58 / 67
第58話 奴隷落ち リダ ミルカ SIDE
しおりを挟む「此処に入れ」
私たちはあのまま馬車に乗せられ牢獄へと連れていかれた。
もう私たちは終わりだ。
「痛いよ…こっちは片手が無いんだ。もう少し優しく扱えないのか?」
「そうよ、確かに敗北こそしたけど、それなりに戦っていたのよ」
どうせ待遇は変わらない。
この後はみじめな人生しかない…なら萎縮する事はない。
『死』か『奴隷』しかないんだから。
「お前らがサボって酒浸りの毎日を送っていた事を知らないと思うか? どこで飲んでいたか解らんが毎晩お酒を浴びるように飲んでいて碌に討伐もしていなかったんだ…違うか?」
そうか…行為やお酒を飲んでいる姿は知られていなくても、その後酔っぱらって帰る姿は…見られていてもおかしくない。
「そうね…確かにお酒に溺れていたわ」
「しょうがないじゃない…ストレスが溜まっていたんだから」
「そうか…しょうがない…か。だがお前らが真面に討伐していれば滅ばないで済んだ村や街が幾つもあった。俺の故郷は、滅ぼされてもうない…お前らのせいでな…俺はお前らを殺してやりたい位憎い!だが俺の仕事は牢番だ…この仕事にプライドがある。だから殺さない! お前らが逃げ出さないように見張るだけだ…とっと入れ!」
「「解った(よ)」」
本当にもう終わりだ。
よく考えたら私たちに『奴隷』は多分無い。
ストイックに戦っていた勇者のレイラが奴隷落ち。
なら、中途半端に遊んでいた私たちは多分『死』しかない気がする。
◆◆◆
「飯は不味いし、毛布も無いと…最悪だね」
「リダは随分落ち着いているんだね…」
「なるようにしかならないからね…諦めたが本音」
「死ぬかも知れないのに…」
「私はもう死ぬ覚悟はした…だから後は穏やかに暮らすだけだよ…私らが遊んでいたせいで沢山の被害が出たのなら…仕方ないだろう?」
「そうだけど…」諦めきれないよ」
「まぁ、私は私ミルカはミルカで、良いんじゃない?」
私だって本音でいうなら…怖い。
だが、怖がっても何も変わらない。
『これなら、リヒトと結婚して農民として暮らした方が良かった』
カイトはフリージアが好きだったから…そのままくっつくだろうし…
残ったリヒトを私とミルカが取り合って…もし四職じゃなかったらそんな未来がだった筈…
剣聖のジョブなんて…
今更考えても仕方がないな。
そのあと、鑑定人が来て調べたら…私もミルカもジョブが無くなっていた。
おそらく、こんな無様な生き方をしたから消えたのかも知れない。
『なくなるジョブ』
他のジョブは何をやっても無くならないのに…どこまでも腹がたつよ。
こんなジョブ…どこが良いのか最早解らない。
考えても仕方がないね。
今は寝るか…
◆◆◆
「なに呑気に寝ているんだ!起きろ!」
折角寝ていたのに…
「もう起こされるのか…」
「…」
ミルカは死んだような目をしているな。
牢屋の前に騎士が6名立っている。
ご苦労な事で腕が無く武器も持っていない女に随分物々しいな。
「お前に言い渡す…略式裁判にて二人の奴隷落ちが決まった。暫くしたら奴隷商人に引き渡すから、そのつもりで居ろ。以上だ」
「へいへい」
「…奴隷...私が奴隷…」
裁判も無しに…これか…
「裁判も無しか…」
「良かったじゃねーか! お前らに恨みがあるのか、はたまた余程の変態なのか、解らないが、お前らを買いたいという奇特な奴がいたんだな。王宮に出入りの奴隷商からの指名買いだ…死ぬまで慰み者だ…お前らにお似合いの末路だな」
「「…」」
取敢えず命は助かった。
だけど…これからは『女として本当の地獄が始まる』
そういう事だな。
35
お気に入りに追加
855
あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【石のやっさん旧作】『心は』●●勇者…さぁ勇者褒美をとらす! 欲しい物をなんでも言うが良い! 「はい、では●●●で!」
石のやっさん
ファンタジー
主人公の理人(りひと)はこの世界に転生し、勇者に選として、戦い続けてきた。
理人は誰にも言っていなかったが、転生前は42歳の会社員の為、精神年齢が高く、周りの女性が子供に思えて仕方なかった。
キャピキャピする、聖女や賢者も最早、子供にしか見えず、紳士な彼からしたら恋愛対象じゃない。
そんな彼が魔王を倒した後の物語…
久々の短編です。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる