勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)

石のやっさん

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第1話 追放なのか?

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パーティリーダーであり勇者のジョブを持つカイトが告げる。

「悪いが今日でクビだ」

「そうか、まぁ良いや」

 カイトとは幼なじみだが『いつかはこうなるだろうな』位は何となく思っていた。

 剣聖のリダ

 聖女のフリージア

 賢者のミルカ

そこに勇者のカイト、俺が加わり 五人揃って勇者パーティ『黒羽の翼』(くろはねのつばさ)そう名乗っていたし呼ばれていた。

羽と翼は同じ意味だぞ。

俺はそう言ったのだが、勇者であるカイトに押し切られこの名前になった。

まぁ変な名前だが勇者であるカイトが決めたのだから仕方が無い。

このパーティには4職(勇者、剣聖や、聖女、賢者)全員居るから実力的には問題ない。

だが、このパーティには大きな問題がある。

まず1つは3人が女だという事だ。

カイトは基本そんなに悪い奴じゃないが女癖が悪い

3人全員に手を出して付き合っている。

勇者パーティだから、流石に最後の一線は超えられないが、それなりの事はやっているようだ。

2つ目は俺を除く全員が『イエスマン』という事だ。

女性だから『イエスレディ』が正しいのかも知れないが全員が勇者であるカイトに逆らわない。

3つ目は経験不足。

4人とも強力なジョブのせいで小さい頃から、それなりに強い。

だから、余り…いやかなり努力をしない。

それでも『ジョブ』のせいで強いから文句を言っても聞いてくれない。

一緒にいる俺からしたら何時か痛い目に遭い取返しのつかない事になりそうな気がする。

前世で言うなら

『女癖の悪い経験不足のワンマン社長が経営している会社』に近い。

そして4人が『有資格者』なのに対し俺は『無資格者』だから扱いが悪く雑用を全部押し付けられる。…そんな感じだな。

4人が弁護士で俺だけパラリーガルで全ての雑用を押し付けられているブラック弁護士事務所も近いな。

こう言えば俺の状況が解るかな?

俺のジョブは4人に比べて劣る『魔法剣士』本来ならそこそこ良いジョブだがここでは…まぁ察しの通りだ。

最近の俺は他の皆から確かに取り残されていた。

ジョブの差で成長した4人に能力が追いついていないのは事実だし仕方がないな。

だから、別にクビになっても良いんだ。

揉めてまで一緒に居ても仕方ないし勇者パーティはカイトの物だ。

ワンマン社長勇者のカイトが要らないと言えば、社員である俺はクビ。

それで終わり。

当たり前だ。

そもそも俺は4職じゃ無いから何時かは此処を去る。

そうしたらソロになるか他のパーティにでも入る予定だった。

分相応なAランク位のパーティならエースとしてチヤホヤされるだろうし、全く困らない。

「ついて来られないのは分かっているだろリヒト」

「いや、カイト俺、今『まぁ良いや』って言ったんだぞ! 追放に同意しているんだが…まだ話はあるのか?」

これで良い。

グタグタと話を聞いても仕方が無い。

カイトの狙いは解っている、自分に逆らわない女で固めたハーレムパーティが欲しいんだ。

そこに俺の居場所はどう考えても無いな。

「そうか、解ってくれたなら、それで良いんだ。勇者として大きく飛躍するには大きな手柄が必要なんだ。残念ながらお前とじゃ無理なんだ。パーティを抜けてくれてありがとう。お前が親友なのは変わりないからな。」

「いや、俺はもう2度と皆とは会わないから、どうでも良い事なんだけどな」

「お前! 仲間だろう! 別れ際位は綺麗に別れようぜ!」

「違うよ! よく考えて見ろよ! 此処で俺が別れるよな? 恐らく数年後にカイト達は魔王と戦う…負けたら4人が死んでもう俺には会えないだろう」

「ちょっと待って、リヒト酷いわ」

「そうだよ、幾らなんでもその言いぐさは無いよ!」

「ゴメンよ!フリージアにミルカ、最初に嫌な方から言ったんだ。謝るよ…それじゃ今度は、カイト達が勝利した場合だ! カイトは貴族、恐らくは伯爵以上になって王女を娶る。どの王女か知らんけど。そして他の皆は恐らくは素晴らしい縁談が待っている」

「「「「はい?」」」」

4人とも驚いているな。

普通に考えろよな。

「良いか? カイトは貴族になる。しかも婚姻相手は王族の可能性が高い。3人はカイトの側室になるか、それぞれの団体が斡旋してくれた素晴らしい人の妻になる可能性が高いんだ」

「ちょっと待て、そんなの初耳だぞ」

「そうよ、そうよ」

「どういう事なのかな?」

「どういう事?」

なんで此奴ら過去の勇者パーティがその後どうなったか調べないのかな。

「良いか? フリージアは聖女、教会、しいては聖教国が後ろ盾なんだ。無事に魔王を倒せば甘々の教皇が何でもしてくれる。それこそ縁談を望むなら『聖教国の白百合』と呼ばれる公爵家のアーサー様や『麗しの聖騎士』ランスロット様との縁談だって舞い込んでくるんだぞ…知らないのか?」

「嘘…それ二人とも聖教国、最高の美少年じゃない」

「ミルカだってそうだ、アカデミーと王国が後ろ盾なんだ『智の天使』と言われるミカエル様あたりの縁談がくるかも知れないし、リダだって傭兵ギルドや帝国が後ろ盾なんだから場合によっては帝国の『赤毛の貴公子』サンジェスト王子あたりとの婚約もあり得ると思う」

「嘘、あのミカエル様のお嫁さん、私がですか?」

「サンジェストと婚約だと!本当に出来るのか?」

「なぁ、3人より俺だ、俺は本当に王女を妻に出来るのか?」

「魔王を倒した勇者なら、大抵の物は手に入る筈だ…勿論王族との婚姻もな」

人生最大のギャンブル。

それが『魔王討伐』恐らくカイト達が勝てる可能性はかなり低い。

だが、それを成しさえすれば全てが手に入る究極の命を懸けたギャンブル。

それが『魔王討伐』だ。

尤も、それは、ざわざわざわに近い。

俺はそう思っているけどな。

「と、言う訳で、魔王討伐に成功したらカイトは王族に連なる貴族に、他の皆は貴族の妻かカイトの側室になる。只の冒険者の俺が幼馴染だからと言って、気楽に会える存在じゃない。だから、別れる時が一生の別れだ。決して嫌味で言ったんじゃない。悪かったな」

「いや、リヒト悪いのは俺だ、自分達の未来について余り考えて無かった…すまないな」

「そうだったんだ、ごめんね」

「私も迂闊だった」

「悪いな」

元から別れるそういう運命だった。

それだけの事だ。


尤も、此奴らはそう上手くはいかない。

これは『普通なら』だ。

勇者パーティは恐らくだが、密偵の様な者に見張られている気がする。

この世界の重要人物だから当たり前だ。

だから『4人がイチャついているのはもう王族をはじめ貴族には耳に入っている』し平民は直接見ている。

その状況では『俺の言う通り』にはならないだろう。

注意しても無駄だった。

別れ際に態々言う必要も無いな。

「それじゃ、カイト、これにサインくれるか?」

「サイン、なんのサインだ」

「読めば解かるが、俺がサポーターとして義務を果たしたという書類だよ。村長に郵送するんだ。お金の大半は、皆の後ろ盾から支給された物だから置いて行くけど装備と悪いが金貨3枚(約30万円)は貰って良いか?」

「そうか…それ位なら良いが、逆にそれで良いのか?」

「ああっ『知り合い』の門出だからサービスだ。全部要らないと言えなくて悪いな」

「気にするな」

「それじゃぁな」

「「「「じゃぁな」」」」

こうして俺は勇者パーティを追放? された。

元から俺はサポーターなんだけどな。

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