22 / 67
第22話 変わるレイラ
しおりを挟む「リヒトくん! おはよう!」
え~と『くん?』一体どうしたと言うんだろう?
「え~とレイラ『くん』ってなぁに?」
次の街まで来て宿屋に泊まったんだけど、レイラの様子が可笑しい。
いや…いい意味で。
「年下の男の子は『くん』ってつけて呼んであげると喜ぶって聞いたのよ。それで試してみたんだけど…駄目?」
「駄目じゃないし、寧ろ嬉しい…」
「そう良かったぁ」
寝起きにいきなりこれは強烈すぎる。
うん?
「所で、一体いつからレイラは俺を見ていたの」
ここはベッドだ。
「え~と、大体3時間位かな? 目が覚めてからずうっと見ていただけだよ!」
「3時間? ずうっと?」
「うん、ずううっと今迄、いやぁ、リヒトくんって幾ら見ても飽きないね。結構、表情が変わるし幾ら見てても、楽しいよ」
3時間も俺の寝顔を眺めていたのか。
確かにこの間告白はされた。
『大好き』って言って貰えて嬉しかった。
だけど、何故此処迄好かれたのか解らない。
「そうかな? 俺なんか見てても、楽しくないだろう?」
「そんな事無いよ!何度も言うけど、リヒトくんは幾ら見てても飽きないよ」
面と向かって言われると照れる。
「そう、ありがとう」
「あはははっ、リヒトくん、顔が真っ赤!可愛いね」
ううっ、凄く嬉しいけど、こうも言われ続けると凄く照れる。
「一体レイラどうしたんだ…その」
「私ね、もう決めたの! 年上だからとかおばさんだからと言う、言い訳はもうやめる事にしたのよ!色々考えて自分の気持ちに素直になる事に決めたわ」
「素直になる事に?」
「そうよ!こうも好きだって気持ちを、ぶつけられていたらもう仕方ないじゃない?私が28歳でリヒトくんが15歳、どう考えても親子位年が離れているのに好きなんでしょう? 親子とか家族とかじゃなくて恋人として」
「そうだよ。俺は1人の女性としてレイラが好きだ」
「それなら、もう言い訳はやめて素直に受け入れようと思ったのよ。周りは関係ない。これはリヒトくんと私の問題だわ」
◆◆◆
【回想】
狩に行くのはリヒトだけ。
私は奴隷なのに、何故かお小遣いを貰って自由にさせて貰っているわ。
しかも金貨3枚も渡されて、どうしろって言うのよ。
今迄、遊んだ事が無いから使い道が解らないわ。
果物を持った女性から声を掛けられたの。
「今日は何時もの子は一緒じゃ無いのかい?どうだいお土産にリンゴでも如何?」
「いや…あれはその、子供じゃ無くて」
私は何を話しているのかな。
果物売りのおばさんに。
「あはははっ羨ましいじゃないか? 実の子供だって糞ババア呼ばわりされる年齢なのに『恋人』だなんて。羨ましい限りだね。若いツバメを捕まえて羨ましいかぎりだ!」
羨ましい…私が?
「羨ましいですか…」
「そうだよ! その歳で女扱いして貰えるんだ、女として最高に幸せじゃないか! 惚気ならまた聞いてやるから…ほらリンゴ5個買っていきな」
「はぁ、頂きます」
気がついたらリンゴを買わされていたけど、まぁ良いわ。
他に何かやる事も無いし、夕方までリヒトは帰って来ない。
仕方ないから、久々にギルドに併設された酒場にきたのよ。
尤も私は食べる方でお酒は飲まない。
肉料理を頼んでガッついていたけど…リヒトの料理の方が遥かに美味しいわね。
「なぁ、ちょっと此処良いかな?」
沢山席が他に空いているのにわざわざ私の所に?
なにか用なのかな。
「別に構わないけど、どうして?」
「いや、私はミランダって言うんだけどさぁ、アンタら凄く仲良さそうだからさぁ…情報でその『本当の親子』じゃないんだろう? なにか親子円満の秘訣でもあるのかと思って」
「うちは親子じゃなくて『恋人』扱いを私がされているだけだけど?」
「マジ? あんたどう考えても私と変わらない歳だよね」
「28歳…」
「やっぱりそうだ。私なんか旦那からも女として見られていないし、息子も冒険者やっているけど、一緒に行動なんてしてくれないんだ…それが恋人ねぇ…はぁ、もしかして童顔なだけで結構な齢なのかな」
「リヒトは15歳だけど?」
「15歳? どうしたら28歳の女が15歳の少年口説ける訳? コツがあったら教えて」
コツも何も、奴隷として買われて、そのままなんだけど…
「いや、コツと言われても、困るよ。何もしていないから…」
「はぁ~羨ましいね。こんなチャンスは2度とないから大切にしてあげるんだよ」
「そうだね…ありがとう」
今迄も自分の境遇が凄い…そう思っていたけど。
他の口から言われると凄く恵まれているのが解るわね。
確かに30歳近ければ、親子であってもウザがられている光景を見たことがあるし、夫婦であっても手すら繋いで無い。
まして普通は『恋愛』相手なんかに考えるわけが無いわ。
冒険者や騎士の中には歳とって婚姻相手が居ない女性が『お金で美少年の奴隷』を購入する。そんな話も聞いた事もある。
それが『本当に愛して貰えているし』買われたのは私だわ。
凄く恵まれている。
『好き』とか『大好き』だけじゃ申し訳ないよね。
本当に大切にしてあげなくちゃ。
こんなおばさんでも『好き』だっていったのはリヒトだし。
リヒトは堂々と私を『どこでも好き』だというんだから…
うん、もう照れるのはやめよう。
堂々と好意を示してあげる。
多分喜んでくれる筈。
それで良い筈だよね…リヒト…
◆◆◆
「そうだよ、俺とレイラの問題だよ」
「そうだよね!だから私はもう恥ずかしいとか照れるのは辞めようと思うの。リヒトくんは気にしないし、人前でも恋人として振舞って欲しそうだから全力でそうする事にしたのよ」
「ありがとう、嬉しいよ」
「リヒトくん、私に火をつけたんだから、知らないわよ?」
俺が望んだ事だから、喜ぶ事はあっても後悔は無いな。
37
お気に入りに追加
855
あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【石のやっさん旧作】『心は』●●勇者…さぁ勇者褒美をとらす! 欲しい物をなんでも言うが良い! 「はい、では●●●で!」
石のやっさん
ファンタジー
主人公の理人(りひと)はこの世界に転生し、勇者に選として、戦い続けてきた。
理人は誰にも言っていなかったが、転生前は42歳の会社員の為、精神年齢が高く、周りの女性が子供に思えて仕方なかった。
キャピキャピする、聖女や賢者も最早、子供にしか見えず、紳士な彼からしたら恋愛対象じゃない。
そんな彼が魔王を倒した後の物語…
久々の短編です。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる