65 / 67
第65話 修羅場② 誰も救わない聖女
しおりを挟む重苦しい雰囲気…
まさかもう一度この二人に会うとは思わなかった。
リヒトの優しい性格なら、こうなる可能性もあった筈。
しかも、いきなりなんだから…どうしようかしら?
何も考えていなかったわ。
「それで? なんで救世の旅に向かった『聖女フリージア』が此処に居るのか? 不思議だな…」
「フリージア、私は友達だと思っていたのですが?違うのかな?」
目が笑っていない。
しかも、この手…
恨まれていても仕方が無いのかも知れない。
「私はカイトのパーティに嫌気がさして『救世』の方を選びました。私も一緒に遊んでいたから、そんなに強く言えませんが、あの時の行いが正しい行動かどうかは自分の胸に聞けば解る筈。そして一緒に行動するならリヒトの様な人格者と行動した方が良い。そう判断しただけです。それが何か問題でもありますか?」
これでどうかな?
流石に言い返せない筈。
「あれ、可笑しいな? 救世ならなんで比較的、安全な南に居るのかな~」
「北の方が怪我や病気の被害にあって苦しんでいる人が多いよね?可笑しいよ?」
「それは北には優秀なヒーラーが沢山いるからです」
「可笑しいな? 南より北の方がヒーラー不足だと聞いたよ?」
「そうだよね?どう考えても可笑しいよ…無理があるよ」
もう面倒くさい…
「ハイハイ…もう解ったわ!リヒトが好きな事に気がついたから追いかけてきたのよ! 思ったとおりよ! それで何がいけないの?責められる謂れは無いでしょう?」
文句なんて言われる筋合いは無い。
私はちゃんとした手順を守って『救世』を選んだ。
馬鹿らしくてやってられないから救世なんてしていないけど…二人に文句を言われる謂れはない。
これは私の問題。
二人は関係ない。
「本当に救世をするのならいざ知らず。そんな理由でいきなり消えるなんて最低だぞ」
「そうだよ、おかげで私達は…こんな事になったんだよ…ふざけないで…よ」
それは責任のすげ替えだ…
「まず言わせて貰えば、その手は自分達の責任でしょう? ちゃんと計画も立てずに討伐をした結果じゃない。カイトを責めるなら兎も角、その場に居ない私に責任転嫁しないでよ」
「だが、フリージアが居たら少しは違ったはずだ」
「そうだよ、貴方が居たら、すぐに手当てが出来た筈だよ」
「無理ね! 今の私じゃ、その腕の治療は出来ないから結果は何も変わらなかった。ちゃんと考えて行動しないからそうなるのよ! 私も言えた義理じゃないけどね…」
「無責任だぞ」
「ずるい」
「昔の私は可笑しかったのよ…簡単に言えば馬鹿だった。これは今だから言える事、当時カイトのパーティから抜けたのは『恋愛』だから、これは只の偶然。だから偉そうに言えない…だけどね、本当の敵は『魔王』じゃないわ…これは言える」
「魔王じゃない?」
「魔王は人類共通の敵でしょう」
本当の敵は魔王じゃない…人間だ。
そんな事まだ解らないのかな。
「違うよ、本当の敵は人間…それが此処に来て思い始めた事よ。そして今回の件でそれが良く解かりました。散々勇者パーティだと持てはやして…負けたら『責任を全部押し付けられて奴隷落ち』レイラもそう…貴方達もそう…だから『本当の敵は人間』魔王じゃ無いわ」
「フリージア?」
「幾らなんでも言い過ぎだよ…人間が敵なんて…」
「敵だよ…多分リヒトが手を回さなければ…貴方達は良くて『性処理奴隷』下手したら買い手がつかなくて廃棄扱いで殺されていた可能性もあるんだよ…少なくともレイラはそうだった」
「それじゃ…騙されていた。そう言う事だ」
「騙されていたの?」
「私は、少なくともそう思っている! だって騎士でも領主でも負けても此処迄の責任はとらない…自分達が勝てないからって押し付けて負けたら、責任追及…そして、一般人から貴族迄誰も助けない…そんなの敵としか思えないよ」
「フリージア…確かにそうかも知れない…それじゃ『敵』だとしてどうするの?」
「戦えないでしょう?」
「だから、私は報酬無しで『誰も救わない聖女』を目指しているの…仲間は別…他の人間はどうでも良いわ! 表向き、救世のポーズはとるけど、極力誰も報酬無しで救わない。目の前でゴブリンに襲われている人間が居ても、食べられそうな人間が居ても報酬が無いなら助けない。オークに犯されている女が居ても笑いながらお金が無いなら通り過ぎる…そういう聖女が私の目標よ」
「フリージア…幾らなんでもそこ迄…」
「救える者は救いたい…」
この二人は馬鹿なのかな?
「そう思うなら勝手にすれば!だけどリヒトは私達が戦いに関わらないで良い様に『南』を目指しているんだよ…レイラもリヒトも私も報酬無しじゃ人は救わない…例え人間が何万、何億単位で死んでも、救うつもりは無い…そう決めたんだけど。それでも貴方達は誰かを救いたいの? もし、その力を使うなら、そんな惨めな姿になった貴方達を救い、今後も面倒見ようとしているリヒトだけで良いと思うよ…まぁ仲間という事でレイラや私も助けてくれたら嬉しいけどね」
此処迄言って解ってくれないなら…私の中で『二人はどうでも良い存在』だ。
「あはははははっ、そうだね誰も助けてくれないなら、助ける必要ないや…あはははっ、王と教皇が斬れるなら斬り殺したくなってきた」
「確かに、うんうん、もうどうでも良い存在だよね」
どうやら、解ってくれたのかな。
「斬るのは不味いから…助けない、これ位が丁度よいと思うわ」
「「「そうだね」」
そう言いながら、二人は涙を流している…まだ頭で割り切れてないのかな。
25
お気に入りに追加
854
あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。
名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる