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第10話 何処までも甘い勇者の世界

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村を後にした時、様子は可笑しいが許しては貰えたようだ…やはり俺の気が済まない。

だから、近くのオークを片っ端から狩った。

近くの洞窟までいき、巣ごとオークを駆逐した。

多分、今の俺に出来る最大の罪滅ぼしがこれだ。

沢山のオークを狩って、オークの倉庫の宝を持って村に行った。

ストレージからオークと宝を出して山積みにした。

宝はガラクタだが、少しは金になる、苗床の女が居たら、助けた事で更に気が安らぐが、それは居なかった。

オークは食料としても有効だし…少しは罪滅ぼしになるだろう。

「これで勘弁してくれ」

そう言うと村長に驚かれた。

「あの…勇者様、我々は感謝しています…」

「ああっ、その話はさっき聞いた…だが、俺は…まぁ良い、これは俺からの寄付だ、これでオークの脅威は少しは無くなっただろう?」

「はい…ですが宜しいのですか?」

「何が?」

「いえ、これだけあれば、村人全員の4か月分の生活費になります…宜しいのですか?」

「ああっ構わない」

「それじゃ…そうです…当人が良いと言うなら、この前抱いた女性を差し…」

「それは良いから…それじゃ俺は行くからな…じゃぁ」

これ以上此処に居ると、頭が可笑しくなる。

女性を押し付けられると困るから…急いで村を後にした。

◆◆◆

結局、往復の時間を合わせて3日間で宿屋に帰ってきた。

「どうだ? 誰も文句一つ言わなかっただろう?」

「ああっ、凄く可笑しいんだ! 女を犯すような最低な事をした筈なのに…感謝されていた…意味が解らない」

「そうでしょうね…あの内容なら感謝されますわね」

「あれは…幾ら何でもやりすぎだと思う」

「何か知っているのか?」

明らかに可笑しいこの状態の事をなにやら知ってそうだ。

「まあな…話してやるよ」

エルザから聞いた話は、とんでもない物だった。

勇者絡みだと、教会は此処迄するのか?

確かに教皇のロマーニは勇者絶対主義…勇者を溺愛していると聞いた。

だが、免罪符や中級信者の地位に『魔王討伐への参加』…そこ迄されたら誰も文句なんて言わないだろう。

これって実質『やり捨てゴメン』…つまり貴族階級の女性ですら上級貴族でもない限り拒めないんじゃないか?

寧ろ不味いのが、これが知れ渡ったら…俺の体が狙われるんじゃないかという事だ。

「それじゃ、俺の知らない所で全部償いは終わってしまった…そう言うことか?」

「そう言うことですわ、ですから今更リヒトがすることは何も無い…それでも気が済まないなら、教皇様に謝る事ですわね」

だが、それって…教皇様は勇者絶対主義だから…

「意味無いよね? 笑いながら許す、そういうだけだもの」

「そうだな」

それでも俺は謝りたかった。

◆◆◆

俺は通信水晶でロマーニ教皇に連絡を取った。

勇者でも無い俺が連絡を取るのは気が引けたが仕方が無い。

顔は平常心だが…心臓はバクバクだ。

「お久しぶりですな! 勇者リヒト殿? また何か困りごとですかな?」

此処迄したリヒトに笑って対応する…凄いな、噂では孫の300倍勇者が好きだと言うのも頷ける。

「いえ、今回は凄く迷惑をかけたのでせめてお詫びをと思いまして」

「何を言われるのですか? リヒト殿は勇者です、これから沢山の人を救われるのです…それに今までだって数百単位の人を救ってきたのですから女の数人位は気にしなくて構いませんよ…しかも殺したわけでもないのですから…」

「ですが…」

「リヒト殿、普通なら青春を謳歌して早い者は結婚を意識し子供が居る…それを犠牲にしているのですから…当然の事です…あと、もし気になるなら、シスターはどうですか? 勇者様の事を理解しております、事件の事を伏せて話をした所6割のシスターからOKの返事を頂いております…勿論、お金も不自由はさせませんし、そういうお店や他の人間が良いなら、それも…」

何でも許されてしまう…

「教皇様…俺を助けて下さりありがとうございました…これからは勇者としてこれまで以上に邁進いたします」

「これからも期待していますよ」

「ありがとうございます」

何処までも甘く許される。

幾ら俺がした事じゃ無くても…気が咎めてしまう。

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