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久保田 お願いした

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「あん? 1年の坊主をどうにかして欲しいだと? 久保田よぉ~お前は無能なのか? それに1年は哲也に任せているんだぜ! 飛び越えてなんで来るわけ?」

「お前、哲也と2年のメンツ潰すのか? おいそれと俺らに頼むのはおかしいだろうが?」

「それが…哲也は、田向が怖くて登校拒否…連絡がつかないですが、転校の手続きをしているって、噂です…それに2年の先輩には石川が頼んで森崎さんが動いてくれたらしいのですが…大怪我を負わされて、もう空手も出来ない状態です…2年の先輩と仲の良い石川が他の先輩にもあたったのですが…森崎さんがやられたと聞いて動いてくれないんですよ…助けて下さい!」

出来たら3年生には関わりたくなかった。

3年生は1~2年生とは訳が違う。

3年の先輩で不良をやっているのは『暴走族』『犯罪者』予備軍。

本物の『悪(わる)』だ。
暴走族の集会にも顔を出しているし、付き合いもある。

『この人達には絶対に田向でも勝てない』

もし万が一勝てば、それぞれのバックが出てくるから人生が終わる。

つまり…三年の不良と揉めるという事は族や愚連隊と揉める。

そういう事だ。

幾ら田向が強くても数の暴力には勝てねー。

何十という族に囲まれたら…1人じゃ何も出来ねーよな。

今度こそおしまいだ。

「あ~っ森崎やられちゃったんだぁ~可哀そうにな」

「森崎は三年に交じってもそこそこやれたのにな」

「馬鹿じゃねーか? あんなのが強い訳ねーじゃん! 相手に止めをさせねー奴はいつかこうなるんだぜ」

「そんな使えない2年坊なんてどうでも良いじゃん…それに哲也も居なくなっちゃったんでしょう?一年は今度誰に任すんよ」

「そんな事より、久保田くんよぉ~、その田向の討伐、誰に頼むんかなぁ~、あと幾ら出すんだ」

「そうそう、まずは誰に依頼するんだ? あと幾ら出せるんだ?」

「久保田は哲也の仲間なんだから、俺っしょ? それで幾ら持ってきたの?」

「それはちーげーよ…哲也が居なくなったのなら、もう関係ねーよ」

「あの、それは先輩達で決めていただければ…」

「「「あんっ?舐めているんか」」」

この学校の先輩はばらけている。

ヤンキー中学は普通は一つの権力で統一されているがこの中学は違う。

繁華街に近く二つの族の勢力圏に重なる為、この中学には大きく3つの勢力が存在する。
他にも幾つかあるが、基本は余り表には出てこない。

『全日本黒狼会』かっては、喧嘩が強い頭と走りも凄いという族だったらしいが、揉め事が起きて、頭と副リーダーが引退。
その為、規模はかなり小さくなり、走りは二の次『暴力と金』の族になった。数は昔より減り…それでも40名はいる。
金森和也が在籍。

『悪童連合』 自らを『悪』とし、何をやっても許される存在としている。『喧嘩上等』『狂乱』を自負する喧嘩集団。
その反面『走り』も重視し、『最速』『最強』が売り。
その走りは荒っぽく、敵対する族が走っていれば平気で蹴りを入れたり鉄パイプを投げ転倒させる。その数は100を超える。
一応は硬派を売りにしている。
神成純二が在籍。


『極悪少年愚連隊』『喧嘩』『金』『暴力』この三つをこよなく愛する団体。裏にはヤクザがついているという噂の半グレ軍団。
因縁を吹っ掛けては恐喝を繰り返し『金ずる』にする。
数は少なく20名。
森澄夫が在籍。

どうして良いか解らない。

「….」

「まぁ良いや、それで金は幾らまで出せるんだ? まさか手ぶらで来たわけじゃねーよな?」

「あの…これで」

俺は石川みたいに仲の良い先輩はいない。

いつも哲也にくっついて居ただけだ。

石川や哲也みたいに可愛がられていれば『しゃーないお前の為だ』と小遣銭で動いてくれるが…俺にはそんな先輩はいない。

だから、俺が今まで貯めた金の2/3を持ってきた。

「ほう…どれどれ…なんだ、ったの20万か…」


「「20万ね」」

「よかった…持ってきた金が10万以下だったらボコっていたぜ」

「「「それで、誰に頼むんだ」」」

「その…」

「おめぇームカつくな…の野郎っー――!」

バキッ

いきなり顔を叩かれた。

「あああっ」

「あああっじゃねーよ! お前は哲也の金魚の糞だろうがっ! なら俺に頼むんじゃねーの? 確かに三人で1年を任せたが、彼奴は俺の手下だったんだからな! 金森、神成、悪いがこれは俺が受ける。何もしないで良いからよ5万ずつで泣いてくれねーかな!」

「ああ、いいぜ! うちの先輩を動かすのには金が掛かるからな、その方が実入りが良い」

「俺は根性無しは嫌れーだからよ、そのガキには手を貸したくねーからな良いぜ、全くよ…仲間やられて『奇麗な顔』で話し持ってくんなよ! 俺の後輩なら、死ぬほど焼きいれてんぞ…5万は、まぁ、有難く頂くがな」

「悪ぃー-な」

「「いいって事よ!」」
「それじゃ久保田くんよー-っ、この俺、森澄夫が受けてやんよ…良かったな…もう安心して良いぞ」

「ありがとうございます」

◆◆◆

「それで久保田くんよー、あと幾ら出せる?」

「それはどういう? 痛っ」

何で殴られなくちゃいけないんだ。

「あのよーっ10万は手付だろう?こんな金額じゃ先輩に動いて貰えねーよ、こんな金額じゃ、せいぜい俺が呼び出して『もう久保田に手を出すんじゃねー』としか言って終わりだぜ。それで良いならこれだけで良いぜ? ヤバイ奴なんだろう? だったら一回地獄を見せなくちゃ終わらないぜ…先輩1人5万、5人も居れば、この世の地獄の完成だ。だから、あと25万寄越せ…そうしたら久保田君は生涯、田向から守られるぜ…勿論25万のコースはアフターフォローつき、もし田向がお前にまた何言ってきたら『極悪少年愚連隊』が黙っちゃいねー…どうだ?」

「だけど、俺そんな金」

「お前は馬鹿か? 親の金でも何でもあるだろう? これが払えるなら哲也の後釜にもしてやる。クラス全員から1万もとれば、逆に黒字だぜ。余分な分はお前が貰っても良いぜ」

嘘だろう…

「あの…」

「あのじゃねーよ…仕方ねーから、今回は特別、物納で良いぜ。高級腕時計に財布、鞄、それで30万円分で許してやんよ」

5万増えた…ヤバい、ヤバい…不味い。

「あの5万円…」

「換金手数料だ文句あるか?」

「ありません…」

結局、俺は親の腕時計2つと鞄で許して貰い、森先輩に『お願い』した。

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