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第14話 自分達さえ良ければそれで良い
しおりを挟む「こんなの買って貰って良いの?」
「これ位なら大丈夫だ」
今、俺達は武器屋に来ている。
レイラの黒い手足が目立つから、左手と右足には全身鎧から、その他のパーツは軽装鎧から取って貰い2つを組み合わせして特別に作って貰った。
これなら、普通の義手と義足に外さなければ見えるし、不自然じゃない。
ビキニアーマーとか来て欲しかったが拒否されてしまった。
「少し割高になるが兄ちゃんの要望通りだろう?」
何処かのアニメでもこんな感じのキャラクター居たな。
その位似合っているから『これで充分だ』
「はい、これで宜しくお願い致します」
代金を払い、武器屋を後にした。
『しかしあの親子仲が良いわね』
『大きくなっても、母親と手を繋いでくれる息子。羨ましいわ』
『自慢の息子なんでしょうね』
『あれ、マザコンじゃないのか』
『良い歳した男が母親と手を繋ぐかぁ…キモイな』
「あはははっ、なにショボくれているの? 元から解っていたでしょう?」
確かにレイラは背が高いから余計にそう見える。
「母親じゃ無くてー-っ! 恋人です!」
周りに聞こえる様に宣言した。
「リヒト…恥ずかしいって、止めて」
「良いの、良いの」
『嘘、あんなおばさんがあんな若い子と付き合っているの?』
『多分、お金目当てじゃ無いのかな』
『いや違うわ…だってあの人リヒトだよ』
『嘘、あのリヒトがババコン?』
『一体何があったんだ』
俺はその声を聞きながらレイラの手を引いて、他の店に飛び込んだ
◆◆◆
買い物が終わり宿に戻ってきた。
「これで必要な物は全部揃ったし何時でも旅立てるな」
「しかし本当に、魔族と戦うのが嫌いなんだね」
「嫌いというわけじゃ無いけど、関わりたくないだけだよ。関わっても何も良い事が無い事はレイラが良く解っているんじゃない?」
「強いし危ないし、確かに魔物とは桁違いだよね」
「そうだよ!オーガやワイバーンなら負けそうになったらその場から逃げ出せば良いけど、魔族はしつこい。場合によっては、ずうっと付け狙ってくる。あんな危ない奴とは関わりたくない。だから逃げる」
「それ真面目に言っているの? 誰かが魔王と戦わないと世界が大変な事になるのに」
いや、それは無いな。
「多分それは無い。実際にレイラが負けても影響は余り無いだろう。戦っているのは一部で大方の人間は街で幸せに暮らしている。それに次に魔王と戦う相手は俺の幼馴染のカイトだ。もうレイラじゃない」
「幼馴染は助けないで良いの?」
「例えば…そうだな、レイラは『ただの友達』の為に命って捨てられる?」
「私? 今は解らないよ」
多分勇者時代のレイラなら『助ける』だったんだろう。
だが、あれ程酷い思いをしたから『解らない』に変わったのだろうな。
「俺は、確かにカイトは幼馴染だし友達だよ。だけど『友達』なだけだ。命掛ける程の友情は無いな」
確かに友人だし、友達ではある。
だが、同じ村で生まれた、只の遊び友達の為に命なんて張れない。
俺にとっては幼馴染の中に好みの女の子は居ない。
だが、全員を口説いてハーレムを作りマウント取っていたし、半分俺を見下していた奴。
そして、その彼女達。
それが、カイト達との関係だ。
『親友』そこまで深い関係じゃない。
年齢差(精神の)で甥っ子や姪っ子みたいに思い『可愛らしい』とは思ったがそれだけだ。
本物の甥っ子や姪っ子じゃないんだから、命まではかけられないな。
「そういう物なの?」
「まぁね。それに俺は早くに両親を亡くして村で手伝いしながら生活していたから、子供の頃から偶にしか遊んでなかったしな」
「確かにそれじゃ、そうなるのかな?」
「それにレイラは身に染みているだろう?」
レイラは勇者として世界の為に戦っていた。
その結果、負けた途端に『全ての責任を押し付けられて奴隷落ち』だ。
もし、レイラを救おうという人間が居る。というのなら、あのオークション会場で俺と競り合う人間が居た筈だ。
俺は捻くれているのかも知れないが『自分達を救おうともしない』そういう人間がどうなっても構わない。
そう思っている。
幼馴染だってそうだ。
もし俺の体が不自由になった時にカイト達が俺の世話をするかと言えば『絶対にしない』もちろん相手がそうだから、俺だってそんな事はしない。
『だから付き合いはあそこで終わりで良い』
「そうね、確かに助けてくれたのはリヒトだけだもんね」
「だから俺達は今後『自分達さえ良ければそれで良い』そういう生活をしようと思う」
「凄いね…思っていてもなかなか言えないよ…それ」
「別に誰かに言うことは無いけど、レイラにだけは伝えたかっただけだよ」
「うん…解った」
これで良い筈だ。
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