人類戦線

さむほーん

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東京事編

第三十二話 帰還

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特に変化は無し……と

「はぁ……やっと緊張が取れそうね」

今までずっと張り詰めていたから気を抜く暇もなかった

見張りとは言え、緊張の糸を解いてはいけないとは思うが

張り込んでから二時間、定時の連絡もしっかり入ってきて、なおかつ官邸に大きな動きが無いから集中や緊張も解けてしまうのも仕方のないことだろう

「それにしても、官邸は普段こういう形で動いていたのか」

時々軍用車両に乗って人が入ってきて、別の車が出て行く

軍用車両なのは今だからだとしても、かなり人の出入りが多いな

まあ、会談を行うことも大臣の重要な仕事の一つだとは思うが……

私としてはもう少し内部で決めることを重視した方が良いと思う

まあ、そのあたりは組織によって違うから外野が、しかも、今後敵対する可能性のある者が言うことでは無いだろう

そうこうしている内に篠原から連絡が来た

まだ定時の連絡には時間が有るはずだが……

「何?帰るだと?」

どういうことだ?

任務を放棄する、ということなのか?

「理由くらいは説明して欲しいものだな……」

まあ、今は敵地に居るから難しいのかもしれないな

まあ、帰るにしろ、帰らないにしろ私がここで待ち続けるということは変わらない

結局、退却するときも見つかったかどうかを知るために相手の動向を見なければいけないしな

――――――――――――――――――――

撤退撤退っと……

さっきから見回りの人たちの行動が変になってる

明確に気付かれた、って言うわけじゃないけど、なんとなくの勘付かれている感じがする

入ってきたときは水道管を使ってきたけど、出ていくときはそれは止めめとこうかな

帰りは排気管ダクトから出ていこう

幸い、監視カメラに見つからない位置のダクトは確認してある

早めにそこに入っちゃおうっと

えっと、周りに人は……今は居ないか

その隙に、僕は予め確認してある出口のダクトに入り込んだ

ここからある程度広くなるまでは匍匐前進だ

匍匐前進中はあんまり【チェック】が出来ないから自力で周りを見ておかないと

ま、ダクトを通ってる人なんてほとんど居ないだろうから、周りに人は居ないだろうけどね

「あー……やだなー……狭いなー」

分かっていたけれど、ここは人がやっと一人通れるくらいの広さだ

こんなところを通ってまで情報を集めたんだ、今後は警戒を解いてくれると助かるんだけど……

「なんか雰囲気的に難しそうなんだよな……」

そもそも、僕のどこが怪しいって言うんだよ

仮に僕が裏切る目的で投降したたんだとしたら元の勢力である時風さんが殺された時点で警戒を解いても良いと思うんだけど……

僕が今この勢力を裏切って一体どんなメリットがあるって言うんだ?

特にメリットは思いつかないぞ。まあ、城崎くんには何可思いつくのかもしれないけど

まあ、メリットは無いけれど、デメリットも少ない

寝床と食事とあとは後ろ盾を無くすことくらいだ

やったね!その時点で野垂れ死に寸前だ!

ほら……メリット無しデメリット大きすぎの行動を僕が取るわけ無いでしょ

それとも、城崎くん……いや、媚を売るために城崎様と呼ばせてもらうか

城崎様は僕のことををどれだけ馬鹿だと思っているんだろうか?

お、そろそろ見えてきたぞ

この先から微かに光が漏れてきている

確認してみよう

これは……もうここが外への出口みたいだな

外に人は居ないみたいだからこのまま外に出ちゃおう

須斎ちゃんへの連絡は外に出てからでいいかな?

よし、周囲に人は居ない

一応警戒しながら外に出よう

「よっ……と。うわっ!結構高いな……」

飛び降りてから気付いたけど、このダクトは結構高いところにあったらしい

確認せずに降りてたからちょっとバランス崩しちゃった

周りに敵が居ないか確認っと……

あ、まずい

足音が近付いてきてる

ヤバイヤバイ隠れるところ無いぞ!

あ、マンホール

丁度いいところにあった

飛び込め!

――――――――――――――――――――

「あれ?なんかさっき人が居たような……」

「気の所為だろ。それより、休憩時間だからとっとと休憩所まで行っちまおうぜ!」

二人の男女が話しながら歩いていた

服装が警察の服に似ているため、警備員だろうか

「おかしいな……確かに人の声がしたと思ったんだが……」

女の方が呟いた

「いや、気の所為だって。誰も居ないし、この先も一本道じゃん」

「まあ、それはそうなんだが……」

そのまま、二人で歩いていく

「それよりもさー、今度メシ行かない?」

「……前、断りましたよね?その後に、今後一切あなたと行くつもりは無いとも、言いましたよね?」

「いやー別にいいじゃんか!気変わりするかもしれないでしょ?」

やかましくしながら二人は歩いていく

二人の去った後、マンホールの蓋を開けて出てくる者が一人

「あっぶな……見つかる寸前だったじゃん……」

とっさに隠れる場所があったから良いものの……

これからはどこかから出ていく時は外に隠れる場所が有るかどうかも確認しないと……

さて、これから何しようか……

さっき隠れてる間に須斎ちゃんへの連絡は終わったし、もうやること無いかな?

じゃあ、もう帰っちゃいますか

「結構いい感じの情報集めたからなー。城崎様もこれで僕への警戒心を少し減らしてくれるといいんだけど」

そう呟きながら、僕は帰路についた
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