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第51話 魔王を食べる者
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空竜艇の窓にしがみついて外を見ている。
黒薔薇や黒牡丹、京子は『世界』の中に入っている。
残念ながら他の人は今の所は入れないみたいだ。
しかし、魔国に入ってからの景色は安心できるな。
窓から見た先には『俺にとって人』に見える人しかいない。
村は兎も角、小さな街を見た時には思わず目から涙が出そうになった。
俺にとって『本物の人間が生活する世界』
小学5年生でこの目になってから…見ることが出来なかった『当たり前の世界』がそこにはあった。
それが国単位になるのだから…幸せ過ぎる。
「随分熱心に眺めていますね。そんなに面白いですか?」
エミリーが不思議そうな顔でそう言ってきた。
「まぁな、俺にとっては見たかった光景だからな」
悍しい化け物が居ない世界。
いいなぁ…此処。
もう醜い化け物みたいな『人間』は居ない。
此処は魔国、魔族が生活する世界。
俺には当たり前の様に…
いや、当たり前じゃない…此処は天国なのか?
邪神のせいなのか、目を凝らすと遠くまで見ることが出来る。
美男美女の国…
タイプは違えど、全ての人間(魔族)は超がつく美形だ。
尤も黒薔薇や黒牡丹には及ばないが、まるで天使みたいに見える。
俺には此処が天国だ。
「魔族って皆、綺麗だな…」
思わず口をついて出てしまった。
「瞳様はやはり邪神様なのですね…醜いと言われる魔族という種族が美しいなんて、流石に生涯私が仕えるべき主様です」
「邪神様の目にはそう映るんですね…まさか本当だとは思いませんでした」
ドラキーナは魔族の中でも相当禍々しく、四天王でありながら他の魔族は寄り付かず、その容姿を恐れる者が多いらしい。
そして、エミリーはメイドとしては完璧で『冥途』とも呼ばれる存在だが、その容姿で主人に恵まれる事は無かったそうだ。
「エミリーもドラキーナも俺から見たら凄く綺麗に見えるよ、エミリーは凄く綺麗なお姉さん、ドラキーナは美少女…言ってはなんだけど、魔物や魔族で醜く見える存在は居ない…何しろゴブリンもオークも綺麗に見えるからな」
「そうなんですか! 流石は魔族の神、魔族の守護神ですね…だからですね。確かに邪神様にならそう見えても可笑しく無いですね」
「あたしが美少女に見えるわけですね!」
なんだか二人とも嬉しそうだ。
暫く外を見ていると大きな城が見えてきた。
岩で出来ていてなかなかの迫力がある。
俺が美しく見えるのは魔族や魔物だけ…建物や雰囲気まで美しく見える訳ではない。
空竜艇は城の傍でホバリングするように近くの開けた場所に降りた。
◆◆◆
「ふぁははははっ邪神が顕現するわけ無いわぁ!どうせ、あのチンケな邪神がようやく勇者を降臨させたのだろうが…」
「流石は魔王ルシファード様、その通りでございます」
「あの邪神エグゾーダスに邪神コーネリアめ、散々祈ってやったのに、化け物人形などを送り込みやがって、どうせ『魔族側の勇者』も碌な者ではないわ…余がこき使ってくれるわ」
「どうせ大した存在ではないですな」
「魔王様、ドラキーナ様が邪神様を連れて参りました」
「玉座の間で待つように伝えて置け」
「魔王様、相手は邪神様ですが…」
「良いから待たせておけ」
「ハッ」
王国を滅ぼした等、にわかに信じられん…
どうせ、尾ひれがついたに決まっておる。
◆◆◆
「うあわぁぁぁ、あの人形が、あの人形がぁぁぁ」
「前回は許しましたけど? 今回は許しませんわ! 邪神である瞳様への狼藉…死にあたいしますわ」
「魔王…うまうま」
馬鹿だな…
散々待たせた挙句に俺を馬鹿にした結果がこれだ。
元々、以前馬鹿にされて、黒薔薇や黒牡丹は魔王や幹部を嫌っている。
俺は世界から出ない様に言って置いたが…魔王の暴言を聞き飛び出してきた結果、こうなった。
「瞳様、このまま殺してしまいましょうか? 邪神の瞳様がいるのだから、これは要りませんわ」
「魔王の肉、なかなか美味い…黒牡丹が食べる」
凄い光景だな。
黒薔薇が爪を伸ばして魔王を切断して…切断され落ちた肉を黒牡丹が食べている。
最早、魔王の尊厳は無いな。
既に両足に両手が食べられダルマ状態だ。
しかし、周りの魔族は誰も助けに入らない。
「あれ、良いのか?」
「邪神様への無礼な態度、殺して良いと思いますよ?」
「幾ら魔王様でも邪神様に逆らうのは無いですね…殺して良いと思います」
エミリーもドラキーナも容赦ないな。
関係で言ったら上司だろうに…
「助けて、助けて下さい…生涯の忠誠を誓います! 余は余は、邪神様には絶対に逆らいません…だからこの二人を下げて下さい」
「助ける必要はありませんわ…役に立ちませんから」
「案外美味しい…完食を目指す」
もう首と骨しかない。
此処で止めないと…終わりだ。
「可哀そうだから、その辺りで止めてあげてくれ」
「瞳様に感謝するのですわ」
「…頭は不味いから要らない」
「ああああ~ありがとうございます! ありがとう…」
仕方ないな。
流石に首だけじゃ可哀そうだ。
俺が体が戻る様に願うと…魔王の体が生えてきた。
「一応、再生してあげたけよ…やり過ぎた俺達も悪いけど…態度も悪く、以前に黒薔薇や黒牡丹を馬鹿にしたり、今回の態度、余りに悪いよな? それで今後は…」
「約束したように…余は邪神様に生涯の忠誠を誓います! 今後は何でも余に言って下さい…何でも従います」
ちょっとやり過ぎたのかも…知れないが、まぁ仕方ないよな。
黒薔薇や黒牡丹、京子は『世界』の中に入っている。
残念ながら他の人は今の所は入れないみたいだ。
しかし、魔国に入ってからの景色は安心できるな。
窓から見た先には『俺にとって人』に見える人しかいない。
村は兎も角、小さな街を見た時には思わず目から涙が出そうになった。
俺にとって『本物の人間が生活する世界』
小学5年生でこの目になってから…見ることが出来なかった『当たり前の世界』がそこにはあった。
それが国単位になるのだから…幸せ過ぎる。
「随分熱心に眺めていますね。そんなに面白いですか?」
エミリーが不思議そうな顔でそう言ってきた。
「まぁな、俺にとっては見たかった光景だからな」
悍しい化け物が居ない世界。
いいなぁ…此処。
もう醜い化け物みたいな『人間』は居ない。
此処は魔国、魔族が生活する世界。
俺には当たり前の様に…
いや、当たり前じゃない…此処は天国なのか?
邪神のせいなのか、目を凝らすと遠くまで見ることが出来る。
美男美女の国…
タイプは違えど、全ての人間(魔族)は超がつく美形だ。
尤も黒薔薇や黒牡丹には及ばないが、まるで天使みたいに見える。
俺には此処が天国だ。
「魔族って皆、綺麗だな…」
思わず口をついて出てしまった。
「瞳様はやはり邪神様なのですね…醜いと言われる魔族という種族が美しいなんて、流石に生涯私が仕えるべき主様です」
「邪神様の目にはそう映るんですね…まさか本当だとは思いませんでした」
ドラキーナは魔族の中でも相当禍々しく、四天王でありながら他の魔族は寄り付かず、その容姿を恐れる者が多いらしい。
そして、エミリーはメイドとしては完璧で『冥途』とも呼ばれる存在だが、その容姿で主人に恵まれる事は無かったそうだ。
「エミリーもドラキーナも俺から見たら凄く綺麗に見えるよ、エミリーは凄く綺麗なお姉さん、ドラキーナは美少女…言ってはなんだけど、魔物や魔族で醜く見える存在は居ない…何しろゴブリンもオークも綺麗に見えるからな」
「そうなんですか! 流石は魔族の神、魔族の守護神ですね…だからですね。確かに邪神様にならそう見えても可笑しく無いですね」
「あたしが美少女に見えるわけですね!」
なんだか二人とも嬉しそうだ。
暫く外を見ていると大きな城が見えてきた。
岩で出来ていてなかなかの迫力がある。
俺が美しく見えるのは魔族や魔物だけ…建物や雰囲気まで美しく見える訳ではない。
空竜艇は城の傍でホバリングするように近くの開けた場所に降りた。
◆◆◆
「ふぁははははっ邪神が顕現するわけ無いわぁ!どうせ、あのチンケな邪神がようやく勇者を降臨させたのだろうが…」
「流石は魔王ルシファード様、その通りでございます」
「あの邪神エグゾーダスに邪神コーネリアめ、散々祈ってやったのに、化け物人形などを送り込みやがって、どうせ『魔族側の勇者』も碌な者ではないわ…余がこき使ってくれるわ」
「どうせ大した存在ではないですな」
「魔王様、ドラキーナ様が邪神様を連れて参りました」
「玉座の間で待つように伝えて置け」
「魔王様、相手は邪神様ですが…」
「良いから待たせておけ」
「ハッ」
王国を滅ぼした等、にわかに信じられん…
どうせ、尾ひれがついたに決まっておる。
◆◆◆
「うあわぁぁぁ、あの人形が、あの人形がぁぁぁ」
「前回は許しましたけど? 今回は許しませんわ! 邪神である瞳様への狼藉…死にあたいしますわ」
「魔王…うまうま」
馬鹿だな…
散々待たせた挙句に俺を馬鹿にした結果がこれだ。
元々、以前馬鹿にされて、黒薔薇や黒牡丹は魔王や幹部を嫌っている。
俺は世界から出ない様に言って置いたが…魔王の暴言を聞き飛び出してきた結果、こうなった。
「瞳様、このまま殺してしまいましょうか? 邪神の瞳様がいるのだから、これは要りませんわ」
「魔王の肉、なかなか美味い…黒牡丹が食べる」
凄い光景だな。
黒薔薇が爪を伸ばして魔王を切断して…切断され落ちた肉を黒牡丹が食べている。
最早、魔王の尊厳は無いな。
既に両足に両手が食べられダルマ状態だ。
しかし、周りの魔族は誰も助けに入らない。
「あれ、良いのか?」
「邪神様への無礼な態度、殺して良いと思いますよ?」
「幾ら魔王様でも邪神様に逆らうのは無いですね…殺して良いと思います」
エミリーもドラキーナも容赦ないな。
関係で言ったら上司だろうに…
「助けて、助けて下さい…生涯の忠誠を誓います! 余は余は、邪神様には絶対に逆らいません…だからこの二人を下げて下さい」
「助ける必要はありませんわ…役に立ちませんから」
「案外美味しい…完食を目指す」
もう首と骨しかない。
此処で止めないと…終わりだ。
「可哀そうだから、その辺りで止めてあげてくれ」
「瞳様に感謝するのですわ」
「…頭は不味いから要らない」
「ああああ~ありがとうございます! ありがとう…」
仕方ないな。
流石に首だけじゃ可哀そうだ。
俺が体が戻る様に願うと…魔王の体が生えてきた。
「一応、再生してあげたけよ…やり過ぎた俺達も悪いけど…態度も悪く、以前に黒薔薇や黒牡丹を馬鹿にしたり、今回の態度、余りに悪いよな? それで今後は…」
「約束したように…余は邪神様に生涯の忠誠を誓います! 今後は何でも余に言って下さい…何でも従います」
ちょっとやり過ぎたのかも…知れないが、まぁ仕方ないよな。
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