俺が死んでから始まる物語

石のやっさん

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第12話 消えたリヒト

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リヒトが帰ってこないのですわ。

此処暫く、妙に優しくそして暖かい…何故かそう感じていたのに…

帰ってこないのですわ。

「元に戻ってしまったのか…夜遊びもしないで真面になった、そう思っていたのにな」

「だけど、セレスを殺してから随分、真面になったのに、結局はなんも変わらなかった…そう言うことですわね」

「そうだね…だけど、私達もクズじゃないのかな?セレスが死んだのにそのままにしたよね? 確かに法律的には冒険者の揉め事だから罰されないし、ましてリヒトは勇者なんだから問題はないよ、だけど、埋めてあげて花位はあげてあげるべきだったのじゃないのかな?」

「そんな物は必要ないだろう? 村人や普通の人間ならそうだ、だが我々は勇者パーティだ!戦の中で死んだら、そのままにして突き進むのが使命だ」

「偽善ですわね、セレスが戦場で亡くなったのならそうですわ! ですがセレスが亡くなったのは戦場ではありませんわ…しかも殺したのは魔族でも無くリヒトですわ」

「だったら!お前はあの時に、ちゃんとしろと」

「いってませんわ! ですが、真実を捻じ曲げるのは馬鹿がする事ですわよ! ポーターのセレスじゃあの場所で置いていかれたら只じゃすまなったのですわ…だから泣いて縋ってきた、それを事故で法律的には問題が無いとはいえ殺してしまったのですわ…確かに問題はありませんわよ? 勇者のリヒトに問題はありませんわ、ゼノンの街までなら兎も角、安全な街に戻る旅なんてしたくないのは当たり前ですわね」

「何が言いたいんだ! クラリス…」

馬鹿ですわね。

「勇者パーティの判断なら間違っていないのですわ…ですが幼馴染としての判断ならどうなのでしょうか? 」

「さっきからネチネチと何が言いたいんだ…」

「あそこは安全な場所なのですわ、幼馴染として埋葬してあげる位の優しさは持つべきでしたわ」

「そうだよ」

「なんだよ…私だけが悪者かよ」

「違いますわ…皆が悪者ですわね、エルザもリタも私もですわよ…エルザ、貴方は母親が亡くなっても埋葬もしませんの」

「しない訳ないだろう」

「ではセレスは?どうなのですの? 小さい頃から一緒に居て家族同然の筈ですわ…それが死んでも『ただ捨てただけ』勇者のリヒトとは一生の付き合いが決まっていますわ、まぁ魔王を討伐した後、結婚する運命ですわね…だから忖度した!違います?」

「だけど、それはクラリスも一緒でしょう」

「ええっ、そうですわね…私にとっても邪魔者ですわ、セレスは、将来家族になるリヒト…勇者のリヒトと天秤に掛けてリヒトをとりましたわ…ですが反省と弔い位はするべきでした…それ位はわかりませんの?」

「そうだよね」

「今更、どうしようもないだろう…」

「そうね…」

「話が随分それましたわ…幼馴染を殺して、罪悪感を感じていそうですわよリヒトは、今のリヒトが果たして夜遊び等すると思いますの?」

「だが帰ってこないだろう」

「そうだよ」

今のリヒトが元のクズに戻るとは思えませんわ。

◆◆◆

ギルドの職員が訪ねてきましたわ。

「どうかしました…こんな夜にまさか魔王絡み?」

「何かあったのか? リヒトが留守なこんな時に」

「直ぐに準備します」

「いえ、違いますリヒト様から伝言がありました『楽しかった ありがとう』だそうです」

「あの…それはどういう事ですの?」

「ギルドでパーティの解散手続きをしましてお金の大半は皆さま三人の口座にわけています…理由を聞いたら、これから『単独勇者』になる…だそうです」

まさか…本当に…そんな事を。

たった一人で魔王と戦おうというのですか?

「そんな、あの話は冗談じゃなかったのか…死ぬ気かよ」

「嘘だー-っ! 嘘、私が出来もしないなんて言ったから…そんな、リヒト…」

「あのリヒトの行先は解りますわね」

「解りません…これは本当に…ですが、もし知っていても同じパーティで無い、貴方達には言えません」

「私が追い詰めたからですわ」

「私が悪いんだ…」

「私も…」

三人で街中探したが…何処にもリヒトは居ませんでしたわ。
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