36 / 67
第36話 変わり果てた女
しおりを挟む「リヒトくん、今日も楽しかったね」
「うん、そうだね!無理をしない討伐は…確かに無双できるから楽しいし…レイラは今日も女子会?」
結局、俺達はまだ、結婚した冒険者ギルドの街ダクダに居た。
ギルド婚をしたせいか、もうレイラの事を揶揄う者は少なくなった。
最近では良い意味でレイラは相談を受ける様になった。
「だけど2時間位で直ぐ帰るから…宿で待ってて、なんならシャワー浴びてても良いよ?」
顔を赤くしながらミニスカートを履いているレイラが可愛い。
「そうだな、良いや2時間位なら、少し手の込んだ料理でも作って待っているから」
「だったらビーフシチューが良いな」
「解った、ビーフシチューだな。了解」
最近のレイラは凄く女性に人気がある。
『どうしたら年下の男を落とせるのか』
『若い子と仲良くしたい』
そんな女冒険者の悩みの相談を受けるらしい。
尤も、レイラは答えられる訳もなく、ただの聞き役に徹しているだけなんだそうだ。
まぁ当たり前と言えば、当たり前だ。
レイラは俺と出会うまで恋愛その物をしてない。
俺に関しても、俺が憧れて告白したのだから…どう考えても恋愛相談は無理だな。
「それじゃ…リヒト気をつけて」
前から鬼気迫る表情で女性が走って来る。
誰だ?
白髪に病的な程青白い肌、目には隈が出来ていて、鎖骨が見える程痩せている。
まるで、病人か幽霊に見えるような女。
どこかで見た様な気がするが、解らない。
「リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒトォォォォー――ッ」
誰だ…見覚えがある。
まさか、フリージアなのか?
「フリージアなのか?」
「リヒト可笑しいの…私が一体誰に見え…」
「おい…」
話の最中にフリージアは倒れてしまった。
仕方が無いな…
「リヒトくん、その危なそうな人誰?」
「聖女フリージア…なんだけど」
「これが『聖女』病気か何かなのかな? まるで、そのゾンビか病人に見えるけど…大丈夫?」
「流石に倒れたまま放って置けないから、一旦連れ帰るよ、なにかあったのかも知れないし」
「そうだね、それじゃ私も今日は女子会を中止にして帰るよ」
確かフリージアは勇者パーティを抜けて『救世』を選んだんだよな。
だったらこんなに窶れて居る訳は無いんだけど…何があったんだ。
取り敢えず俺はフリージアを背負い宿へ向かった。
体重が軽すぎる。
久々に背負った幼馴染はまるで子供の様に軽かった。
◆◆◆
「まるで死んだ様に寝ているね」
「そうだな…」
しかし、見れば見る程酷いな。
顔は気のせいか凄く老けた様に見える。
見方によっては30過ぎと言われても納得する位だ。
綺麗な銀髪は白髪の様に見えるし…白い肌は更に白くなり病的に見えた。
何よりも軽い。
流石にそんなことは無いが、おぶった時の体重は30キロくらいに感じた。
『綺麗なミイラ』
それが一番近いかも知れない。
聖女だから、回復のエキスパートなのに…
取り敢えず、ポーションを口から流し込み様子を見た。
「何かの病気なのかな?」
「いや、フリージアは聖女だから、それは無いと思う」
一瞬、疑ったのは性病だが、ロマンスクラブの相手は身元がしっかりしているからそれは無いだろう。
それじゃ他の病気なら…聖女に治せないのも可笑しい。
未知の病なのか?
