人類戦線

さむほーん

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人類戦線編

第二十八話 破壊工作

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「これで四個目……疲れますね」

僕は四個目の肉片を焼いてからそう呟いた

「す、すみません……」

「いや、別にあなたが悪いわけじゃあ無いと思いますよ。あなたはただ怪しいものを見つけて報告しているだけですし……」

誰かが悪いとしたら、こんな趣味の悪いものを大量に設置した人だ

ブルブルちゃんじゃあ無い

「ん?ちょっと何か変わったような気が……」

安全さんがそう言った

「マジですか。これ、ちゃんと効果有ったんですね」

壊しても壊しても一向に効果が出てこなかったから正直ちょっとやる気を無くしかけてたんだよね

「いや、変わった気がする程度のものかもしれねぇけど……ちょっと壁にヒビが入ったような気がしたんだよ」

ヒビか

「もしそれが正しいとしたら、この肉片が空間を保ってる、ってことになるんですかね?」

「多分、そうなると思うぜ」

じゃあ残っている肉片を全部順番に壊していけばいずれ僕達もここから出られるのかな?

望みは薄いし、この場所が潰れて下敷きにされる可能性も高いけど……

今の所、脱出手段として思い付くのがそれしか無いんだよな……

「だとしたら、脱出目指して地道に頑張りましょう」

「だ、大丈夫だと思います。何となくですけど……肉片の数が減っている……ような気がします」

そんなことも分かるのか……

第六感みたいな装備なのかな?

でも、なんだかんだブルブルちゃんが居て結構助かってるな

この子が居ないと肉片を一つも見つけられなかった可能性も有るんだし

「やっぱり癖の強い人は有能な人が多いんですかね……?」

「いや、多分『クセが強いけどそれでもギリギリ許されてる』やつは有能な奴が多い、っていうだけだと思うぞ」

ああ、確かにそれはそうかもしれないね

そんな話をしている間にも二つの肉片を見つけて破壊しておく

「これで全部壊せましたかね?」

「どうだろうな?結構な数壊したから多分大丈夫だとは思うが……」

そう言って安心したような顔で安全さんは座り込む

「ああ……確かにそろそろ休憩を交えた方が良いですね」

僕はまだ何かを探しているような雰囲気のブルブルちゃんに向かって言う

「あの!そろそろ一旦休憩したらどうですか?ずっと張り詰めてたら大変ですよ」

「い、いえ。その前にちょっとだけ確認しておきたいことが……」

「何か気になることでも有るんですか?」

もし不安要素が有るのなら今の内に処理しておきたい

「肉片がもう残って無いのかどうかだけ調べてたんですけど……」

あ、そうなんだ

「それで、今のところは結果はどうなの?」

まあ、見つけてたら僕達に伝えてるだろうから何となく答えは分かってるけど

「今のところ、見つかってはいません。もう無かったら良いんですけど……」

「そっか……」

僕としては、むしろまだ残っていた方が助かる

もしもう残っていないのだとしたら肉片が一つも無くてもこの空間は崩れないということになる

つまり、僕たちの行動が無駄だったということになる

勿論、自分の行動が無駄だったことを認めなくてはならない時も有るだろうけどね

やっぱり、そういうのは無いと願いたい

「あ、まだ一つありました!多分これが最後です!」

ブルブルちゃんが指を指した先には普通のコップが有った

「この中に、最後の一つが……」

一応反射を利用して先に確認しておこう

刀身に写ったコップの中身を見る限り、さっきと同じような肉片しか入っていないみたいだ

外装は他の物と少し違うみたいだけど、中身は大して変わらないみたいだ

「じゃあ、これも壊しちゃいますね」

そう言って、コップごとその肉片を斜めに斬る

斬ってから僅か数秒で変化が起こった

「……揺れてます、かね?」

「た、多分そうだと思います……」

地面が揺れ始めた

もちろん、ただの地震だという可能性もゼロじゃあ無いけど

「今の内にあの人を起こしちゃいましょうか」

ブルブルちゃんにそう言ってから、僕は安全さんが寝ている場所まで小走りで向かった

「あの!起きてください!そろそろ脱出しますよ!というか、このままじゃあ危ないですよ!」

というかこの人、もう寝てるのか……

こんなにハイスピードで寝れるのはもはや才能……というか、人間の限界に近い気がする

「……えぇ?ああ、もうそんな感じなの?思ってたよりも随分と早かったね……」

のんびりしながら安全さんが起き上がってきた

「そうですよ。そのままそこで寝ていて降ってくるコンクリートに頭をぶつけても知りませんからね」

「いやいや、そんなことは無いだろ。チームメンバーに死者が出たら面倒だろうから、君は僕のことを助けるだろうね」

否定ができないのが辛いな

「……分かりましたよ」

そう言って僕は安全さんを引っ張る

「ちょ!もうちょっと優しく引っ張っれよ!」

「文句は言わないで下さい」

ひとまず安全と思われる場所に移動させると、僕はそこで手を離した

「あれ?ここからは運んでくれないのかな?」

「はい」

僕はそう言って壁に開いた穴の中に入る

「え?何だ?そっちに行けば良いのか?」

安全さんも着いてきた

(これ、やっぱり僕が連れて行かないとダメなのかな……)

面倒だからブルブルちゃんに押し付けようかな……

そんなことを考えながら、僕は穴の外に出た
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