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第10話 人形と食卓
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トントントン
ドアのノックの音がした。
「黒木様、歓迎の宴の準備が出来ました。大広間の方に案内いたします」
「解りました、少しお待ちください!」
『黒薔薇、黒牡丹、また後でな』
『瞳様、また後でお邪魔しますわ』
『…瞳様…また後で』
「黒木様」
「はい、今すぐ出ます」
すぐに廊下に出て、メイドの後についていく。
このメイドもマリン姫程じゃ無いが、不気味で化け物にしか見えない。
どの位に見えているのか?
大体、このメイドとお化け屋敷の幽霊。
どちらかと結婚しなくちゃいけないなら、お化け屋敷の幽霊を選ぶ。
マリン王女となら…ゾンビの方を選ぶな。
『慣れた』
だからと言って好きな訳じゃない。
『耐える事に慣れた』
それだけだ。
そんな俺に邪神様達は光をくれた。
俺の目で見て『美少女』に見える2人、黒薔薇と黒牡丹。
まるで、天使。
そしてエグゾーダス様とコーネリア様は『女神』
それが、今の俺の状況だ。
まるで天使の様に見える二人が俺の傍にいる状況だから。
他の存在が、より醜悪で醜い化け物に見える。
今迄は苦痛の中で生きるしかない。
化け物だろうが、悍しい化け物の様な存在との生活でも我慢して生活するしかない。
だが…その世界で美しい存在を見てしまった。
だから、嫌悪感が増していた。
「どうかされましたか? 顔が青いですよ」
「ハハッ、異世界に来たから緊張して…」
「確かにいきなり違う世界に連れて来られたらそうなりますよね…」
彼女なりに気を使ってくれたのかも知れないが…
その笑顔が俺には更に不気味に見えた。
◆◆◆
大広間に着いた。
歓迎の宴というだけあって、かなり豪華だ。
立食式のビュッフェになっている。
勇者達の傍に王族や身なりからしてかなり裕福に見える貴族が居るが、他の同級生は一部を除き、格下の貴族と話をするか、食べる事に徹している。
この事から、本当に必要なのは『勇者パーティ』他も戦力には考えているが、そこ迄重要じゃないのだろう。
俺にとっては化け物にしか見えないから、最低線の付き合いしかしていない。
貴族は更なる化け物。
此処に居ても仕方が無い。
「すみません」
俺は近くで給仕しているメイドに声を掛けた。
「はい?」
「部屋で食事がしたいんだけど持ち帰っても大丈夫ですか?」
「特に問題ありません、他の方で既に持ち帰っている方もいますので」
「ありがとう、それじゃそうさせて頂きます」
俺は、幾つかの料理、主にお菓子を多く取り、ポットとカップ3つを持ち、部屋に帰っていった。
こんな所に居ても楽しくないからな。
◆◆◆
「黒薔薇に黒牡丹、少しお茶しないか?」
俺がそう言うと、すぐ傍に一瞬で二人が現れた。
うん、眼福だ。
此処は小さな俺の天国だ。
「瞳様、また呼んで下さいましたの?」
「…嬉しい」
いや嬉しいのは俺だから。
「ああっ、二人は人形だし、吸血、肉吸いが食事だから食べられないかも知れないけど、食べ物と飲み物を持ってきたんだ。食べられるなら、食べて、無理なら…ゴメン」
吸血人形と肉吸人形、食事は出来ないか?
「瞳様、大丈夫ですわ。嗜好品として味わう事は出来ましてよ」
「食べられる…肉は美味しい」
「そう? それなら紅茶をいれるから、適当につまんで」
「いただきますわ」
「食べる…」
親が無くなり、この目になってから誰とも食事をとっていない。
引き取ってくれた親類ともだ。
『尤も両親が死んだショックから』
そう考えてくれたおかげで特に咎められなくて過ごせた。
「どうかなさりましたの? 瞳様、凄く嬉しそうですわ」
「…嬉しそう」
「誰かと一緒に食事をするなんて久しぶりだから…嬉しいんだ」
「嬉しいのですか? 良かったですわ」
「良かった」
見れば見る程綺麗で可愛いい。
芸能人なんて比べ物にならなく、まさに幻想的な位に綺麗だ。
カップを持つ姿なんて、黒薔薇は貴族、黒牡丹は日本の良家のお嬢様にしか見えない。
「しかし、二人は見れば見る程可愛くて綺麗だ…一緒に居られて凄く嬉しいよ」
「そんな、嫌ですわ、本当に照れちゃいますわ」
「うん、うん…顔が赤くなっちゃう…」
「照れているのは俺も一緒だよ。だけど『愛でる』約束だろう?その約束が無くても、本当に感謝しているんだ。二人みたいな美少女が傍に居て貰える…本当に楽しくて幸せに感じるんだよ」
「あの…瞳様、幸せなのは私の方ですわ。こんなに『綺麗』『可愛い』『美少女』そんな風に言って貰った事は初めてなのですわ…瞳様の人形になれて良かった…本当にそう思いますの」
「私も姉さまと同じ…大切にして貰えて凄く…幸せ」
「そう、それなら良かった。それじゃ紅茶のお代わりはどう?」
「「いただきます(わ)」」
誰かと一緒に食べる食事がこんなに美味しい。
そんな事…すっかり忘れていたよ。
ドアのノックの音がした。
「黒木様、歓迎の宴の準備が出来ました。大広間の方に案内いたします」
「解りました、少しお待ちください!」
『黒薔薇、黒牡丹、また後でな』
『瞳様、また後でお邪魔しますわ』
『…瞳様…また後で』
「黒木様」
「はい、今すぐ出ます」
すぐに廊下に出て、メイドの後についていく。
このメイドもマリン姫程じゃ無いが、不気味で化け物にしか見えない。
どの位に見えているのか?
大体、このメイドとお化け屋敷の幽霊。
どちらかと結婚しなくちゃいけないなら、お化け屋敷の幽霊を選ぶ。
マリン王女となら…ゾンビの方を選ぶな。
『慣れた』
だからと言って好きな訳じゃない。
『耐える事に慣れた』
それだけだ。
そんな俺に邪神様達は光をくれた。
俺の目で見て『美少女』に見える2人、黒薔薇と黒牡丹。
まるで、天使。
そしてエグゾーダス様とコーネリア様は『女神』
それが、今の俺の状況だ。
まるで天使の様に見える二人が俺の傍にいる状況だから。
他の存在が、より醜悪で醜い化け物に見える。
今迄は苦痛の中で生きるしかない。
化け物だろうが、悍しい化け物の様な存在との生活でも我慢して生活するしかない。
だが…その世界で美しい存在を見てしまった。
だから、嫌悪感が増していた。
「どうかされましたか? 顔が青いですよ」
「ハハッ、異世界に来たから緊張して…」
「確かにいきなり違う世界に連れて来られたらそうなりますよね…」
彼女なりに気を使ってくれたのかも知れないが…
その笑顔が俺には更に不気味に見えた。
◆◆◆
大広間に着いた。
歓迎の宴というだけあって、かなり豪華だ。
立食式のビュッフェになっている。
勇者達の傍に王族や身なりからしてかなり裕福に見える貴族が居るが、他の同級生は一部を除き、格下の貴族と話をするか、食べる事に徹している。
この事から、本当に必要なのは『勇者パーティ』他も戦力には考えているが、そこ迄重要じゃないのだろう。
俺にとっては化け物にしか見えないから、最低線の付き合いしかしていない。
貴族は更なる化け物。
此処に居ても仕方が無い。
「すみません」
俺は近くで給仕しているメイドに声を掛けた。
「はい?」
「部屋で食事がしたいんだけど持ち帰っても大丈夫ですか?」
「特に問題ありません、他の方で既に持ち帰っている方もいますので」
「ありがとう、それじゃそうさせて頂きます」
俺は、幾つかの料理、主にお菓子を多く取り、ポットとカップ3つを持ち、部屋に帰っていった。
こんな所に居ても楽しくないからな。
◆◆◆
「黒薔薇に黒牡丹、少しお茶しないか?」
俺がそう言うと、すぐ傍に一瞬で二人が現れた。
うん、眼福だ。
此処は小さな俺の天国だ。
「瞳様、また呼んで下さいましたの?」
「…嬉しい」
いや嬉しいのは俺だから。
「ああっ、二人は人形だし、吸血、肉吸いが食事だから食べられないかも知れないけど、食べ物と飲み物を持ってきたんだ。食べられるなら、食べて、無理なら…ゴメン」
吸血人形と肉吸人形、食事は出来ないか?
「瞳様、大丈夫ですわ。嗜好品として味わう事は出来ましてよ」
「食べられる…肉は美味しい」
「そう? それなら紅茶をいれるから、適当につまんで」
「いただきますわ」
「食べる…」
親が無くなり、この目になってから誰とも食事をとっていない。
引き取ってくれた親類ともだ。
『尤も両親が死んだショックから』
そう考えてくれたおかげで特に咎められなくて過ごせた。
「どうかなさりましたの? 瞳様、凄く嬉しそうですわ」
「…嬉しそう」
「誰かと一緒に食事をするなんて久しぶりだから…嬉しいんだ」
「嬉しいのですか? 良かったですわ」
「良かった」
見れば見る程綺麗で可愛いい。
芸能人なんて比べ物にならなく、まさに幻想的な位に綺麗だ。
カップを持つ姿なんて、黒薔薇は貴族、黒牡丹は日本の良家のお嬢様にしか見えない。
「しかし、二人は見れば見る程可愛くて綺麗だ…一緒に居られて凄く嬉しいよ」
「そんな、嫌ですわ、本当に照れちゃいますわ」
「うん、うん…顔が赤くなっちゃう…」
「照れているのは俺も一緒だよ。だけど『愛でる』約束だろう?その約束が無くても、本当に感謝しているんだ。二人みたいな美少女が傍に居て貰える…本当に楽しくて幸せに感じるんだよ」
「あの…瞳様、幸せなのは私の方ですわ。こんなに『綺麗』『可愛い』『美少女』そんな風に言って貰った事は初めてなのですわ…瞳様の人形になれて良かった…本当にそう思いますの」
「私も姉さまと同じ…大切にして貰えて凄く…幸せ」
「そう、それなら良かった。それじゃ紅茶のお代わりはどう?」
「「いただきます(わ)」」
誰かと一緒に食べる食事がこんなに美味しい。
そんな事…すっかり忘れていたよ。
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