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第63話 今は答えない
しおりを挟むミルカSIDE
「う~ん…えっ」
横を見るとリダが吞気そうに寝ている。
キッチンの方から良い臭いがしてくる。
「おはよう…リヒト…」
「おはよう、ミルカ、今朝食作っているから、洗面所にハーブ水が用意してあるから顔を洗ってくると良いよ…1人で大丈夫かな?」
「片手はあるから…それ位は多分大丈夫だよ」
「そう? あまり無理しないでね」
久しぶりに会った幼馴染のリヒトは…以前と変わらず、凄く優しかった。
一旦失ったから解るよ。
この生活がどれ程幸せだったのか…
リヒト特製のハーブ水…これで顔を洗うと本当にスキっとするんだよね。
本当に気持ち良いな。
「ふぁ~あ…リヒトおはよう!」
リダも起きてきた。
「おはよう、リダ、そろそろ朝食が出来るから、ハーブ水で顔を洗って来いよ」
「…ありがとう」
昔だったら当たり前の朝の光景。
だけど、これがどんなに大変な事か良く解る。
朝起きて市場に行って美味しそうな物を買ってくる。
そして、洗顔ようのハーブ水を用意して、朝食に取り掛かる。
私達より2時間以上早く起きなければ出来ない事だ。
「そういえば、二人とも歯は磨けるか?」
「私は大丈夫だし、ミルカは私が手を貸すから大丈夫だ」
「うん」
「そうか」
はぁ~リヒトは凄い。
素晴らしいよ…男としてじゃなくて人間として…
途轍もなく大きな愛。
だから、気がつかなかったんだよ。
そう、他の男のギラギラした物じゃない。
一番近い物は…まるで家族のような愛…『お父さん』それが一番近いかも知れない。
落ち着いていて、優しくて…うんうん、こんな良い男他には居ないよね…
私とリダは顔を洗い、歯を磨き終わると食事の用意を終わらせたリヒトが笑顔で待っていた。
「「「「いただきます」」」
今迄とは違う…本当に落ち着いた穏やかな朝だ。
◆◆◆
「それでリヒト、これからどうするの?」
リダがリヒトに聞いていた。
私もそれが気になる。
今のリヒトは何をしているのかな?
「少し此処で2~3日休んだら、すぐに南に向かって、レイラ、フリージアと合流、その後は聖教国を越え帝国へ行き、その辺りから安住の地を探す…そんな所だ」
「リヒト、今、フリージアって言った?」
「嘘、フリージアもリヒトの所へ行っていたの?」
「まぁな…色々あって二人はまぁ恋人…妻みたいなものだ」
嘘…フリージア、私達の前から居なくなったかと思ったら、リヒトの所に行っていたんだね。
『ズルい』
しかも、ちゃっかり『妻みたいなもの』
抜け駆けしていていたんだ…
リダが少しむくれているよ。
「へぇ~リヒトは二人も妻みたいな恋人が要るのか~」
リダ…今聞きたいのはそれじゃ無いよ。
私は勇気をだして聞いてみた。
「それじゃ、私達も…その将来は恋人や妻になれるのかな?」
リヒトは困ったように鼻を掻きだした。
◆◆◆
【リヒトSIDE】
これは困った。
フリージアを受け入れてしまった時点で、これは言い訳にしか過ぎないけど…俺はロリコンじゃない。
20歳以上のレイラみたいな大人の女性が好みだ。
だから、恋愛対象じゃなくて『困っている幼馴染』を救う為に引き取った…それが正しい。
大体、可笑しいだろう。
三人とも『イケメン大好き、ミーハー女子』
俺とカイトでカイトを選ぶ…俺みたいな地味な男に興味は無い筈だ。
一体なにか変わったのか?
まぁ良い…少なくとも今の俺は彼女達を『恋愛』の対象には見ていない。
多分『庇護欲』それが近い。
片腕が無い…それだけで、前世と違いこの世界では生きにくい。
お金が無い農民や市民では仕事が出来ないから、必要とされない。
貴族は使用人に到るまで、体の不自由な者を嫌う。
恐らく、真面に生きられない。
俺が幼馴染と呼べるのは4人。
前世と違い…これが友人と呼べる全員。
流石に命までは掛けられないが、助けてやりたいと思うだろう?
この世界で孤児になってしまった俺には前世で言う『親類』より近い。
姪っ子…それが近い。
困ったな…
『レイラに2人目は許さない』
そう言われた。
だけど…これは無粋だな。
「そうだな、本当に俺を好きになった時に考えるよ」
まぁ気の迷いだ。
心細かった時に俺が助けたから、感謝と愛を間違えている。
それだけだよ。
「本当に?言質とったからな」
「うん、うん約束だよ」
本当に…そうだよな?
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