勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)

石のやっさん

文字の大きさ
上 下
55 / 67

第55話 ワイバーンVS カイト達

しおりを挟む



ワイバーン砦。

無数のワイバーンが飛び交い住み着いている場所。

この場所に近づく者は居ない。

600頭以上のワイバーンが住み着き、そこには人間はおろか魔物すら近く事は無い。

そこに近づくことは死を意味するからだ…

◆◆◆

「カイト、本当に大丈夫なのか?」

「1頭なら兎も角、沢山居るような場所は不味いんじゃない…」

「リダ、ミルカ、今更それを言っても仕方ないだろう、はぐれている個体が見つからなかったんだから…」

「でも本当に平気か?1頭でも強敵なのに、そんな沢山居る場所で…戦闘中に他の個体に襲われたらどうするんだ?」

「そうだよ! リヒトが狩ったのは1頭、それもかなり小型だったんでしょう?」

「確かにそうだな。だが、あの時のリヒトで狩れたんだ。今の俺達はあの時より更に強くなった…余裕な筈だぜ!下手すりゃ無双できるかもな。 それに今回は1頭だけだ…1頭狩ったら、そのまま離脱する。簡単だ」

「そうだな…多数を相手にする必要は無いんだ、大丈夫だ」

「うん、そうだね」

「俺達は勇者パーティだ! 将来は魔王と戦う存在なんだぜ!これ位で怖気づいてどうするんだ」

「そうだな…やろう」

「うん」

そのまま三人で『ワイバーン砦』と言われる、複数のワイバーンが住み着いている岩場を突き進んだ。

「あそこがそうか」

遠くからでも無数のワイバーンが飛んでいるのが解った。

まだ、この辺りだと小さいが、まるで群れを成したカラスの様に見える程の多くのワイバーンが目視できた。

「あの数、やっぱり無謀なんじゃないかな…」

「撤退した方が良いよ…あの数のワイバーンを相手にするにはまだ私達は弱すぎるよ」

いや、あそこ迄行かないからな。

「あんな所迄行かない。此処からあそこに向かっていき、一番最初に出会ったワイバーンを倒して、そのまま離脱…」

「きゃぁぁぁぁー―――――っ」

「貴様ぁぁぁー―――ミルカを放せーーっ」

嘘だろう気配に気がつかなかった。

何故だ…そうか、今の俺達には斥候が居ない。

常に周りに気を張ってくれていたリヒトが居ない。

だから気がつかなかったのか。

だが、俺や剣聖のリダがこんな気配に気がつかないなんて。。

どうにか、リダの剣がワイバーンに届きミルカを落としてワイバーンは去って…いって無い!

戻ってきた。

来る。

「ミルカ、魔法は任せる! 羽を狙え!」

「きゃぁぁぁー-痛い…痛いよー-っ」

冗談だよな…

痛がり転げまわるミルカに右腕が無かった。

杖ごと食われたのか…

「これが、勇者の持つ奥義…光の翼だー――っ」

「グアァァァーーッ」

ワイバーンは一瞬怯んだものの、それでもこちらに向かってくる。

これでも仕留められないのか…

不味い…早く逃げないと、全滅する…

「リダ!撤退だー――っ」

なっ…

「こんなの無理だよー――っ」

ミルカを担いで既に逃げていた…

「リダ、伏せろーー-っ」

「えっ…ぎゃぁぁぁぁぁー―――っ」

別の個体のワイバーンが後ろからリダに襲いかかっていた。

ギリギリ躱したように俺には見えたが…リダの左手がワイバーンの口に納まっていた。

俺も見ている場合じゃない。

あいつ等の方にワイバーンの気が向かっている間に少しでも距離を取らないと…死ぬ。

俺は二人に目もくれず走るしか無かった。

◆◆◆

どうにかワイバーン砦からの脱出は成功した。

そのまま森に転がり込んだ。

これで取り敢えずは大丈夫だよね。

「リダ…」

ミルカがヤバい…体が冷たくなっていて傷口から血が凄い勢いで流れている。

「待っていろ!ミルカ、今ポーションを使ってやるから」

「あ…りがとう…」

これで大丈夫だ。

私はミルカにポーションをかけてやった後に私もポーションを浴びる様に振りかけた。

痛みはこれで収まったし傷口は塞がった…だけど、終わりだ。

勇者パーティとしても『人』としても…

ミルカは利き腕の右を失った…もう勇者パーティ処か冒険者としても終わりだ。

私も、利き腕は残ったが、左手を失くした。

もう冒険者としては二流にも留まれないかも知れない。

それに…

「ミルカ…もう私達女としても終わりね…」

私はまだ肘から先だから少しはましだけどミルカは肩の根元から腕が無い。

こんな女を嫁に貰おうなんて人間は居ないよな。

◆◆◆

「ハァハァ此処迄くれば大丈夫だ」

後ろを振り返らずに走って来た。

リダとミルカはどうなったか解らない。

あの腕じゃ、ワイバーンの餌食になったのかも知れない。

今頃は食われているのかも知れないな。

どっちにしろ、ワイバーンは狩れなかった。

そして、リダとミルカは死んだかも知れない。

もし、生きていたとしてもあの腕じゃもう『魔王討伐』なんて無理だ。

このまま帰って報告しても…責任を取らされる。

『この失態は取り返しがつかない』

今なら冒険者ギルドの口座にお金がある。

あれを持って逃げるしかないな。

もう『勇者』はおしまいだ。








しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【石のやっさん旧作】『心は』●●勇者…さぁ勇者褒美をとらす! 欲しい物をなんでも言うが良い! 「はい、では●●●で!」

石のやっさん
ファンタジー
主人公の理人(りひと)はこの世界に転生し、勇者に選として、戦い続けてきた。 理人は誰にも言っていなかったが、転生前は42歳の会社員の為、精神年齢が高く、周りの女性が子供に思えて仕方なかった。 キャピキャピする、聖女や賢者も最早、子供にしか見えず、紳士な彼からしたら恋愛対象じゃない。 そんな彼が魔王を倒した後の物語… 久々の短編です。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...