取り敢えずは目を覚ましてからだな。
「だけど、この窶れかた尋常じゃ無いよ? 彼女はリヒトと同い歳なんだよね」
「同じ15歳だ」
「見えないよ…悪いけど私より年上に見える」
確かに肌はボロボロだし…
まぁ確かな事は起きてから聞くしか無いな。
◆◆◆
夜遅くなり、ベッドをフリージアに譲ったまま俺達が床で眠っていると、腰のあたりに重さを感じた。
「うん? なんだ…」
「リヒトォォォォー-愛しているよぉぉぉぉー-っ」
『鳥ガラ女』が裸で俺に馬乗りになっていた。
「フリージアー-っ!何やっているんだ!」
「リヒトくん!…何事?」
「なにやっているって…リヒト寂しかったんだよね…辛かったよね…だから、私が、私が癒してあげようとしてるの…大丈夫、すぐに気持ち良くしてあげるからね…うふふふっ」
「ちょっと!リヒトくんから離れて!」
レイラは素早くフリージアの後ろに回り羽交い絞めにして俺からフリージアをはがした。
「なにするの!おばさん…私は傷ついたリヒトを慰めようとしていただけだわ! 邪魔しないで…リヒトリヒト…今私が癒してあげる…だからこのおばさんに私を放すようにいってよ…ねぇ…愛してあげるから…ううん、愛しているから…」
狂っている…そうとしか思えない。
目が完全におかしい。
「フリージア、悪いけど縛らせて貰う。何があったかちゃんと聞くから…悪いな」
「うふふっ、リヒトって、そんな趣味があるの? 流石にそんな経験は無いけど、リヒトがしたいなら良いよ…」
一体なにがあったんだ…これじゃ聖女じゃなくて性女だ。
俺が別れた時は、真面だったのに…
「解った、話は聞いてやるから、もう暴れないでくれ」
「リヒトがそう言うなら…うん暴れない」
頭の可笑しくなったフリージアの理屈を仕方が無いから長い時間聞き続けた。
なんて事は無い…此奴が衰弱しているのは『お酒とSEX』に溺れたからだ。
食事も真面にしないで度数の高いお酒を飲んで、やる事やって…しかも不眠症になっていれば…確かに衰弱しても可笑しくない。
『衰弱』じゃ流石の回復魔法も効かないな。
それこそ、美味しい物食べて寝ていれば治る。
だが、よくも髪や肌がボロボロになる迄遊んだ物だな。
大丈夫か? カイト達は。
それは後で聞けば良い。
ただ聞くだけだがな。
「それで、なんで俺の所に来たわけ? 今の話だと『俺』は何も関係ないだろう?」
「うふふっ、だから、私リヒトと付き合うことにしたのよ…嬉しいでしょう?」
意味が解らない…何故そうなる。
「いや…俺ってモブだし! 美少年じゃないからフリージアの好みじゃないでしょう? ほら、今のフリージアなら、好みのタイプから選び放題…」
「そうね…確かに美少年じゃないわ…だけど、私はリヒトが良いの…嬉しいよね!」
怖い…なんだ、この目。
「いや、フリージアなら、聖騎士や貴族の美少年から選び放題、それこそ白薔薇の…」
「黙って…私はリヒトが良いのよ、うふふっ『身なんて引かなくて良いわ』沢山の男と寝たから解るけど…本当に他の男って薄っぺらいのよリヒトみたいに『ちゃんと愛してくれない』の…ゴミみたいな男ばかりだったわ…だからね、うふふっ『リヒトが真実の愛』を捧げてくれた…だから私、リヒトを愛することにしたのよ…嬉しいでしょう?多分、リヒトとならきっとSEXももっと楽しいと思うのよ…ねぇ一緒に気持ち良くなりましょう」
「確かに、リヒトとのアレは最高だけど…」
「レイラ余計な事言わないでくれ」
「やっぱり、そうなんだ…リヒト…ねぇ」
ヤバい…
これは真面目にヤバい。
男性経験が豊富な女性や人生の成功者の女性が…体の関係に虚しさを感じ『本当の愛が欲しい』とか言い出す奴じゃないか。
普通はこういう状態になんて、ある程度歳を重ねないとならない…何故こんな短期間になったんだ。
どうすれば良い…
駄目だ。
良い案は思いつかない。
「仕方ないな、リヒトくんを今日は貸してあげるから、試してみれば?」
レイラ?
レイラがなんでこんな事言うんだ…
「うふふふっ、そうね…」
もうどうして良いのか解らない。
35
お気に入りに追加
854
あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。
名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる