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第50話 最終話 日常 ささやかな幸せ
しおりを挟む「ほら泰明行こう!」
「行きましょう…ほうら」
俺は今、二人に連れられてデパートへと向かっていた。
あの後、神代から連絡があり、俺の日本最強殺人鬼決定戦への出場はシード扱いになる事になった。
予選出場無し、本選は優勝者と2日間後に『相手が希望したら』戦う、そんな話だった。
それが、行われても行われなくても…その次の俺の目標は、東洋の選手との親善試合らしい。
神代の言う事には、今まで、韓国、朝鮮、ロシア、中国は、世界最強殺人鬼決定戦には出場をしていなかったらしい…
だが、今回ワルキューレのスナッフビデオが出回わり、その一つが共産圏でも出回った為に『自国の殺人鬼と戦わせてみたい』そういう話が出たそうだ。
そこで、親善試合を行う事になったそうだ。
その親善試合のメンバーの1人が俺らしい。
この親善試合の結果次第で『東洋最強殺人鬼決定戦』というリーグが行われる可能性がある。
結構重要な役目らしい。
それで…暫くはやる事が無くなった俺は2人を連れて水着を買おうとデパートに向かっている。
そんな感じだ。
神代の技術は凄く、義手も義足も入歯も完璧だった。
今では二人とも…うんコスプレ少女に見える。
敢えて通常の手に見えないようなアンドロイドの手足は、まるでセクシーアンドロイドの手足に見える。
『これは本物』なのだが知らないで見れば、セクシーアンドロイドの手足にしか見えない。
しかも、この手足は完全防水なのでプールでも安心だ。
流石『神代の技術は世界一』というだけの事はある。
いつもはリムジンで出かけるのだが、今回は2人のリハビリを兼ねて電車とバスで移動する事にした。
「流石にこの時間だと結構空いているのね」
「ガラガラ」
まぁ混みあう時間を避けているから当たり前と言えば当たり前だ。
◆◆◆
デパートでの買い物は…顔が赤くなる事ばかりだった。
普通の売り場は良いのだが…すっかり頭から抜けていた。
2人はAV嬢だった。
下着売り場で…
「ねぇねぇ泰明、このフリフリして透明な奴とこのTバックどっちが好みかな? 泰明の好みに合わせるよ!」
「私の方はこのピンクのやつと大人っぽい黒…あと意表をついてヒョウ柄で迷っているんだけど…どれが良いですか?」
周りの視線が何とも言えない。
店員さんや女性店員は少し迷惑そうにこちらを見ている。
逆に男の方は羨まそうな恨めしい様な目でこちらを見ていた。
「カード持ってきてるから、欲しいの全部買えば良いよ」
「本当に? それじゃぁ」
「私もこれとこれ…」
結局、同じ事を水着売り場で繰り返し…ショッピングは終えた。
勿論支払いは信頼の神代ブラックカードで支払った。
◆◆◆
帰りも三人で会話をして楽しみながら歩いていると…目の前から『嫌な雰囲気』の奴が三人歩いてきた。
ヤバいな…あの雰囲気は絡んでくるタイプだ。
「二人とも、こっちに行こうか?」
「「うん?」」
横道に入り躱そうとしたが…追ってきた。
不味い、見つかっていたのか…
「ガキが良い女連れてムカつくんだよ! 虐めないから女置いてさっさと行けよ」
「早くいかないと…金も貰うからな」
「ほら、早く逃げないと…虐めちゃうよ」
馬鹿な奴だな…二人は
「怖いよ~泰明助けて~(笑)」
「泰明さん怖いです(笑)」
俯きながら笑っている。
「あのさぁ…金ならやるから居なくなってくれる?」
そう言いながら100万円の束を放り投げた。
金なら幾らでもある『金持ち喧嘩せず』
そういう言葉を思い出したし、人を殺すのは案外、ナーバスになるから殺したいとは思わない。
「なんだ、お前馬鹿にしているのか? 金が欲しいからじゃねーんだよ」
「お前金持ちなの? なら有り金も置いていけ…あん?!」
「良い顔した女2人に金迄貰えてラッキーだぜ、ふははははっ」
ああっ凄く腹が立つな…
こっちが出来るだけ穏便に済まそうと思っていたのに…
俺が下を向いて考えていると…
「あ~あ情けないな…彼氏今にも泣きそうじゃん」
「よく見たら此奴、泰明だ…確か隣のクラスで虐められていた奴で消えちゃった奴です」
「なんだ、此奴いじめられっ子だったのか? ほら虐めないでやらないからほら、とっとといきな」
「そう?それじゃ2人とも行こうか?」
「そうね」
「うん」
「てめえぇ待てよ、女を連れて行って良いなんて言ってねーぞ」
「泰明の癖に生意気だぞ」
「殺されてーのか?あんっ」
まぁこうなるよな…
だが、此奴ら言っちゃいけない事を言いやがった。
「あのさぁ~今、俺を殺すって言ったのか?」
「あ~言ったぜ…だからどうした?」
「殺されたく無かったら女置いて逃げな…有り金置いてな」
「ほらほら、殺しちゃうぞ」
ハァ~本当に面倒くさいな。
もういいや…俺は随分我慢したよな。
争いたくないから回避しようとしたし…お金で解決もしようとした。
我慢強く、脅しも聞いていたのに…
解決策も無い。
そして、この馬鹿達は『殺す』という言葉を使いやがった。
もういいや…
「明日香、麗…後ろ向いて少し目を瞑っていて」
「「うん」」
「お前、まだふざけるつもりか? いい加減に…えっ」
ズブッ
俺は一直線に近づき腹をナイフで刺した。
刃渡り約30cmのナイフ。
そのまま武士の切腹をイメージするように真横に引く。
すると簡単に内臓が腹からこぼれてくる。
「君たちは『殺す』って言ったんだから仕方ないよな? 俺は金で解決しようと思っていたのに…馬鹿だ」
「ぎゃぁぁぁぁーー」
「煩いよ」
煩くされても困るから喉を掻ききるように斬った。
「もう喋れないね…暫くしたら死ぬから…良かったね」
「うわぁぁぁぁーー助けて、助けてーー」
残念ながら遅い。
「君の顔思い出した…俺が虐められていたのを笑って見ていた…」
「ゴメンなさい、ゴメンなさい…許して…えっ」
間抜けな顔…
あと一人居るからナイフを水平に持ち肋骨を避ける様にナイフで心臓を狙った。
「避けるから、辛い死に方になっちゃったね」
心臓を僅かに外した。
まぁ中心では無いけど半分以上は裂けているから…死ぬだろう。
「助けて、お願い助けて…もうしない」
「駄目だよ…お金迄渡して、回避しようとしていたのに…」
「金、金なら…」
「財布?」
「10万円入っています…これで、これで助けて下さい」
馬鹿だな。
100万円の手打ちを断ったのに10万円。
「うん…全然足りない」
俺は笑顔で最後の1人を滅多刺しした。
◆◆◆
「明日香、麗…もう終わったから帰ろう」
「「うん」」
スマホから電話を掛けリムジンを手配した。
「家に帰ったら、早速泳ごうか?」
「そうだね、凄く楽しみ」
「私も」
「俺もだよ」
次の戦いが始まる迄のささやかな安らぎ。
今から楽しみだ。
FIN
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