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第11話 黒い手足
しおりを挟むなんだか、凄く良い匂いがする。
それに凄く柔らかい物に包まれて…
ふよふよして…凄く柔らかい。
目が覚めた。
俺は今…レイラの右手で惹きつけられて抱き着かれていた。
15歳の俺とレイラ…簡単に言うと中学生と背の高い女性。
う~ん。
本当は逆だとカッコ良いんだけどな。
体格差は仕方ない。
もう少し成長すれば…多分大丈夫だ。
ミルクでも飲もうかな。
暫く、抱きつかれたまま感触を味わっているとレイラと目が合った。
「おはよう」
「はい、おはようって…なんだい、顔を真っ赤にして…ああっこれね!あははははっそんなにいいもんじゃないだろう? なんなら触ってみる? そうしたら夢も希望も無くなるだろう?若い子と違って大きくて形も良くないし…」
いや、若い子の小さな胸に俺はようが無い。
胸は大きい方が俺の好みだ。
「いや、俺はレイラ位の大きさが好きだから」
「そう? なら好きな時に別に触る位ならしても良いよ?」
「いや、それは、そのもう少ししてからで良い」
「まぁリヒトがそれで良いなら良いんだけど。奴隷オークションに参加する位なのに随分初心なんだね」
「レイラだって年齢=処女だろうが?」
「あはははっ、確かにそうだ!だけど、それはリヒトも同じだよね?」
「俺は(前世で)豊富に経験がある」
「あはははっ、嘘は言わないで良いよ! 勇者パーティに入っていたんだから、そんなわけ無いよね?」
確かにこの世界じゃ新品だよ。
何故かレイラにニマニマされさながら、俺はレイラを着替えさせた。
◆◆◆
「美味しい…リヒト、さっきもの着替えもそうだけど、家事から介護まで、本当に上手だね」
小さい頃に両親の介護を僅かだけど経験したし、前世も若干経験した様な気がしないでもない。
それにカイトのパーティでは雑用は全部やっていたから慣れだな。
「まぁ、経験者だからね」
「それで今日はどうするの?」
「そうだな、まずはギルドに行ってレイラとのパーティ登録をして、その後は義手と義足について聞いてみようと思うんだ」
「あの、何度も聞いて悪いと思うけど? なんで私を買ったのかな? 「『元勇者』がオークションにかけられる」だから会場に来た。此処迄は解るよ。小さい頃に会って、その私に憧れていたならね…だけど今の私を、態々買うかな? しかも今迄の話だと義手や義足まで買ってくれるんだろう?」
「また、同じ話になるからね『レイラが俺の好み』だから。取り敢えずこれで終わり。それじゃ支度しようか?」
「そうだね…」
レイラは『何故買ったのか?』しつこく聞いてくるけど、真面目に、好みだったから買ったとしか言えない。
『憧れる位の美人のお姉さんが売られたから買った』
それ以上でもそれ以下でもない。
だから、本当に返答に困る。
そろそろ納得してくれないかな。
俺は自分とレイラの身支度を整えて冒険者ギルドへ向かった。
◆◆◆
「ようこそ冒険者ギルドへって…貴方はリヒト様ですね、今日はどう言ったご用件でしょうか?」
《ねぇねぇ、あのオンブしているのってお母さんかな?》
《冒険者ギルドにお母さんオンブして来る》
《リヒトって孝行息子だったんだな》
聞かない事にした。
これでも勇者パーティだから、そこそこ顔は売れている。
身バレをすぐにするのは仕方が無いな。
「まず、確認したいんだが、俺は『黒羽の翼』を抜けたんだがその手続きは済んでいますか?」
「え~と勇者パーティから抜けたんですか?」
「はい」
「まだ手続きは済んでいないようですが…」
やっぱり、あいつ等はズボラだな。
「そうですか、それなら、その手続きをお願いします」
「ですが、リーダーのカイト様が許可した証拠が無いと出来ません」
「それなら、こちらの記録水晶を確認願います」
あぶねー。
やはりこっそりと記録を取って置いて良かった。
あいつ等書類仕事嫌いだからな…
何となく後回しで、すぐにしない気がしたんだよな。
良く、4人とも『そんな事言っていない』と文句を言うから、記録に残す癖がついていて良かった。
「これなら問題無いですね。これで手続きをさせて頂きます。それでは冒険者証をお願いします」
「ついでにレイラとのパーティ申請もお願いします」
「えっ、レイラ…そのおぶさっている方がレイラさんですか?」
レイラは俺以上の有名人の筈だが、何故知らないんだ?
「そうだけど? もしかして知らなかった?」
「いえ、知ってはいますが…まさか此処に来るなんて思わなくて結びつきませんでした。確か『犯罪奴隷』でしたね。解りました。リヒト様の奴隷として登録致します。今しばらくお待ちください」
「頼みます。それでこの辺りで義手や義足を販売しているお店はありますか?」
「ああっ、それならこのギルドで紹介していますよ? 良かったらお話してみますか?」
「それじゃお願いします」
「はい、手続きは以上です。 それではサロンでお待ちください。すぐに専門家を伺わせます」
◆◆◆
「久しぶりのサロンだわ、うんうん此処に来ると選ばれたって感じだね」
「確かに、まぁ勇者パーティは抜けても一応は高ランクではあるからな。尤も今回はお客だから、それを抜きにしても此処で話しをすると思うよ」
「確かにそうだね…だけど義手や義足は結構高いと思うけど、良いの?」
「構わないよ。必要な物だからね」
「お待たせしました」
そう言うと背の低い男が気弱そうな男を連れて入ってきた。
気弱そうな男が幾つかの荷物を抱えているから、助手なのかも知れない。
「宜しくお願いします」
「それでどんな義足や義手が欲しいんだ? 着けるのは横の姉さんで良いんだよな?」
「どんな物が良いかが解らないから、色々見せて欲しい。着けるのは横に居るレイラで間違い無い」
「素材を決めてから、採寸して作っていくんだ。」
「それじゃ完成まで結構な時間が掛かりそうですね」
不味いな。
万が一、カイト達に連れ戻されると困るから、出来るだけ早く南に向かいたいのに、暫く足止めか。
「まぁな、簡単な物で4日間、複雑な物なら1か月は掛かる。当たり前だろう?」
「確かにそうですね。値段は張っても構わないので良い物が希望なのですが、時間がなぁ~」
何だか背の低い男の目が光った気がした。
「あるぜ、待たずに済む最高の義手と義足」
「あるんですか?」
「あるとも、最高の物がな」
「それはどう言った物でしょうか?」
「見て見るかい?」
男が見せた物は瓶に入っている黒い液体で、どう見ても義手や義足には見えなかった。
「薬品ですか?義手にも義足にも見えませんが」
「正確には義手でも無いし義足でも無い、正しくはエリクサールの失敗作だ」
エリクサール?
世界に10本しか現存しない最強の治療薬。
確か聖教国の教会が8本、他は各国で1本ずつしか無く王族ですら使うのは難しいと聞いたことがある。
「エリクサールですか?」
「その失敗作だ。10年位前の話だ。エリクサールを人の手で作れないかと考えた男が居てな…その男が作ったのがこれだった」
「それで…効果はどうだったんですか?」
「確かに『完全ではないが多くの病気は治った』だが四肢欠損の患者に使った時に生えたのは黒い手足だった」
「黒い。それだけですか?」
「それだけだ」
「そんな凄い物なら、なんで普及していないんですか?」
「エリクサールを作ろうとしたのが女神への背信行為と取られ、男が処刑されたからだ。だからこれが最後の1本。どうだい買うかい?」
「レイラはどう思う? これはレイラの問題だからレイラが決めて良いよ?」
「私は、色が黒くても、自分の手足になるなら欲しい」
「解った。これは貴方達に譲るとしよう」
「それで代金は幾らでしょうか?」
「代金は@*wa;kewaka@rannだ」
「えっ、それは一体….」
なんでだろう。急に眠たくなってきた。
◆◆◆
どうやら少し眠ってしまったようだ。
レイラは…無事に黒い手足がついているようだ。
しかし俺もレイラもなんで寝ていたんだ。
黒い手足か?
これはこれでカッコ良い。
悪くない。
「リヒト様、お待たせしました。義肢装具士の先生をお連れしました」
「えっ?」
それじゃ一体レイラの手足は誰がくれたんだ。
幾ら考えても解らないな。
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