人類戦線

さむほーん

文字の大きさ
上 下
107 / 220
怪奇編

第十四話 避難

しおりを挟む
「はい!上手く避難できましたね」

ひとまず、避難所に皆を連れてくることができた

見た感じ、欠員は出ていない……と思う

そもそも研究所に誰が居るかなんて把握していないから欠員が出たかどうかなんてわからないんだけどね

あれ……?皆、機嫌悪くない?

まあ、普通に研究生活をしていたら急に襲撃されて、その後避難させられたんだからね

そりゃあ機嫌も悪くなるか

「ま、そんなに気を落とすことは無いですって!帰ってから研究すれば良いじゃないですか!」

それを言うと、さらに機嫌が悪くなったみたいだ

あれ……?何でだろう?

気持ちを落ち着けさせようとしたんだけどな……

近くの人に聞いてみよう……

「あの……僕、何か失礼なことを言いました?」

「……本気で言ってるんですか?」

そうだよね……

特に失礼なことは言ってないよね……

何で皆不機嫌になったんだろう?

まあ、人によってタブーになることとかは全然違うしね

これからは気をつけるとしよう

「ところで、鳥井さんはどういう研究をされているのですか?」

「僕……ですか……」

少し言葉に詰まっているみたいだ

「それは……装備が降ってくる前はんとしまえにやっていたことでしょうか?それとも、今現在やっていることでしょうか?」

「出来れば、今やっていることの方をお願いします」

相手は懐から資料を取り出して、それを使って僕に説明を始める

「私が今やっているのはとあるエネルギー理論について、なんですが……」

あ、もしかして、長くなるのかな?

どうしよっかな……この手の人達がちょっと話したくらいで満足するとは思えないし

でも、自分から聞いておいて話を止めさせるのも印象悪いよな……

何か話を中断できる理由みたいなのが有れば良いんだけど……

ん?あれは……

丁度良い

「あの、あれって、何でしょうか?」

地下鉄の駅を改造して作ったという避難所に置いてある個性的なモニュメントを指差した

「あれは……何なんでしょうか?私にも分かりませんね。多分、何かのイベントの記念に置いたんじゃないでしょうか?」

イベント?

「はぁ……どういうものがあったんでしょうかね?」

まあ、中身はどうでも良い

うまく話を逸らせたから成功だ

「じゃあ、到着しましたし、向こうに入っておいて下さい。僕は研究所の方に戻っておきますね」

――――――――――――――――――――

「あ、上手く誘導できた~?」

「あ、うん。大丈夫だったよ」

今話していることから分かるように、本人の希望によって芳枝ちゃんは避難せずに残ることになった

どうやら、施設に生えている作物を一緒に避難させないとダメらしい

ところで、この場所にはどういう危険が有るんだろうか?

何の危険もない場所から人を退かすことは無いだろうから何か有るんだろうけど……

聞きそびれちゃったな

まあ、どうせ何か危険な調査をしたい、とかなんだろうけど

「あ、これは今日、水やりしなけきゃいけないんだっけ?」

「……神やん。そっちは水耕栽培だよ」

あれ?そうなの?

じゃあ水はやっちゃ駄目なのか

「ところで、ここで栽培しているのは、なんの研究の為なの?」

育てられているのは普通のトマトとカイワレ大根に見える

見てみても、いまいち何を目的としているのかが分からない

「ああ、単なる趣味だよ」

「趣味?」

ってことは、目的は無いのか……

「じゃあ、この変な動きをしている奴も?」

そう言って水耕栽培キットの奥の方にある、高速で揺れている一本の菊らしき植物を指差す

「……え?何これ?知らないんだけど」

「……知らない?」

じゃあ、これって……

「何なの?」

もしかして、城崎が調べたいものはこれなのかな?

でも、この為だけに全員避難させたりなんてするのかな……?

何か他に理由が有りそうなんだけどな……

「ちょっとこれ、持っていって良いかな?ちゃんとした設備で見たいから」

「あ、良いと思うよ」

一応城崎かその使者が来るまで待ったほうが良いかとも思ったけど、先にやっても多分大丈夫だろう

「……何か、僕がやらないといけないことって有る?」

暫く考えた後、芳枝ちゃんは僕にケースの整理を頼まれた

どこに何を置けばいいのかは壁に貼ってあるプリントを見れば良いんだってさ

作業をしながら、僕は城崎の思惑について考える

官邸を占拠してから今までの半年ほど、城崎はあまり強引な手段を取らずに堅実に支持を集めてきた

そんな中、理由も知らせずに避難指示なんて出したら今まで築いてきた信頼や集めてきた支持を一気に失う恐れがあることくらい分かっているはず

危険なら危険でそう伝えれば良いのに、それもしないってことは……

機密……裏で何かやってるのかな?

まあ、僕個人は城崎が裏で何をやっていようとも城崎に着いていくつもりだけど、そうじゃない人も居る

その対策と考えれば……有り……なのか?

う~ん……ちょっと腑に落ちないな……

……今から城崎に聞いても良いかな?

確かに今は色々とやることがあるけど……最優先の避難誘導が終わったから、少しくらい休んでも……良いよね?

電話をかけると、すぐに城崎が出た

「ああ。待っていろ。今そちらに向かっているから……おい!何をした!?」

うわっ!急に叫ばないでよ

「何って?」

「研究所に敵の反応が大量に出ている!どういうことだ?!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子
ファンタジー
公爵家の娘である私は死にました。 何故か休学中で婚約者が浮気をし、「真実の愛」と宣い、浮気相手の男爵令嬢を私が虐めたと馬鹿げた事の言い放ち、学園祭の真っ最中に婚約破棄を発表したそうです。残念ながら私はその時、ちょうど息を引き取ったのですけれど……。その後の展開?さぁ、亡くなった私は知りません。 世間では悲劇の令嬢として死んだ公爵令嬢は「大聖女フラン」として数百年を生きる。 長生きの先輩、ゴールド枢機卿との出会い。 公爵令嬢だった頃の友人との再会。 いつの間にか家族は国を立ち上げ、公爵一家から国王一家へ。 可愛い姪っ子が私の二の舞になった挙句に同じように聖女の道を歩み始めるし、姪っ子は王女なのに聖女でいいの?と思っていたら次々と厄介事が……。 海千山千の枢機卿団に勇者召喚。 第二の人生も波瀾万丈に包まれていた。

偽りの婚約者

 (笑)
ファンタジー
エレナは、貴族社会の中で冷酷な権力者として知られていた。しかし、ある日、彼女のもとに現れたかつての友人アリスとの再会が、彼女の心に変化をもたらす。過去の行いを振り返り、自分が本当に望んでいるものを見つけるために、エレナは新たな道を模索し始める。権力を握ることで孤独になった彼女が、人々との繋がりを取り戻し、未来に向けて歩み出す姿を描いた物語。 --- このあらすじでいかがでしょうか?

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

【完結】俺様フェンリルの飼い主になりました。異世界の命運は私次第!?

酒本 アズサ
ファンタジー
【タイトル変更しました】 社畜として働いてサキは、日課のお百度参りの最中に階段から転落して気がつくと、そこは異世界であった!? もふもふの可愛いちびっこフェンリルを拾ったサキは、謎の獣人達に追われることに。 襲われると思いきや、ちびっこフェンリルに跪く獣人達。 え?もしかしてこの子(ちびっこフェンリル)は偉い子なの!? 「頭が高い。頭を垂れてつくばえ!」 ちびっこフェンリルに獣人、そこにイケメン王子様まで現れてさぁ大変。 サキは異世界で運命を切り開いていけるのか!? 実は「千年生きた魔女〜」の後の世界だったり。 (´・ノω・`)コッソリ

体が鋼に変わる呪いを受け追放された侯爵家五男、呪いを鍛え上げ最硬の肉体で成り上がる ~鋼鉄領主の領地改革~

草乃葉オウル
ファンタジー
侯爵家の五男ラスタ・シルバーナは、生まれながらして体が異常に硬く重くなってしまう『鋼の呪い』を背負っていた。呪いによって重くなる部位は日によって時間によって様々で、酷い時には体の重さで歩行すら困難なほどだった。 しかし、呪いを持つ者に差し伸べられる手は少ない。呪いは前世で大罪を犯した者への罰と信じられており、その存在は差別され人々から忌み嫌われていた。 ラスタもまた呪いを理由に父から嫌われ、幼くして一族が住む城からを追放されてしまう。行き場を失い貧民街に流れ着いたラスタだったが、そこで師と呼べる人物と出会い背負わされた呪いを制御するための修行を開始する。 それから数年後、侯爵であるラスタの父が急逝。シルバーナ家の古いしきたりにより、決闘で後継者を決めることを知ったラスタは、かつて追放された城に乗り込み甘やかされて育った兄弟との決闘に挑む。 その戦いの最中、彼はついに鋼の呪いの完全制御を成し遂げる。硬さも重さも自由自在に変えられる鋼の体は物理攻撃を完全に無効化し、鋼の拳による超重量の一撃は城壁すらも粉々に砕く。 兄弟をぶっ飛ばし領主の座に就いたラスタは、追放されている間に行われた悪政により衰退してしまった領地の立て直しを誓う。 腐敗した貴族を叩き直し、はびこる悪党を裁く。鋼鉄の肉体の前には歪んだ権力も暴力も無力! これは制御不能とされた呪いの力で次々と問題を解決し、豊かな領地と人々から愛される侯爵家を取り戻していく鋼鉄領主の物語! ◆第15回ファンタジー小説大賞にエントリー中! 投票ボタンから応援していただけるとすごく励みになります! ◆感想大歓迎です! 自分ではなかなか気づけないので誤字脱字の指摘なども助かります!

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

処理中です...