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第36話 変わり果てた女
しおりを挟む「リヒトくん、今日も楽しかったね」
「うん、そうだね!無理をしない討伐は…確かに無双できるから楽しいし…レイラは今日も女子会?」
結局、俺達はまだ、結婚した冒険者ギルドの街ダクダに居た。
ギルド婚をしたせいか、もうレイラの事を揶揄う者は少なくなった。
最近では良い意味でレイラは相談を受ける様になった。
「だけど2時間位で直ぐ帰るから…宿で待ってて、なんならシャワー浴びてても良いよ?」
顔を赤くしながらミニスカートを履いているレイラが可愛い。
「そうだな、良いや2時間位なら、少し手の込んだ料理でも作って待っているから」
「だったらビーフシチューが良いな」
「解った、ビーフシチューだな。了解」
最近のレイラは凄く女性に人気がある。
『どうしたら年下の男を落とせるのか』
『若い子と仲良くしたい』
そんな女冒険者の悩みの相談を受けるらしい。
尤も、レイラは答えられる訳もなく、ただの聞き役に徹しているだけなんだそうだ。
まぁ当たり前と言えば、当たり前だ。
レイラは俺と出会うまで恋愛その物をしてない。
俺に関しても、俺が憧れて告白したのだから…どう考えても恋愛相談は無理だな。
「それじゃ…リヒト気をつけて」
前から鬼気迫る表情で女性が走って来る。
誰だ?
白髪に病的な程青白い肌、目には隈が出来ていて、鎖骨が見える程痩せている。
まるで、病人か幽霊に見えるような女。
どこかで見た様な気がするが、解らない。
「リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒト、リヒトォォォォー――ッ」
誰だ…見覚えがある。
まさか、フリージアなのか?
「フリージアなのか?」
「リヒト可笑しいの…私が一体誰に見え…」
「おい…」
話の最中にフリージアは倒れてしまった。
仕方が無いな…
「リヒトくん、その危なそうな人誰?」
「聖女フリージア…なんだけど」
「これが『聖女』病気か何かなのかな? まるで、そのゾンビか病人に見えるけど…大丈夫?」
「流石に倒れたまま放って置けないから、一旦連れ帰るよ、なにかあったのかも知れないし」
「そうだね、それじゃ私も今日は女子会を中止にして帰るよ」
確かフリージアは勇者パーティを抜けて『救世』を選んだんだよな。
だったらこんなに窶れて居る訳は無いんだけど…何があったんだ。
取り敢えず俺はフリージアを背負い宿へ向かった。
体重が軽すぎる。
久々に背負った幼馴染はまるで子供の様に軽かった。
◆◆◆
「まるで死んだ様に寝ているね」
「そうだな…」
しかし、見れば見る程酷いな。
顔は気のせいか凄く老けた様に見える。
見方によっては30過ぎと言われても納得する位だ。
綺麗な銀髪は白髪の様に見えるし…白い肌は更に白くなり病的に見えた。
何よりも軽い。
流石にそんなことは無いが、おぶった時の体重は30キロくらいに感じた。
『綺麗なミイラ』
それが一番近いかも知れない。
聖女だから、回復のエキスパートなのに…
取り敢えず、ポーションを口から流し込み様子を見た。
「何かの病気なのかな?」
「いや、フリージアは聖女だから、それは無いと思う」
一瞬、疑ったのは性病だが、ロマンスクラブの相手は身元がしっかりしているからそれは無いだろう。
それじゃ他の病気なら…聖女に治せないのも可笑しい。
未知の病なのか?
取り敢えずは目を覚ましてからだな。
「だけど、この窶れかた尋常じゃ無いよ? 彼女はリヒトと同い歳なんだよね」
「同じ15歳だ」
「見えないよ…悪いけど私より年上に見える」
確かに肌はボロボロだし…
まぁ確かな事は起きてから聞くしか無いな。
◆◆◆
夜遅くなり、ベッドをフリージアに譲ったまま俺達が床で眠っていると、腰のあたりに重さを感じた。
「うん? なんだ…」
「リヒトォォォォー-愛しているよぉぉぉぉー-っ」
『鳥ガラ女』が裸で俺に馬乗りになっていた。
「フリージアー-っ!何やっているんだ!」
「リヒトくん!…何事?」
「なにやっているって…リヒト寂しかったんだよね…辛かったよね…だから、私が、私が癒してあげようとしてるの…大丈夫、すぐに気持ち良くしてあげるからね…うふふふっ」
「ちょっと!リヒトくんから離れて!」
レイラは素早くフリージアの後ろに回り羽交い絞めにして俺からフリージアをはがした。
「なにするの!おばさん…私は傷ついたリヒトを慰めようとしていただけだわ! 邪魔しないで…リヒトリヒト…今私が癒してあげる…だからこのおばさんに私を放すようにいってよ…ねぇ…愛してあげるから…ううん、愛しているから…」
狂っている…そうとしか思えない。
目が完全におかしい。
「フリージア、悪いけど縛らせて貰う。何があったかちゃんと聞くから…悪いな」
「うふふっ、リヒトって、そんな趣味があるの? 流石にそんな経験は無いけど、リヒトがしたいなら良いよ…」
一体なにがあったんだ…これじゃ聖女じゃなくて性女だ。
俺が別れた時は、真面だったのに…
「解った、話は聞いてやるから、もう暴れないでくれ」
「リヒトがそう言うなら…うん暴れない」
頭の可笑しくなったフリージアの理屈を仕方が無いから長い時間聞き続けた。
なんて事は無い…此奴が衰弱しているのは『お酒とSEX』に溺れたからだ。
食事も真面にしないで度数の高いお酒を飲んで、やる事やって…しかも不眠症になっていれば…確かに衰弱しても可笑しくない。
『衰弱』じゃ流石の回復魔法も効かないな。
それこそ、美味しい物食べて寝ていれば治る。
だが、よくも髪や肌がボロボロになる迄遊んだ物だな。
大丈夫か? カイト達は。
それは後で聞けば良い。
ただ聞くだけだがな。
「それで、なんで俺の所に来たわけ? 今の話だと『俺』は何も関係ないだろう?」
「うふふっ、だから、私リヒトと付き合うことにしたのよ…嬉しいでしょう?」
意味が解らない…何故そうなる。
「いや…俺ってモブだし! 美少年じゃないからフリージアの好みじゃないでしょう? ほら、今のフリージアなら、好みのタイプから選び放題…」
「そうね…確かに美少年じゃないわ…だけど、私はリヒトが良いの…嬉しいよね!」
怖い…なんだ、この目。
「いや、フリージアなら、聖騎士や貴族の美少年から選び放題、それこそ白薔薇の…」
「黙って…私はリヒトが良いのよ、うふふっ『身なんて引かなくて良いわ』沢山の男と寝たから解るけど…本当に他の男って薄っぺらいのよリヒトみたいに『ちゃんと愛してくれない』の…ゴミみたいな男ばかりだったわ…だからね、うふふっ『リヒトが真実の愛』を捧げてくれた…だから私、リヒトを愛することにしたのよ…嬉しいでしょう?多分、リヒトとならきっとSEXももっと楽しいと思うのよ…ねぇ一緒に気持ち良くなりましょう」
「確かに、リヒトとのアレは最高だけど…」
「レイラ余計な事言わないでくれ」
「やっぱり、そうなんだ…リヒト…ねぇ」
ヤバい…
これは真面目にヤバい。
男性経験が豊富な女性や人生の成功者の女性が…体の関係に虚しさを感じ『本当の愛が欲しい』とか言い出す奴じゃないか。
普通はこういう状態になんて、ある程度歳を重ねないとならない…何故こんな短期間になったんだ。
どうすれば良い…
駄目だ。
良い案は思いつかない。
「仕方ないな、リヒトくんを今日は貸してあげるから、試してみれば?」
レイラ?
レイラがなんでこんな事言うんだ…
「うふふふっ、そうね…」
もうどうして良いのか解らない。
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