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第55話 ワイバーンVS カイト達
しおりを挟むワイバーン砦。
無数のワイバーンが飛び交い住み着いている場所。
この場所に近づく者は居ない。
600頭以上のワイバーンが住み着き、そこには人間はおろか魔物すら近く事は無い。
そこに近づくことは死を意味するからだ…
◆◆◆
「カイト、本当に大丈夫なのか?」
「1頭なら兎も角、沢山居るような場所は不味いんじゃない…」
「リダ、ミルカ、今更それを言っても仕方ないだろう、はぐれている個体が見つからなかったんだから…」
「でも本当に平気か?1頭でも強敵なのに、そんな沢山居る場所で…戦闘中に他の個体に襲われたらどうするんだ?」
「そうだよ! リヒトが狩ったのは1頭、それもかなり小型だったんでしょう?」
「確かにそうだな。だが、あの時のリヒトで狩れたんだ。今の俺達はあの時より更に強くなった…余裕な筈だぜ!下手すりゃ無双できるかもな。 それに今回は1頭だけだ…1頭狩ったら、そのまま離脱する。簡単だ」
「そうだな…多数を相手にする必要は無いんだ、大丈夫だ」
「うん、そうだね」
「俺達は勇者パーティだ! 将来は魔王と戦う存在なんだぜ!これ位で怖気づいてどうするんだ」
「そうだな…やろう」
「うん」
そのまま三人で『ワイバーン砦』と言われる、複数のワイバーンが住み着いている岩場を突き進んだ。
「あそこがそうか」
遠くからでも無数のワイバーンが飛んでいるのが解った。
まだ、この辺りだと小さいが、まるで群れを成したカラスの様に見える程の多くのワイバーンが目視できた。
「あの数、やっぱり無謀なんじゃないかな…」
「撤退した方が良いよ…あの数のワイバーンを相手にするにはまだ私達は弱すぎるよ」
いや、あそこ迄行かないからな。
「あんな所迄行かない。此処からあそこに向かっていき、一番最初に出会ったワイバーンを倒して、そのまま離脱…」
「きゃぁぁぁぁー―――――っ」
「貴様ぁぁぁー―――ミルカを放せーーっ」
嘘だろう気配に気がつかなかった。
何故だ…そうか、今の俺達には斥候が居ない。
常に周りに気を張ってくれていたリヒトが居ない。
だから気がつかなかったのか。
だが、俺や剣聖のリダがこんな気配に気がつかないなんて。。
どうにか、リダの剣がワイバーンに届きミルカを落としてワイバーンは去って…いって無い!
戻ってきた。
来る。
「ミルカ、魔法は任せる! 羽を狙え!」
「きゃぁぁぁー-痛い…痛いよー-っ」
冗談だよな…
痛がり転げまわるミルカに右腕が無かった。
杖ごと食われたのか…
「これが、勇者の持つ奥義…光の翼だー――っ」
「グアァァァーーッ」
ワイバーンは一瞬怯んだものの、それでもこちらに向かってくる。
これでも仕留められないのか…
不味い…早く逃げないと、全滅する…
「リダ!撤退だー――っ」
なっ…
「こんなの無理だよー――っ」
ミルカを担いで既に逃げていた…
「リダ、伏せろーー-っ」
「えっ…ぎゃぁぁぁぁぁー―――っ」
別の個体のワイバーンが後ろからリダに襲いかかっていた。
ギリギリ躱したように俺には見えたが…リダの左手がワイバーンの口に納まっていた。
俺も見ている場合じゃない。
あいつ等の方にワイバーンの気が向かっている間に少しでも距離を取らないと…死ぬ。
俺は二人に目もくれず走るしか無かった。
◆◆◆
どうにかワイバーン砦からの脱出は成功した。
そのまま森に転がり込んだ。
これで取り敢えずは大丈夫だよね。
「リダ…」
ミルカがヤバい…体が冷たくなっていて傷口から血が凄い勢いで流れている。
「待っていろ!ミルカ、今ポーションを使ってやるから」
「あ…りがとう…」
これで大丈夫だ。
私はミルカにポーションをかけてやった後に私もポーションを浴びる様に振りかけた。
痛みはこれで収まったし傷口は塞がった…だけど、終わりだ。
勇者パーティとしても『人』としても…
ミルカは利き腕の右を失った…もう勇者パーティ処か冒険者としても終わりだ。
私も、利き腕は残ったが、左手を失くした。
もう冒険者としては二流にも留まれないかも知れない。
それに…
「ミルカ…もう私達女としても終わりね…」
私はまだ肘から先だから少しはましだけどミルカは肩の根元から腕が無い。
こんな女を嫁に貰おうなんて人間は居ないよな。
◆◆◆
「ハァハァ此処迄くれば大丈夫だ」
後ろを振り返らずに走って来た。
リダとミルカはどうなったか解らない。
あの腕じゃ、ワイバーンの餌食になったのかも知れない。
今頃は食われているのかも知れないな。
どっちにしろ、ワイバーンは狩れなかった。
そして、リダとミルカは死んだかも知れない。
もし、生きていたとしてもあの腕じゃもう『魔王討伐』なんて無理だ。
このまま帰って報告しても…責任を取らされる。
『この失態は取り返しがつかない』
今なら冒険者ギルドの口座にお金がある。
あれを持って逃げるしかないな。
もう『勇者』はおしまいだ。
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