勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)

石のやっさん

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第7話 お風呂

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「かなり、うなされていたから起こそうとしていたんだ」

「そう、ありがとう…私、今でも目を瞑ると仲間が殺されていく姿や自分が無力で真面に戦えずに手足が斬り落とされ、動けなかった私を見てあざ笑う魔族を思い出すのよ」

普通に生きていて、これ程の恐怖はまず味わない。

トラウマになるのも当たり前だ。

「怖い思いをすれば、忘れられないのは当たり前の事だよ」

「だけど、そのせいで、今でも、体が恐怖で動かなくなるのよ…多分、手足があったとしても…恐らくは戦えない」

目の前で仲間が殺されて、それを助けられず、自分は手足を失う。

体が戦いたくないと拒絶するのも当たり前だ。

だが、それで、何故生き残れたのか解らない。

レイラ以外が皆殺しにあい、レイラは無力化されている。

その状態で…何故生きて帰ってこられたんだ?

「…あの」

一瞬目を逸らしてレイラがポツリとつぶやいた。

俺が何を言いたいのか解ったのか、レイラが話し始めた。

「…見せしめだって…全員殺すより…ううっ…惨めな私を晒す事で…だから私…」

レイラはそう言うと、泣きそうな顔で毛布をとり背中を見せた。

背中にも沢山の傷があった。

「片足、片手になって戦えない私を…」

◆◆◆

「ふはははっ、逃げろ、逃げろ、逃げろー――っ」

「ううっ…」

仲間を殺され、片手片足になり、戦意喪失したレイラはひたすら逃げた。

だが、その魔族はレイラを追い回し、捕まえると背中を斬りつけた。

「きゃぁぁぁぁー――っ」

「はら、逃げろよ…逃げきれたら助けてやるから」

「ハァハァ…助けて」

「ほらチャンスはやっただろう? 頑張って逃げるんだな」

「嫌ぁぁぁぁー――っ」

背中に傷が無数についた時…ようやくレイラは解放された。

「何が勇者だ…ダダのゴミだな…もう殺す気にもならねー頑張って生きるんだな」

そう言い残すと…魔族の幹部は去ったそうだ。

◆◆◆

「何故、魔族の幹部はそんな事を…」

「解らないの?」

そうか…そう言う事か?

仲間が殺され、背中に無数の傷がある。

その傷なら誰もが考える。

『仲間を見捨てて逃亡した』と。

「逃亡したように見せかける為か?」

「本当の理由は解らないけど、私もそう思うわ!」

そして…その魔族の考えは正しく、レイラは『逃亡勇者』として地獄の様な日々を過ごし犯罪奴隷になった。

「俺達が思っている以上に狡猾な魔族が居るんだな」

「でもね、あの魔族の策は見事だわ…まぁこの歳だし、手足が欠けて顔に傷があるから、凌辱みたいな事はされ無かったけど、扱いは家畜みたいな物だったわ…投獄されて、食べ物も碌に与えて貰えず、最後にはあのオークションよ…恐らくあそこで落札されなければ『廃棄』されて処分されていたわ」

壮絶過ぎて何も言えないな。

「そうだな…」

「そうよ…皆の為に頑張っていたのに最後はこれよ! もしかしたらあそこで落札されないで『廃棄奴隷になって死んでいく』そこまで仕組まれていたかもしれないわね。うふふふっ笑えるでしょう?魔族だけじゃなく、たった1回の失敗で人間からも嫌われちゃったんだよっ!わたし」

この位の事は想像がつく。

これが人生最大のギャンブル『魔王討伐』に失敗した姿だ。

勝利すれば『爵位が手に入り、王女との婚姻が舞い込む』そして負ければ『居場所さえも全部失う』嫌な言い方だがそういうギャンブルだよ『魔王討伐』なんてな。

しかも、このギャンブルは勝手に指名されて逃げられない。

「レイラが辛かったのは、俺でも解る。だが、もう終わった事だしもう良いんじゃないか? 取り敢えず今は、風呂にでも入ってさっぱりしようか? その後で幾らでも話は聞くから」

