人類戦線

さむほーん

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東京事編

第十六話 クーデター

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あーあ

せっかく面白そうなニュースが飛び込んできてそのことについて調べようと思ってたのに

何処かの農業狂いに荒野で遭遇エンカウントしたせいで出来ないじゃんか

「……もういい。帰って」

え?今なんて?

「帰って。聞こえないの?」

「は、はい」

何が起こってるのか理解が出来ない

情緒不安定ってやつなのか?

でも、この状況から離れられるならそれでいい

一人放って置くのも申し訳ないけどそこは自業自得ってことで

(抜刀)

ゆっくりしてたら気が変わりそうだから加速してとっとと逃げておこう

――――――――――――――――――

ふぅ。自室に帰ってきましたよっと

というか、院の方にある僕の部屋、ここ数日帰ってないからとかいう理由で片付けられたりしてないよな……?

大切なものとかも結構置いてあるから捨てられると相当ショックなんだけど……

今度城崎に言って外出許可貰ったら取りに行こっかな

「外出か……」

僕は昔からどっちかと言うと家の中で遊ぶタイプだった

まともに運動すると言えば、体育の授業中くらい

それも、バレない程度にサボっていた

この機会に一度自分から外出してみるのも良いのかもしれない

まあ、孤児院に帰るだけだから外出と呼べるかは微妙だけど

あ、それよりも早くゲーム開けよっと

僕の部屋の方にあるPCに入ってるゲームは今できないけど、スマホゲーができれば十分だ

まあ、このゲームにはフレンドほとんど居ないからソロで狩りに行くくらいしか出来ないけど十分だ

お、あの日の朝に製作依頼してた装備がもう完成してるじゃん

スペックは……う~ん……強いには強いけど、ちょっと期待してたのと違うな……

もう一回溶かして素材に戻したほうがいいかな?

こうやって金が無くなっていくんだけど、今回は別にいいか

あ、もちろん無くなるのはゲーム内通貨の方だから

流石に高校生で時給-300円(学費)の身で大量課金とかは出来ないから

……よし、装備の調整も終わったし、イベント回収しに行くか!

――――――――――――――――――――

クーデター、か……

国会や首相官邸なんてのは国の中枢の中でも一番落とされてはいけないところだ

そんな場所がポッと出の集団に潰されるなんて混乱していたじゃあ済まないぞ

クーデター自体は以前から計画されていたと考えるのが自然だ

しかし、この腑抜けた国の中で誰が?

国……か

そうだな。別にクーデターだからと言って敵は国内だけとは限らない

他国の勢力が入らせていたスパイか何かが本国から指示を受けてクーデターを引き起こした可能性もある

「……情報が足りない」

うちには使える諜報担当が須斎以外居ない

もう少し増やしておかないと情報戦で戦えなくなる

そのためにも早く校内の装備使用者、及びその装備の能力を洗い出さないと

現状では生徒のニ、三割しか把握が終わっていない

とはいえ、求心力を無闇に下げるわけにもいかない

「さて、どうしたものか……」

そんなことを考えていると、ノックが聞こえた

「入って良いぞ」

ドアが開くと、その先には弘岡が居た

何か資料のようなものを持っているようだ

「あの紙渡してきた。それで、これ渡せって言われた」

「分かった。受け取っておこう」

これは……治験前に読んでおくタイプの、契約書、のようなものか

内容は大丈夫だと思うが、一応一日くらいかけて精査しておくか

「他に何かない?」

聞いてくるものの、特には思いつかない

「大丈夫だ。一旦席を外してくれ」

すると、静かにドアを閉めて部屋を出ていった

……盗聴などはされていないか?

一応確認しておこう

俺は今手に持っているスマホからこの部屋の中にある二つ目のスマホに電話をかけた

(……よし、少なくとも盗聴器は使われていない)

そういった調査方法が全く関係ない『装備』で盗聴されている可能性はあるが……

そうなると全くわからないな

装備を感知する方法をどうにかして考えたいが、現状は物理法則に合った装備とそうでないものが混じっているから判別がしにくい

研究所同士で横の繋がりがあれば、長崎の研究所からその方向の伝手を辿れるんだが……

「あまり頼りすぎるのも良くない、か」

恩を残しすぎると後々面倒くさいことになる

……今は他のことをするか

仕事がなくなって暇、というわけでも無い

結論の出ないことを考えるよりは、他の仕事をしたほうが良いだろう

今のうちに人事の振り分けをクラスごとにまとめておこう

――――――――――――――――――――

(これは……想像以上に不味いことになりそうだな……)

まさかクーデター政権がここまで思い切ったことをやるとは……

本来はもう少し細かい情報を集めるべきなんだろうが、これは一旦帰って本部に伝えた方が良いな

幸い、緊急を要する場合は任務を途中で切り上げて戻ってきて良いことになっている

流石にこれ以上中に入っているのは危険だ

今回の調査はここまでにしよう
 
官邸から一人の人間が出ていったことには、誰も気付かなかった
――――――――――――――――――

一人の青年が蜃気楼高校の前を歩いていた

そのポケットで電話が鳴る

「……なぁ。傍受されるのが怖いから今は電話止めろって言ったよな?」

『あ、そう?ごめんごめん』

『それで、成果は?』

「悪くはないと思うぞ。細かいのは帰ってから話す」

そのまま何処か遠くへ歩いていった
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