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第3話 邪神
しおりを挟む此処は地獄だ。
今迄に見たことが無い位、悍しい存在だらけ…いや地獄ですら生温い。
悪魔や化け物が闊歩する世界。
同級生は顔を赤くして、話をしている。
普通の人間には、さぞ美しい存在に見えているのだろう。
俺には…恐怖の象徴にしか見えない。
この中から祝福してくれる神を選ばないといけないのか…
目が合った瞬間、余りの恐怖で顔が引き攣り、体が冷水を浴びた様に寒気が走り震えが止まらなくなる。
どうしたら良いんだ。
そう思いながら、恐怖を感じながらも歩いていると、光り輝く空間から外れた場所に暗い空間があった。
そこにも神が…いや本物の神が居た。
可笑しい…
俺がこの目になってから普通に見えた人物は1人。
美しく見えた存在は3人。
だが、そこに居る女神達は、今迄見た存在を遥かに凌ぐ程美しく、可憐で綺麗で気高く見えた。
金髪に金色の目を持つ色白の背が低い、後ろ三つ編みの美少女。
小柄ながら気高い気品に溢れお姫様、女神様と言うのがピッタリの存在。
そして、その傍に居る。綺麗なシルバーブロンド、緑色に澄んだ瞳の美女。端正な顔立ちの年上の巨乳の美女。この目になる前に見たギリシャ神話のビーナスみたいに見える。白い肌は雪みたいで本当に綺麗だ。
彼女達こそが…本物の女神に思えた。
見つめていると目が合って思わず顔が赤くなった。
「お主良く我の顔が直視出来るのう…心臓が止まらぬのか?」
「あらあら、私を直接見ちゃ駄目よ…石に、あれ、ならないわね? あの、私達が怖く無いの?」
怖がる処か俺には絶世の美女にしか見えない。
凛としていて彼女達こそが本物の女神の様に思える。
他の存在は…まるでクトゥルフ神話の神か悪魔、化け物にしか見えなかった。
「美しき女神様、何故その様な事を言われるのでしょうか? 私には貴方達こそが真の女神に見えます」
見れば見る程綺麗だな。
「なぬ、我が美しいだと! 生まれてから数千年初めて言われたぞ」
「あの、私も美しい、そう言うのですか? この姿に変えられて数百年ぶりですよ? 嘘では無いのですね?」
「誓って嘘ではありません、女神様」
「確かに、コーネリアを見て石化しないのなら嘘ではないようじゃのう…我はそんなに美しいか?」
「はい、今迄見た存在で女神様達程、美しい存在に会った事はありません」
「私もなのよね?」
「はい」
「凄く嬉しいわ。忌々しい女神にこの姿にされてから数百年。邪神になったこの身、再びそんな事を言われる日が来るなんて思わなかったわ。うふふ、嬉しいわ」
一人の女神様は美少女、この女神様はおっとりとした大人の美女に見える。
今迄の恐怖が上書きされていく。
悍しく恐怖に支配されていた世界にいた俺が、まるで天国に来たみたいに幸せを感じる。
「いえ、女神様の様な美しく素晴らしい方に会えるなんて、私の方がより幸せを感じています」
「お主は良い奴じゃな。人の味方する神ばかり贔屓して、と創造神様に異議申立てをして『ならばお前達も祝福を与えて味方をする人間を勧誘すれば良い』とこの場に来る事になったのじゃが、誰もが我らを恐れ、近寄っても来なかったのじゃ。我らに関心を持った存在はお主が初めてじゃ、お主は我の祝福が欲しい。そう言う事で良いのじゃな?」
「頂けるのであれば…」
女神様も綺麗だが、近くにある…2つの死体? 人形?
凄く可愛くて綺麗に見える。
「お主、なにを見ておるのじゃ? ほぉ~人形を見ているのか? 流石にこれは恐ろしく気持ち悪いじゃろう?」
「いえ、凄く綺麗で可愛く見えます。そう可憐ですね」
この目になってから、俺にとっての人形は怪物か化け物にしか見えなくなっていた。
それを差し置いても…この人形まるで美少女が眠っている様にしか見えない。
こんな美しい人形なんて俺は見たことが無い。
「あの、この人形も美しく見えるの? 貴方凄く変わっているわね」
「確かにそうかも知れません」
事故に遭ってからの俺は確かに普通じゃないな。
「そうか、それなら我から祝福を受けるか? もし我の祝福を受けるのであれば、その2体の人形もやろう? どうじゃ? しかもその人形はちと難儀じゃが、生きておる…我が息吹を吹き込んで目覚めさしてやろうぞ」
「そうね…私達の方は今迄、誰も祝福を貰いに来なかったから、沢山の祝福をあげるわ…どうかな?」
元からこの女神様達、一択しか考えて無かった。
しかも、こんな美少女の人形が2体も貰えるなんて…嬉しすぎる。
「是非、お願い致します」
「うむ、我が名は邪神エグゾーダス…魔族や魔物を加護する神じゃ」
「私の名前は邪神コーネリアよ! 人間の女神に呪いを掛けられ恨み邪神になった存在なの! 人間の女神が嫌い…私達を選ぶという事は『人間の敵』になるという事なのだけど…良いの? 今なら、綺麗って言ってくれたお礼に、特別に見逃してあげるよ」
俺は人間側を見た。
やはり、何処までも悍しくて、醜い同級生。
そして、あそこの神達は…酷く醜悪な姿をしている。
どちらかを敵にするなら『あいつ等』の方が良い。
俺が黙っているとエグゾーダス様が話し始めた。
「積極的に狩らなくても良いからな、仲の良い者も居たのだろう?ただ、魔族や魔物に敵対しないでくれれば良いのじゃ」
「それでも良いわ、どうかな?」
躊躇している、そう思ったのかも知れない。
確かに悍ましくても同級生、殺すとなれば出来ないかも知れない。
「あの…もし宜しければ、誰でも構いません。魔族か魔物の姿を見られませんか?」
「そうじゃな…良かろう」
エグゾーダス様が指を鳴らすと…指先に画像が浮かび上がった。
これが…魔物?魔族?
「是非、祝福をお願いします」
「良かろう」
「良かった…」
こうして俺は人類の敵になった。
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