人類戦線

さむほーん

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東京事編

閑話 孤児院

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「おい!お前ら!そっちの方に行くな!前に危ないったろ!」

「分かったって!」

「分かってねぇだろ!何回言ってると思ってんだ!」

しばらく怒られて、その後は解放された

「……けん、また怒られてた」

「まあ、いつも通りだろ。あいつ、人の忠告あんまり聞かないから効果ないだろうけど」

四歳にしては妙に二人がそう話している

「いや……でも、ちょっと位庇ってくれても良いんじゃない?放置はひどいじゃん……」

そう返しても、あんまり返事をくれない

やっぱり、ちょっとくらい行動を変えたほうが良いのかな?

「あ、それより、もうそろそろお昼の時間じゃない?」

「ん……ごはん」

隣りにいた子供は部屋の中に向かってとてとて走っていった

城崎は別の方向に向かって歩いていく

「あれ、どこ行くの?」

「俺は今から勉強会だ。あの部屋に行ってくる」

「そっか、いってらっしゃ~い」

城崎は時々別の部屋に連れて行かれる時がある

話を聞くと、【勉強会】というものに参加しているらしい

どういうものかは分からないけど、毎日のように受けているみたいだ

あと、結構重要なことらしい

時々ご飯よりも優先させていることがある

……今度ちょっと見に行ってみようかな

城崎や院長先生に頼めば見せてくれるかもしれない

まあ、面倒くさいからしないけど

だって、わざわざ首突っ込んで僕まで勉強会に参加させられたら大変だもん

そんな時間があれば早くご飯を食べて梁と一緒にポーカーでもやりたい

今のところかなり負け越していて、罰ゲームの行動をする度に院長に怒られる

流石に僕もこれ以上怒られるのは嫌だ

相手の心理を読んで出される手を予測したいんだけど、出来るのかな?

城崎はもしかすると【勉強会】でそれを学んでるのかもしれないけども

……やっぱり、今度から僕も参加してみようかな……

――――――――――――――――――――

「よし、今日の分はこれで終わりだな。」

「うん。それじゃあ俺は昼ご飯を食べてきて良い?」

「ああ、いいぞ」

そう言うと、聖は小走りで食堂に向かっていった

「……それにしても、末恐ろしいな……」

この年齢でここまでやるか……

俺の目の前には、山のように積まれたチップが有った

もちろん、ここで言う『チップ』というのは情報機器の物だ

こいつは、通常精密機器を用いてコントロールし、マイクロメートル単位で集積回路の場所を調整するはずのものを埋め込みやがった

初めて見た時から、十分な才能は有ると思っていたが……ここまでとは流石に想像していなかった

そろそろ次のステップに進めた方が良いかもしれないな

「そうだそうだ。俺もそろそろ飯を食うか」

ガキ用の食堂じゃあ俺の腹を満たすのはちょっとキツい

外に食べに行くとするか

――――――――――――――――――――

あ、城崎がやってきた

城崎、勉強会の影響でご飯が遅くなることが多いけど生活リズムとか乱れて無いのかな?

「ねぇ。城崎も食べ終わったらこっち来てポーカーやろうよ。コツとか知ってるでしょ?」

「ああ、ちょっと待って」

そう言って、城崎はテーブルについた

「ん。ツーペア。僕の勝ち」

「え?あれ?……嘘でしょ?」

これで累計七十八連敗

流石にそろそろ勝たないと

どんどん罰ゲームが重くなっていってる

「よし、終わったぞ。俺も入れろ」

「早!ちゃんと噛んで食べたの?飲み込んで食べると体に悪いってこの前院長が言ってたじゃん」

こいつ、いっつも食事時間が短いんだよな……

別に食べる量が少ないわけでは無いのに……

「じゃあ、城崎。変わって!」

城崎にカードを押し付けて僕は外に向かった

二人がポーカーをやっている間は外でブランコでも漕いでいよう

時間はたっぷりあるから、大技の練習もしようか

そうして暫くブランコを漕いでいると、院長に出会った

「あ?おい!賢!んな危ねえことするんじゃねえ!」

「え?これ、そんなに危ないの?」

もしかすると、最近色々とやりすぎたせいで感覚がおかしくなっているのかもしれない

でも、ブランコで三捻りしながら回転するのは、別にそこまで危ないことじゃあ無い気がするんだけど……

「お前、そんなにちっちぇ頃から動きすぎると、反動で将来出不精になっちまうぞ」

「え?そうなの?」

じゃあちょっと控えよっかな……

「あ、ところで院長は何でここに来てたの?何か用事でもあったの?」

「メシだメシ。ここの食堂じゃあちっと量が足りねえんだよ」

あ、そうなんだ

大人にはちょっと量が少ないのかな?

「そうだ!今度、城崎と梁と一緒に外に遊びに行きたいんだけど、良いかな?」

丁度いいからこの機会に聞いておこう


「あ?う~ん……まあ、構わねぇか」

よっしゃ!

よし、それじゃあ早速城崎達の所に戻って準備をしよう

――――――――――――――――――――

この日のことを僕は未来永劫忘れない

自分の罪くらいは覚えているつもりだ

誰も僕のことを裁かなくても、僕が平穏な人生を送れたとしても

それは忘れちゃあいけないことなんだと思う

それが少しはあいつへの償いになるんじゃないかな?

そうだろ、城崎

これは僕たちだけの秘密だ

僕は地面を見下ろしながらそう思った

その先には、寂れた思い出が横たわっていた
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