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第三章 この世界の不条理

第61話 デモノプリンス誕生

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「理人ゴメンなさい! 今日の順番はキリネに譲るから…キリネと一緒に楽しんでね!」

「あの、サキュバ…どうかしたの? 体調が悪いのかな? 大丈夫!」

「うん、大丈夫だから気にしないで…これでも魔王だから、忙しいのよ…本当に残念だわ…次回はちゃんと参加するから安心してね」

「大丈夫なら良かったです! 無理しないで頑張って下さい!」

「うん、頑張るから」

笑顔の理人に後ろ髪をひかれつつ部屋を後にした。

◆◆◆

【別の男性保護施設】

一応は魔王なので此処をシャルナからキリネが借り受け、側近を待機させていた。

此処に居た男は恐らく人権をはく奪されたのかも知れない。

今回は…急用で此処に来た。

「別に付き添いは要らぬ! 我はサキュバスクィーン、出産などお手のものじゃ」

「ですが、魔王様、確かに魔王様は出産に優れた種族ですが、その子は魔国の運命を背負った子です…是非、傍で様子だけでも見させて下さい」

「魔王様はサキュバスクィーンですが出産の経験はありません!心配でなりませぬ」

「気にする必要は無い、この子の父親は正常な男!我が交わった男のなかで唯一子が欲しいと思った男だ!きっと強い子が産まれるに決まっておる…心配せず別室でどんと構えておれば良い」

我の種族はサキュバス。

相手が正常な男なら、どんな種族の子でも妊娠できる。

これもサキュバスの能力だ。

そして、我はその中でも最高位のサキュバスクィーン。

相手さえ正常なら竜の子すら産んで見せる。

人族との子をもうける等たやすい事だ。

今迄が悪夢過ぎたのだ。

サキュバスクィーンの血を継ぐ子が生殖能力皆無等、信じられぬ。

お腹の中でそれを感じた我は『産むのをやめた』

だが、この子は違う。

今迄の妊娠と違い…今の状態から既に愛おしくて堪らない。

サキュバスクィーンの私が愛おしいと感じるような子。

この子はきっと私の血を継いでいるに違いない。

サキュバスクィーンの私を魅了するような子供。

もしかしたら、今は滅びてしまったサキュバスの同族の男。

インキュバスかも知れない。

私の側近が騒ぐのも解る。

もし、この子が『真面な子なら』ようやく魔国に待望の王子が産まれえるのだから。

そして、それは人族との完全和解への一歩となる。

何しろ『王子の子が人族』なのだから…

◆◆◆

「おぎゃぁぁぁーー!おぎゃぁぁぁーー」

「おお、ついているでは無いか!」

「サキュバ様、とうとう生まれたのですね…うっうっ、男の子です、やりましたね」

「凄い、待望の男の子です…これで世界に救いが…」

「私がしっかりと筆おろしを…」

「まだ、安心するでないわ!正常な男かどうか判断してからの話だ!お前は馬鹿か? 幾らインキュバスでも精通するまで時間は掛かる、それまでは性交禁止だ」

我は鑑定の鏡を持ってこさせ鑑定をさせた。

「これは凄いです、魔王様…種族:ハーフインキュバスキング、個体能力:デモノプリンス…です」

デモノプリンス?

魔王子じゃないか?

ハーフとはいえ、我と同じキング種なだけでなく魔王子。

魔族は長命だから魔王こそ引き継げないが、魔界の王子の誕生だ。

しかも、理人に似ていてなかなかの美形。

「ほう…未熟ながらも生まれてすぐに魅了を使うか…末恐ろしい才能だ」

「まっ魔王様、王子…王子は私に育てさせて下さい!」

「その子を私に下さいませ、さすれば生涯の忠誠を王子と魔王様に誓いますわ」

「いいえ、王子は私の…物ですわ! 魔公爵の私こそが教育係に相応しいわ」

貴族階級のサキュバスが簡単に魅了される。

これが『正常な我が子』の能力。

母として魔王として誇らしく、愛しいが…親子として愛す必要は無い。

何故ならサキュバスやインキュバスは他の物を魅了して勝手に育っていく。

この世界が可笑しくなってからは別だが。

この子はインキュバスだし、もう貴族階級のサキュバスすら魅了している。

同族でこれなら、きっと他の女はもう奴隷も同然な筈だ。

「この子の名前はザインだ! 魔公爵バスタ、お前に王子を任せる!王子へ忠誠の褒美に精通後の筆おろし教育係も任せる…では!」

「有難き幸せですわ…ですが魔王様は何処に行かれるのですか?」

「こほん、理人の所に決まっているでは無いか? 王配の権利を与え…2人目を仕込んでくるわ」

「「「「「魔王様ずるいです(わ)」」」」」

我を妊娠させ王子を産ませたのだ、充分に王配の権利を与えある程度の魔国で通用する地位も与える必要もある。

ザインの誕生は魔国全体での祝い事だ。

また、シャルナと話し合う事が増えたな。









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