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第34話 私が癒してあげるから 聖女SIDE
しおりを挟む私は、いま衝撃を受けている。
リヒトの行方を追う為に冒険者ギルドへ依頼を掛けたのよ。
情報を集めたのよ…嘘でしょう…
リヒトは…私達と別れた後、奴隷を買ったそうだ。
最初、若いエルフの奴隷でも買ったのかと思った。
エルフじゃ無くても若い子。
そう思ったの…だってリヒトだって高ランク冒険者。
私達のパーティの手伝いをしながらお金も溜めていた。
だから、エルフは兎も角『若い子が買えない』わけが無い。
だが、リヒトが買ったのは28歳の女としては終わっているおばさんだった。
名前はレイラ、元勇者だそうだが、今の勇者はカイト。
つまり、もう勇者の能力は無い。
しかも片手、片足の体の不自由な女。
一体何があったの?
絶望でもしたのかな?
可愛そうなリヒト…
よく考えたら、リヒトは小さい頃から1人だった。
両親を早くに亡くし…1人ボッチだった。
そして幼馴染の私達は…カイトとばかり居た。
『あれ程優しく良い人』だったのに。
もし、あの日に戻れるなら、あの時私を殴ってやりたい。
幼い時。
カイトと一緒に居た時。
カイトとイチャついて居た時。
そしてロマンスクラブに居た時。
その全ての自分を殴り飛ばし…リヒトの傍に居ろと怒鳴りたい。
可愛そうなリヒト…母親の愛を知らないから、そんな年老いた草臥れた女を買ったの?
傷ついたから…ううん、私達が傷つけたから…寂しいリヒトを更に絶望させ…孤独に追い込んだから…
だから、寂しさから、そんなゴミを買ったんだね。
そして、人生に疲れたから南へ進んでいるんだね。
『より安全で、平凡な場所に』
そうか…凄く傷ついているんだ。
リヒトの腕なら、そこ迄南に行く必要は無いんだから。
『もうきっと全てが嫌になっているんだよね』
だったら私が癒してあげる。
ずうっと傍に居てあげる。
孤独な心、傷ついた心…全部、全部癒してあげる。
私は聖女…フリージア。
癒す事ならきっと誰にも負けない。
◆◆◆
私は勇者パーティから外れたから『勇者パーティ』の特権は使えない。
だけど、聖女の特権は使える。
だから…冒険者ギルドへ依頼をする事にしたの。
「今すぐ、空竜艇を用意して下さい」
「空竜艇でございますか?」
「そうよ、より速い物を…支払いは聖教国でお願いするわ」
これなら…直ぐに追いつくわ…リヒト。
私が…癒してあげるから…そうしたら…死ぬまで一緒に暮らしましょうね。
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