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第26話 更に南へ
しおりを挟むレイラとの生活を楽しみながら、更に南へと向かっている。
まだまだ、聖教国リキスタンは遠い。
それでも、もう強い魔物には余り出会わなくなってきた。
今現在この辺りで出会う魔物で一番強いのはオーガだ。
明らかに今迄とはランクが違う。
この辺りの魔物なら最早、俺やレイラなら余裕で無双できる。
それでも一度狩りに出れば金貨10枚(約100万円)は稼げるからお金には不自由していない。
簡単に言うなら今迄の地域がゲームで言うとレベル60位のプレイヤーがようやく戦える地域だとするなら、今いる地域はレベル45位のプレイヤーが余裕をもって戦える地域。
そんな感じだ。
「かなり南に進んで来たね」
「ああっ、まだ聖教国リキスタンは遠いけど、この辺りでも魔物は弱いし魔族は殆ど見かけたことは無いって話だからまずは安全だな」
「そうだよね! この辺りならもう私達なら余裕で倒せる魔物ばかりだよ…ひとまずは安全だね」
これで一安心だ。
カイト達勇者パーティは北に向かっている。
俺達は南に向かっているから距離はどんどん離れていっている。
もう今後の人生で会う事は無いだろうし、連れ戻しに来ることも無いだろう。
きっと、俺が彼らの消息を知る時は、彼等が栄光を掴んでいる時か破滅している時だ。
「そうだな」
「それで、これからリヒトくんはどうするの?」
「俺の夢は半分叶ったから、此処からは残り半分の夢探しだな」
「あの…叶った夢って…それ私かな?」
「当たり前じゃない?。俺の夢は5歳から変わらない。レイラと甘い生活を送る事だったんだから…」
「あーあっ…凄く嬉しいけど、本当に凄いね。こんなおばさんになっても」
「レイラ」
「あっゴメン、だけど10年間も好きで居てくれたなんて未だに信じられないよ…こんなに永く愛して貰えたなんて凄く嬉しいよ」
レイラ程の美人は前世も含めて会ったことは無い。
芸能人やアイドルだって恐らく此処迄スタイルが良い人間は居なかった気がする。
魔族に勝てず負けて奴隷になってしまったが『人間としての生き方』もカッコ良かった。
それだけじゃない
俺は早くに両親を亡くした。
前世の記憶があるとはいえ、精神は体にかなり引っ張られるのか『凄く悲しかった』
そんな時に会ったのが『勇者レイラ』だった。
10年たった今でも、あの時に慰めて貰った記憶は残っている。
これで憧れるな、好きになるなって方が難しいだろう。
しかも、今のレイラは、あの時以上に俺の理想の年齢で美人なんだから。
あれっ…10年前ならレイラは18歳だ。
あの時でも前世の記憶はあったよな。
自分の中身が30歳~45歳の中年だと意識しだしたのはいつからだ?
18歳のレイラに恋をしたという事は、あの時はまだ精神より体に引っ張られていたのかも知れない。
今は…最低でも20歳、出来たら25歳以上が理想だ。
「俺は少し変わっていて、今位のレイラの歳の方が好みだ。18歳の時のレイラも魅力的だけど、今のレイラの方が更に女性として磨きが掛ったと言うか、凄く魅力が増した様な気がするよ。だから10年間好きで居たというより、10年掛けて『更に好きになった』というのが正解かも知れないな」
「リヒトくん…リヒトくんは本当に私の事、好きすぎだよね!リヒトくんのせいで、いつも顔が真っ赤だよ!」
そう言いながらレイラは絡めていた腕を更に引き寄せてきた。
今迄でも胸が当たっていたのに、更に強く押し当てられた状態になった。
「レイラ」
「リヒトくん、これが嬉しいんでしょう? 最近解ったんだよね。それと今夜もまた『私頑張るからね』楽しみにしててね」
「うん」
体に精神が引っ張られるのか、どうも最近レイラに押されっぱなしな気がする。
後は残り半分の夢...レイラと一緒に幸せに暮らせる場所を探す。
それだけだな。
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