さんは奥の方へと向かっていった

暫くすると、相手の人を連れて帰ってきた

「こ、こういうのって、連れて帰ってきても、だ、大丈夫なんですか……?」

ブルブルちゃんが不安そうに聞いてくる

「どうなんでしょうね……まあ、少なくともあの人は大丈夫だと思ったんでしょうけど……」

二人でそう話していると、安全さんが手を振ってきた

(ここは僕が一人だけ行った方が良いかな?)

ブルブルちゃんに待っているようにとだけ伝えてから僕は安全さんの所へ向かった

――――――――――――――――――――――――

「あ、来たな~。ほら、あいつがさっき言ってた奴ですよ。ちょっと堅いですけど、話が通じない奴では無いッス」

俺はさっき仲良くなった兄ちゃんに対してそう言った

「お、そうか……あいつか?思ってたよりもヒョロヒョロじゃねぇか。本当に戦闘面での上司なのか?」

兄ちゃんと一緒に居るオッサンがそう言ってくる

「まあ、俺はあいつの戦闘能力がどんなもんか知らないから何とも言えませんけど、多分指揮能力みたいなのが評価されたんじゃないッスかね?」

上司ってのは強ければなれるものでも無いだろう

「お~い、ちょっと急げよ!みんな待ってるんだぞ!」

余りにも歩くのがゆっくりだから俺も痺れを切らしてきた

しばらく時間が経ってから、やっとカタナくんが俺の近くに辿り着いた

「なあ、もうちょっと早く移動できねぇのか?日が暮れちまうと

キン、と鋭い音が聞こえてきた

「……え?」

俺の後ろで、カタナくんの持っている刀ともう一本のナイフがぶつかり合っていた

「……え?何が……」

「安全さん早く地面壊して!脱出するよ!」

カタナくんのその言葉と同時に相手が少し後ろに飛び退く

ここでやっと理解した

(ああ、成程……騙された感じね)

確かに、ここは戦場だ

騙された方が悪いと言えばそうなるのだろう

「クソが!」

俺はその勢いのまま十メートル程離れた場所に居る相手に向かって殴りかかる

(直接当たらなくても、衝撃波さえ飛べば!)

俺の拳は何もない場所に

「はぁ!?」

もう、何がなんだか分からない

「安全さん!今そういうのいいから!とにかく早く地面を壊して脱出を!」

「分かったよ!」

俺は半ばヤケクソ気味に地面を叩き割る

その下には大量の液体が有った

「空洞じゃねえのかよ!」

「水!?マジですか?!」

(けど、俺なら水ん中でも息ができる!)

「カタナくん!捕まってて!」

俺はカタナくんの腕を掴み、水中に引きずり込む

(で行くか)

ここまで脚力を引き上げると後から大変なことになるかもしれないけど、今逃げるためだ

仕方ねぇだろ

俺は相手から隠れるためにドルフィンキックで一旦沈み、それから遠くの別の場所を目指して泳いでいく

(カタナくんの息が続けば良いんだが……)

こいつも恐らく特殊武器使用者だ

ある程度長時間息を止めてはいられるだろうが、身体能力強化者おれの基準で息を止めさせると窒息してしまうかもしれない

(しばらく移動したらすぐに空気を吸わせないとな)

そう思って水中を進む

(顔を出せるような穴が都合よく開いてるわけねぇから、俺が無理矢理開けるしかねぇだろうな)

ゴポ、と言う音がして、カタナくんの口から空気が漏れる

(不味い……このままではこいつが先に力尽きちまう)

もうここで地面に穴を開けるしかねぇな

俺は思いっきり地面を殴った

――――――――――――――――――――――――

水を飲み込んでいるのに呼吸は出来るし、水が目に入っているのに不思議と痛くない

この場所は一体何なんだろう?

(ん?あれは……)

視線の先に何か柱のようなものが有った

いや……これは柱じゃないな

人……なのかな?

(ああ、眠い)

もう少し確かめたいという思いとは裏腹に僕の意識は遠退いていった

――――――――――――――――――――――――

「やはり……異変が起こっていますね」

この様子だと増援を呼ぶ必要が有るかもしれませんね

そう思って基地につなぐと、その先から手が生えてきた

(な?!)

その手が自分の頭に触れて、意識が薄れる

(一体……何が)

私の意識は完全に途絶えた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです

こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。 大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。 生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す! 更新頻度は不定期です。 思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

処理中です...