18 / 67
第18話 レイラ…心の旅
しおりを挟む「お前は何者だ…」
得体の知れない男が目の前に突如現れた。
賢者ジャミルと聖女リリアが飛び出した。
相変わらず功名心が強いわね。
だけど、この辺りに居る魔族なら、二人が負けることは無いわ。
また、今日も帰ってから二人にマウント取られるのか…ハァ。
「アンタら勇者パーティですね? 名前は名乗りません。ただの魔族です」
「ふっ生意気な、魔族なら死ね。僕の呪文で焼け死ぬが良い!灼熱バースト」
賢者ジャミルが放つ最強呪文。
それを受けて傷ひとつなくその魔族は立っていた。
「不味いです。ジャミル様!」
「無傷だと!不味いな、此処は逃げるしかない。リリア逃げるぞ」
「はい!」
「駄目、ジャミル、リリア、相手に背を向けたら…」
「煩い、レイラ、お前は勇者だが平民だろう? 僕を助けろ!」
「そうよ、貴族のジャミル様の命は貴方達と価値が違うわ」
賢者ジャミルに聖女リリアが敵に背を向けて逃げようとしていた。
不味い、このままじゃ追いつかれる。
「仕方が無いよレイラ!ジャミルは公爵家の人間だから、行くよ!」
「そうね、飛び込むしかないわ、時間を稼いだら私達も逃げるわよ!」
「了解した」
ジャミルとリリアにまさに魔族が追いつくその瞬間、間一髪、私と剣聖ソーダスが斬り込みに入ったが…
「ああっ…あああああぁぁぁぁぁっ、嘘だわぁぁぁ」
ぴちゃぴちゃ…
ドサッ。
私の横に剣聖ソーダスの首がふってきた。
「ソーダスー―――っ!」
「嫌だ嫌だ、僕は死にたくないんだー――っ」
「えっ…ジャミル様」
「お前が盾になれよー――っ」
私の横を魔族が走り抜けていった。
この私が反応すら出来ないなんて…
「そんな、ジャミル様ぁぁぁぁぁー――っ」
「くふふふっ、人間なんて盾にしても無駄ですよ」
そんな。
目の前に上下に真っ二つになった二人の死体が転がってきた。
「これが勇者の奥義…」
「遅い…」
私の右足が…
「おのれー-っ」
「だから、遅いよ…剣を持っている方の腕は残したけど? もう戦えないだろう? 死にたく無ければ逃げるんだな…」
「ハァハァハァ」
今の私にはもう戦う事は無理だ。
動く事も出来ない。
「何が勇者だ…ダダのゴミだな…もう殺す気にもならねー頑張って生きるんだな」
私は…勇者なんかになりたくなかった。
◆◆◆
「背中に沢山の傷がある…これがレイラが仲間を捨てて逃げようとした証拠です」
「違う…私は」
「違わない、その背中の傷がその証拠だ。しかもお前が見捨てた賢者ジャミル様はトード公爵家の人間、古くは王に所以のある方…本来なら死刑なれど、勇者に死刑は無い。投獄90日の後『犯罪奴隷』にするものと処す」
「私は…」
「黙れー――っ!お前の言う事など聞きたくも無い」
なんで、なんでこうなるのよ。
私は勇者なんかになりたくなかった。
それでも頑張って沢山の人を救ってきたのに…
◆◆◆
此処は何処なの? 暗くて周りが見えない。
「バルチール牢獄へようこそ…」
明かりが殆ど無く何も見えない。
なんで私はこんな場所に居ないといけないの?
ひもじい、寒い…喉が渇いた…助けて。
沢山の人を助けてきたのに…たった一度の失敗でこれなの。
騎士だって兵士だって負けても罰されない。
なんで私だけが…罰されるの。
◆◆◆
『幾ら元勇者でもこれじゃ売れないだろう』
『別に売れなくても良いみたいだ。主催者の話では『元勇者』が売りに出されるだけで人寄せになる…それに売れ残り『廃棄』となればようやく勇者が殺せるからな』
『売れてもあの面で手足が無いゴミみたいな女、真面に扱わないだろう?そこには地獄しかない。どっちにしても地獄だな』
ううっ…大丈夫きっと誰か買ってくれる。
「お待たせしました、本日最後の出品! 知らない者は居ないでしょう! 犯罪奴隷レイラぁぁぁぁー――金額は銀貨5枚からだぁぁぁぁー-っ」
見た瞬間に皆が去って行く。
…誰も助けてくれないの…
『私は皆を助けるために頑張ったのに助けてくれない』
『銀貨5枚――っ』
1人だけ...1人だけが私を助けようとしてくれた...のかな。
◆◆◆
「そうかな? レイラは凄く綺麗だと思うよ!それは今も変わらない!」
「俺にとってのレイラは理想の女性だ、それは今も昔も変わりないよ。だけど、後の事は此処を出てから話そうか?」
真っすぐな目。
凄く優しい目で話す男の子。
「レイラは顔の傷や、手足を気にしているかも知れないけど、俺はそこ迄気にならない。勇者だったから解らないかも知れないけど、普通に冒険者をしていれば、怪我する事もあるし命すら落とす事だってある…そう珍しい事じゃない」
こんなゴミみたいな私を好きだという男の子。
地味だけど凄く可愛いく綺麗だ。
だけど、こんな夢みたいな話は信じられない。
「髪が凄く綺麗だし、手足はすらっととして綺麗、それにその瞳、凄く神秘的に赤く…」
あーあ。
綺麗だなんておばさんだよ、私…おかしいよ綺麗だなんて。
顔が赤くなっちゃう。
「レイラコンプレックス…だからレイコン」
あはははっ凄いよねリヒトはこんなおばさんが好きなんだって。
手足が無い時に介護覚悟で買ったんだから…もうどれだけ好きなのよ。
しかも10年も前から好きだったようだし…凄いよね。
「いや、これが普通の対応だよ。俺達は冒険者だから、報酬無くして人を助けることは無い。俺が無償で助けるのは、大好きなレイラだけだよ」
『俺が無償で助けるのは、大好きなレイラだけだよ』
もうどうして良いか解らないわ。
リヒトって私の事好きすぎでしょう。
此処迄思いを寄せられたことは無いわ。
私もリヒトが好き。
うん、凄く好き。
大好き。
解かっちゃったよ。
もう齢の差なんて気にするのは止めよう。
大体、こんなおばさんでも好きだって言ったのはリヒトだ。
もう何も気にしないわ。
あははははっ『だってリヒト以外どうでも良い人間』だもん。
『私は沢山の人を救ったけど、私を救ってくれた人はリヒトだけ』なんだから、それで良いよね。
◆◆◆
「レイラ…レイラ…」
「あれ? リヒト?」
「なんだかうなされていたけど大丈夫?」
「あはははっ余りに気持ち良くて眠っちゃったみたい」
「そう? それなら良かった」
「ねぇねぇリヒト」
「どうしたの」
「大好き!」
「えっ」
「だから、大好き!」
「俺もだよ!」
「嬉しい」
凄く綺麗な笑顔で言われて顔が赤くなった。
凄く嬉しいけど、一体どうしたんだろう。
37
お気に入りに追加
854
あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。
名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる