俺が死んでから始まる物語

石のやっさん

文字の大きさ
上 下
16 / 21

第16話 救われた? 三人

しおりを挟む


幾ら探してもリヒトは見つかりませんでしたわ。

やはり、セレスを殺してしまったのはショックだったのかも知れませんわ。

あの時から様子は変わってきていました。

クズの様な性格は収まり…私達に対しても尽くすような感じに変わっていきました。

それは、悪い部分を消し去り…綺麗な部分が残った様感じさえしましたわね。

この青い宝石…私の事を考えて一生懸命選んでくれたのですね。

服にしたって良く似合う服を選んでくれたのが良く解りますわ。

『暖かい』

元からリヒトはカッコ良いのですが…

今のリヒトは、それに優しさが加わり、完全に私のドストライクになりましたわ。

だけど…だけどね…カッコつけすぎですわ。

『単独勇者』

なんて…

四人で挑んでも勝てない存在に一人で挑もうというのですか…

それは『死』しかありませんわ。

財産の殆どを私達に置いていく…

もしかして…ううん…今のリヒトなら絶対にそう…

『死にに行く』

そうとしか思えませんわ。

全ての責任を自分の命で償う為にたった一人で死の旅に向かったのですわ。

「行きますわよ、エルザ、リタ」

「何処に行くんだよ…リヒトの居場所は解らないだろう」

「そうよ、何処に向かったかの手がかりすらないんだから」


「だから、教会に行くのですわ…もし解らなくても聖女の私が依頼をすれば探して貰えますわ」

「そうだな」

「うん行こう」

私達は教会に向かいましたわ。

◆◆◆

「よくぞ来られました、聖女クラリス、剣聖エルザ、賢者リタ…貴方達の長い旅は此処で終わりました…今迄ご苦労様でした、たった今よりその任を解きます…これからは自由に生きるのです、街で暮らすも良し、田舎に帰るも良し、自分の夢を追いかけるのも良し…その全てに教会や国が手を貸しましょう」


「あの司教何を言われていますの…可笑しいですわ」

「まるで、旅をしないで良い、そう聞こえるぞ」

「あの…解任、魔王討伐にそんな事があるのでしょうか?」

あり得ない話ですが…まさか!

「リヒト殿が『単独勇者』を望みました」

「確かにその話は聞きましたわ…ですが、それがもし認められても魔王の旅から私達が離れるだけで魔族との戦いをする義務がある筈ですわ」

「確か、戦闘義務、それがある筈だ…それに私達はリヒトを探し合流するつもりだ」

「そうよ」

「その戦闘義務はもう無くなりました…勇者リヒトが命がけでバルモンと戦い…命がけの死闘の末勝利…その手柄と引き換えに『貴方達の戦闘に関わらせない未来』を望んだのです、これを教皇様と諸国の王が正式に認めました…これからは普通の少女としてお過ごし下さい」

「待って私はリヒトに…リヒトに会いたいのですわ…何処にいるのか場所を」

「それは出来ません、今の貴方は『聖女』ではない…それは勇者様が望んだ事です…教会も何処の国も、もう貴方達は決して戦闘には関わらせない…それが勇者リヒトの思いなのですから」

「そんな、リヒトが…」

「リヒトにもう会えないの…」

「個人的に言わせて貰います…命がけで愛して貰ったんですから、その気持ちを踏みにじらないで下さい」

『命がけの愛』

「命がけの愛…どういう事ですの?」

「バルモンとの死闘…いかな勇者すら逃げる相手の死闘です…如何に勇者リヒト様でも絶対に勝つなんて保証は無いでしょう、いえ負ける算段の方が高かったでしょう…貴方達を自由にしたい、その思いから…その死地に向かって、奇跡的な勝利を拾った…その思いを踏みにじらないで下さい」

そんな…そんな愛されていたなんて知りませんでしたわ。

それはエルザもリタも一緒ですわ。


「そんな、なんで…言わないのですわよ…グスッ」

言われてみれば様子が可笑しかったのですわ。

今迄、こんな高価な宝石なんてくれませんでしたわ…

服だって買って貰った事は無かったですわ…

食事だって…

これは『お別れ』を考えての事だったの?

命がけで愛されていたなんて…知りませんわよ。

「私…愛されていたんだ…あははははっ、私本当に馬鹿だわ」

「酷いよ…ちゃんと言ってくれなくちゃ…わかんないよ…鈍感なんだから…私」

「「「うわぁぁぁぁぁん、ヒク、グスッすんすんうわぁぁぁん」」」

「好きなだけ泣くと良いですよ…此処を去ったら『普通の幸せ』の中で生きて下さいね…決して勇者リヒトの気持ちを踏みにじらない様に」

今の私達には泣く事しか出来なかった。


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

ゴミスキル【スコップ】が本当はチート級でした~無能だからと生き埋めにされたけど、どんな物でも発掘できる力でカフェを経営しながら敵を撃退する~

名無し
ファンタジー
鉱山で大きな宝石を掘り当てた主人公のセインは、仲間たちから用済みにされた挙句、生き埋めにされてしまう。なんとか脱出したところでモンスターに襲われて死にかけるが、隠居していた司祭様に助けられ、外れだと思われていたスキル【スコップ】にどんな物でも発掘できる効果があると知る。それから様々なものを発掘するうちにカフェを経営することになり、スキルで掘り出した個性的な仲間たちとともに、店を潰そうとしてくる元仲間たちを撃退していく。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

処理中です...