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第35話 嫌われ者
しおりを挟む「頑張って下さい!ご主人様」
「頑張って下さい!ツバサ様」
「ツバサお兄さん頑張れ~けぷっ」
今日も1人で頑張っている。
中層に行くのは諦めて上層だけのダンジョン探索。
『無難が一番』の僕たちにはそれで充分だな。
それに、雪乃様の祝福、そう考えたらお金を増やすのは怖い。
綺麗で可愛い仲間とのパーティ生活はこれで充分賄える。
それだけで充分だな。
◆◆◆
「気持ち悪い奴らを集めてパーティを組んだ奴がいるだって?」
「はい、凄い事に、ジーク族に耳長族、獣人族の嫌われ者のハイエナ族の女、3人と組んでいます」
「いや、1人ならいざ知らず、3人?なにかの間違いじゃ無いのか?」
他の場所ならあり得るが、ここギルメドはダンジョン都市。
ダンジョンに入る為には神の祝福を受けた存在が居ないと入れない。
すると、そのパーティを率いている人間は祝福持ちとなる。
神の祝福を受けた人間が態々神々が嫌う一族を集めるなんて可笑しい。
1人なら、同情からとか解らなくもないが『全員』ともなると…想像もつかない。
「間違いではありません」
「それで…なにか問題は起きてないのか?」
「今の所は、ですが、かなりの人数の者から嫌われている様です」
あたりまえだ…
ジーク族はエルフや精霊族など自然信仰をする者は勿論の事、神々を信仰する者から嫌われている。
耳長族はエルフに尤も嫌われている一族だ。
そしてハイエナ族は獣人の一族を中心に人族全般に嫌われている。
一人一人なら、嫌っていない存在も居るが、全員揃うとほぼこの街に住んでいる一族全部に嫌われるんじゃないのか?
「だろうな…」
「それでどうしますか?」
「どうするか?」
「はい、この街の統括としてなにかしなくて大丈夫ですか?」
確かに嫌われているが、一応は神々に許しはされた一族だ。
別に罪を犯している訳じゃないから、追い出す事は無い。
「そうだな、何も出来ないな」
「何も出来ない?」
「ああっ別に犯罪者じゃないから追い出したり罰を与える事は無い…だが、人が人を嫌う感情はどうしようも無いから、犯罪みたいな事は別にして彼等を助ける事は出来ない」
「まぁ、そうなりますね」
「まぁな、我々は立場的にどちらにつくという訳にはいかないから、小競り合いで終わっているうちは放置しかない…良いか、君はエルフだから彼らは嫌いだろうが、間違っても迫害とかに加担しないでくれよ」
「私だって統括府の人間です、馬鹿な事はしません」
「それを聞いて安心したぞ、良いか揉め事が起きても一切かかわるなよ…良いな」
「はい」
とは言え…このまま何も起きない…そんな事はないだろうな。
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