「そうね、分かつたわ」

そう言うとレイラは毛布を取った。

「…それじゃ、まずは義足を外そうか?」

「そうね…それじゃ頼むわ」

右足の膝から下が無いから布切れで固定された義足を外さないといけないのだが…今のレイラは全裸だ。

目のやり場に困ってしまう。

ドキドキ感を押さえて、固定しているボロ布を解いて外しに掛る。

「バッチこーい」

どうやら、心はおじさんでも体や精神の一部はこの体に引っ張られるようだ。

「どうしたのかな? 私が1人じゃこう言う事出来ないのはちゃんと伝えたよ」

「それは解っているから、簡単な介護は出来る」

「それなら、どうしたのかな?」

好みの女性が全裸の状態でいれば誰だって緊張位するだろう。

「…何でもない…こう言うのは両親で少しは経験がある」

頭の中で前世で聞いた、お経を唱えながら義足とも言えない足についている棒を外した。

そして、そのままレイラをお姫様抱っこして風呂場へ運んだ。

「まさか抱っこして貰えるとは思わなかったわ!どう、おばさん重く無いかな?」


重くないと言えば嘘だ。

手足が1本ずつ無いとは言え鍛えぬいた体は重い。

だが、そんな事をいう必要は無い。

「そんなに重くないよ…」

それより、色々と密着していて、そちらの方が気になる。

精神はおじさんでも体は10代。

反応が出ていて、それが怖い。

「それなら良いけど? 無理しないで良かったのに。肩を貸して貰えれば歩けるから」

「そう? だけど、もう着いたから」

そのまま、あらかじめ、ぬるめに沸かして置いたお湯の中にレイラを優しく降ろした。

傷の治療は終わっている。

だが、見て解る位にレイラは汚れているから、ふやかした方が良い。

そう思ったからだ。

「少し沁みるけど、お湯は気持ち良いな。久々に浸かったから余計そう感じるのかな」

「そう?それなら良かった。それじゃ洗っていこうか?」

思った以上に体が汚れているから、湯舟の中でそのまま洗う事にした。

「本当に悪いね? しかし良く、こんな奴隷買ったもんだよ。こんなに手間暇が掛かるのに…」

「それは解っていて買ったから、気にしないで良いから。それじゃ頭から行くよ。どこか痒い所は無い?」

「へぇ~随分と手慣れたもんだね。凄く上手いじゃない。あっその辺、そうそう、そこが凄く気持ち良いわ」

「少しは経験があるからね。気にいって貰ったなら良かった。それじゃ流すから」

しかし1度流した位じゃ綺麗にならないな。

「そう? へぇ~慣れたもんだね? それでなんで私を買ったのかな?」


レイラが納得しそうな理由。

あるにはある。

「もう10年くらい前かな、レイラの事が好きで『結婚したい』そんな事言っていたガキが居た…そんな記憶は無いかな?」

レイラは勇者だ。

普通にモテる筈だから、多分俺以外にも沢山そういう事いう子供は居た筈だ。

だから誰かなんて解らないだろうな?

「ふぅ~気持ち良い、あんがとね。そう言えば居たね。なかなか可愛い子だったけど鼻水垂らしながら『好きです。大きくなったら結婚して』だったかな?記憶にあるけど? それがどうかしたの?」

「その鼻水垂れが俺だからな。風邪で熱があったけど、勇者が来ると聞いてフラフラしながら見に行ったんだよ。しかし勇者のレイラが良く覚えていたな」

「覚えているよ!10年前と言えば私も18歳、そろそろ行き遅れに指が掛っていたからね。もし、あの時に貴方が15歳だったら『だったら魔王討伐が終わるまで待ってて』となったかもね?」

※この世界の寿命はお約束の50歳~60歳の設定です。

「まぁ5歳のガキだから、無理なのは解っていたよ。詳しい事情は話したくないけど…その時からファンなのは確かだよ」

「へぇ~貴方、もしかしてマザコンだったりするのかな?5歳の時に18歳、普通に母親の年齢だよね? 解った。貴方は、え~と」

「リヒト」

「そうそう、リヒトはもしかして母親代わりが欲しくて私を買ったのかな? まぁ子供は産んだ事も無いし、その前の経験も無いけど?それで良いなら、なってあげても、あははっ奴隷だから当たり前かな」

「ほら、髪は終わったから、次は背中だね、少し間開けて。俺は言っておくけどマザコンじゃない。まぁ年上好きは認めるけどね」

「へぇ~若いのに変わっているね。だけど、女の趣味悪すぎだろう?私の場合は、物凄く年上で背が高くて傷者。もし若かったとしても『ゴリラ女』とか馬鹿にされている位だったよ? 勇者じゃ無ければ男なんて寄って来ない位酷い体だよ」

随分、打ち解けて来たのか話し方が変わって気がした。

案外、これが素なのかな。

だけど…頬に大きな傷はあるが、シルバーブロンドの綺麗な髪と赤み掛かった美しい瞳は神秘的で凄く綺麗に見える。

肌はまるで陶磁器の様に綺麗な白だ。

確かに背は高いけど『ゴリラ』は無いな。

というか、異世界にもゴリラいたのか?

「そう?俺には色白で背が高い綺麗なおねーさんにしか見えなかったけど?」

「リヒトが可笑しいんだよ! 背が高い女だけで嫌う男が多いのに…まぁ良いや。リヒトが女の趣味が悪いのは解ったよ」

違うと言いたいけど、確かこの世界。

背が高い女性はモテない。

それは聞いたことがある。

「兎に角レイラは俺の好きなタイプの女性だと言うのは本当だから」

「そう、あんがとね…まぁ、解るよ…それ見れば…」

俺はレイラの指先を見ると顔が赤くなった。

「これは生理現象だから…ゴメン」

俺はすぐに水を三杯浴びて鎮めてから、レイラの体をどうにか洗い終えた。


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